軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13-25 仲間の意味

「さて、あとは……」

「ま、まだあるんですか……」

情けない声を出しているのはミーネ。メンバー中最も魔導技術とは程遠いのだから当然と言える。

「ミーネ、とりあえずこれで最後にしておくから」

「しておく、ですか……」

今度は研究所内へ。地下1階へ下りる。

そこは老君が鎮座する部屋の真上である。

「ここが司令室になる。 統一党(ユニファイラー) との戦いの時とかに使った部屋なんだけど、今見せたいのは『 魔力探知機(マギレーダー) 』だ」

「 魔力探知機(マギレーダー) ?」

「ああ。登録してある魔力パターンがどこにあるか、知ることができる」

そんな簡単な説明だったが、ラインハルトはその意味を察してびっくりする。

「何だって!?」

そして大きな溜め息を一つ。

「ふう、まったく、今日一日、いや半日でどれだけ驚いたかわからないよ……」

「あなた、どういうことですの? 魔力探知機(マギレーダー) って……」

「……例えば、私たちが行方不明になったとしても、どこにいるかすぐに捜し出してもらえる、そんな装置」

説明したのはエルザ。

「……で、いい? ジン兄」

仁は頷く。

「ああ、その通りだ。実際、エルザが 統一党(ユニファイラー) に誘拐されたとき、俺がプレゼントしたブローチの魔力を頼りにエルザを捜し出したんだから」

「……あの時、ですか」

ミーネが絶句する。ミーネがエルザを誘拐同様にして連れだしたとき、短剣、指輪、ほとんどの魔導具を置いていかせたのだから。

エルザがこっそりブローチを持っていかなかったら……と思うと身震いが出るミーネであった。

「い、いったい、どんな仕組みになっているの? どうやって探し当てるの?」

ステアリーナは興味があるようだが、原理がまったくわからないので聞きまくりだ。

「三角測量、と言ってもわからないかも知れないが、魔力を感知する『 魔力探知装置(マギディテクター) 』という物があるんだよ。それを使うと、方向がわかるんだ」

「ああ、なんとなくわかるわ。わたくしたちだって、強い魔力を感知することができるものね。それと似たようなものね?」

仁は頷いた。さすがにセルロア王国のナンバー2 魔法工作士(マギクラフトマン) である。

「1つだと方向はわかっても距離がわからないだろう? 魔力の強さでなんとなくしか知ることができないんだ。それで、これを2つ、できれば3つ以上使うと……」

「あっ! そうか、複数の、その、 魔力探知装置(マギディテクター) ? が指し示す方向が一致すれば、そこに探す魔力があるというわけね?」

大体の原理は理解したようだ。

「ああ、すばらしいわ! たったの半日で、世界が塗り替えられてしまったみたい」

また感激して身を震わせるステアリーナ。これほど感情表現が豊かだとは誰も思っていなかったので、一同驚いている。

「よっぽど抑圧されてらしたのですね」

ミーネはそんなステアリーナの気持ちがわかるようだ。抑圧されていた、という点では同じだからだろうか。

* * *

「……ふう」

1日くらいでは蓬莱島の全貌を見る事など不可能なので、適当なところで切り上げ、食堂でティータイムである。

「しかし、ジンが作り上げたものに驚いてばかりいたけれど、アドリアナ・バルボラ・ツェツィの遺産というのも凄まじいな」

目にしたものへの驚きが一段落したラインハルトがしみじみと言った。

「今の世界には失伝してしまった魔法や魔法技術。どのくらいあることやら」

「そうよね…… 転移門(ワープゲート) 一つ取っても、わたくしたちには作れないわけで。そんな 古代遺物(アーティファクト) 扱いのものがごろごろしている……すごいわあ……」

ステアリーナも少し疲れたような声だ。

「この島の資源もすごいものね。ジン、いったいどれくらいあるんだい?」

サキは錬金術師らしく、その素材の多さに胸をときめかせている。

「これだけの施設はどこの国にもないよ」

ラインハルトが溜め息と共に呟いた。

「これをジン君は1年とちょっとで作り上げたのよね? すごいわあ」

ステアリーナはまだ少し興奮気味である。

「いや、元々先代が遺してくれた研究所があったから」

だがそれにはラインハルトが異論を唱えた。

「いやいや、ジン、昨年はほとんどこちらに戻っていないと話していたじゃないか。それに、今年だってポトロックでのゴーレム艇競技以来、僕らと旅をしていたわけで。その合間を縫ってこれだけの事したというのはもう神業としか言いようがない」

「大袈裟だな。俺一人で作ったんじゃないさ。礼子やゴーレム達、それに老君がいてくれたからこそだ」

「だが、そのゴーレム達だってジンが作ったんじゃないか。結局はジンの手腕ということになる」

「くふふ、ジン、その通りだと思うよ。君が作り上げたもの、それはこの世の楽園と言っていいかもしれないね。技術者の楽園さ」

サキも仁と蓬莱島を素直に賛美した。

「……ありがとう、と言っておくよ」

「くふ、照れ屋なんだな、ジンは」

サキは悪戯っぽく笑ってお茶で喉を潤した。

「先代はここを 魔法工作(マギクラフト) の聖地にしたかった、と思っていた。俺はその遺志を継ごうと思ったんだ」

それに反応したのは何とベルチェ。

「ジン様、おこがましいようですけど、一言言わせたいただきますわ。わたくしの目から見ても、この蓬莱島は異常です。良い意味でも悪い意味でも。悪い意味、というのは、世界の常識を簡単に覆せるようなものがごろごろしている、と言う意味で、ですけど」

その言葉を引き取って、ミーネも発言した。

「ええ、申し訳ないですが、私もそう思います。普通の方がここの技術を見たらどう思うでしょう。権力者だったら間違いなく『力』を欲するでしょう。飛行機やゴーレムを。あるいは豊富な資源を」

それは全員が感じている。

「もちろん、ジン君とこの蓬莱島なら、おそらく全世界が束になって攻めてきても撃退できるわよね。ううん、その気になれば世界征服だって、世界を滅ぼすことだってできちゃうでしょうね」

ステアリーナは戦力としての分析を述べた。

「でも、ジン兄は面倒だからそんなことはしない、よね?」

期待を込めた目で見つめながらエルザが発言した。

「ああ、何が悲しくて世界征服なんてしなきゃいけないんだ。権力? めんどくさい。 金? 少しあればたくさんだ」

女、と続けないところが仁らしい。エルザはくすりと笑って、

「ジン兄ならそう言うと、思った」

と、ほっとした顔をした。

「さて、ということで、僕の意見を言わせてもらうよ」

居住まいを正したラインハルトが発言する。

「ここは素晴らしい。色々試し、学び、作り上げていける。正に聖地だ」

「そうね。こんな場所があるなんて思わなかったわ」

ステアリーナも同調する。

「ジン、ボクらを招いてくれて本当に、感謝する」

サキも頭を下げた。

「うん。私を拾って、救ってくれた。ジン兄には、感謝」

これはエルザ。

「だから」

ラインハルトは仁を真っ直ぐ見据えて言葉を続ける。

「ジン、君は、これだけの事を短期間でしてのけたんだ。そんなこと、この世界の誰にも出来はしない。誇っていいと思う」

「くふふ、そうさ。でもジン、ちょっと急ぎすぎていないかい?」

「え?」

サキの発言に、仁は怪訝そうな顔。

「くふ、言われてもわからないかい。比較対象がないというのも困ったものだね」

まだわかっていない顔の仁を苦笑いを浮かべながら眺めたサキは、エルザへとバトンを渡す。

「それじゃあエルザ、説明しておやり」

「!?」

「君はわかっているのだろう?」

「……」

サキに言われたエルザは無言のまま仁を見つめていたが、 徐(おもむろ) に口を開き、話し始めた。

「……前にも言った気がするけど、ジン兄は一人で抱え込みすぎ。何でも出来る、それはわかる。でも、何でもする必要は、ない」

「おいおい、エルザ、それは……」

論点がずれている、と言おうとしたサキだったが、その肩をラインハルトに叩かれて口を噤んだ。

「本当に、ジン兄にしかできないこと、それをまず考えて。その他のことは、レーコちゃんが、老君が、ゴーレムたちが、いる。そして今は、私たち、が」

仁は黙って聞いていた。

「困ったときは、助け合う。ううん、違う。それだけじゃない。楽しいことは分かち合って、嬉しいときは一緒に感じ合って。苦しいときは支え合って、悲しい時は慰め合って。……そのために、私たちは、いる。そうじゃない?」

完全に論点がずれたが、これはこれでいい話だ、とラインハルトは思い、何も言わなかった。仁に言ってやりたいこと、その根底は同じだからだ。

「ジン様はおひとりで抱え込まれますからね……」

「あらあら、ジン君、愛されてるわね」

その様子を横で見つめている礼子にはわかっていた。

孤独だった仁の過去が、仁をそう言う風にしてしまったことが。

院長先生を除き、仁が頼れる人は……少なくとも仁が物心ついた頃には誰もいなかったから。頼られることはあっても頼る人がいなかった仁。

「……お仲間、ではなく、家族」

その礼子の声は、誰にも聞こえないような小さなものだった。

「お父さまに必要なのはお仲間ではなくて家族なのだと思うのですけれど……」