軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13-24 驚異の蓬莱島

仁は、自分について余さず説明した。

一同は、初めのうちは声も無かったが、

「……ジン兄、ありがとう。私たちを信用して、くれて」

まずエルザが口を開き、

「くふ、まったくだ。ジン、君が尋常じゃないことは知っていたつもりだったが、まだその上があったとはね」

サキが笑って言い、

「ああ、そうとも。ジン、君の信頼に応えてみせるよ」

ラインハルトは真面目な顔で頷いた。

一方、ベルチェはさすがに内容に打ちのめされたようで、ラインハルトの袖をぎゅっと掴んでいたが、やがて身体の力を抜く。

「……そうですわね。今更何を聞いても、ジン様はジン様ですわ。主人の友人で、同時にわたくしの友人ですわ、ね?」

ミーネもそれに続く。

「ジン様がそれほど陰でご苦労なさってらしたとは存じ上げませんでした。これからは私もできる限りのお手伝いをさせていただきます」

ステアリーナは日が浅いので一番最後まで呆けていたが、それでも気を取り直して、

「ジン君、あなたのこと、話してくれてありがとう。決して他には漏らさないわ。と言うか、もうあんな国になんて帰らなくてもいいとさえ思ってるの」

と爆弾発言をかました。

「そ、それはまずいかな。一応、家に帰ってから改めてこっちへ来てほしいな」

ショウロ皇国内で行方不明になったら国際問題になると言ったあれは冗談ではない。わざわざ面倒事を招くこともないので、ステアリーナには自重してもらう。

落ち着いたところで、仁は幾つかの実物を見せる事にする。

「まずは、ダイダラ」

土木工事用ゴーレムである。身長15メートル、体重8トンの巨体だ。

「う、うおおお!」

「きゃああ!」

「す、すごいね、これは……」

地響きを響かせて登場したダイダラ。

話で聞くのと実際に見るのとでは天と地ほどの隔たりがある。ショウロ皇国の 古代遺物(アーティファクト) 、巨大ゴーレムを見たことのあるラインハルトでさえ、威圧感におののいた。

その動き一つ取っても、マルカスが繰り出した巨大ゴーレムより数段上。自然で滑らかな動きは驚異的である。

「ジ、ジン、君は間違いなく世界一! 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) だよ」

「ありがとう。……もう一つ。輸送用飛行機、ペリカン2だ」

研究所前広場隅の格納庫から出されたペリカン2。この中で乗ったことのあるのはエルザだけだ。

「さあ、乗ってくれ」

「あら? ジン君、これってさっき乗った乗り物と同じ?」

ステアリーナが気が付いた。

「そうです。同じ型なんですよ」

「ふうん? ジンの馬車にちょっと似てるな?」

最後に仁が乗り込む。パイロットはスカイ2。

「それじゃあシートに座って、ベルトを締めて……」

仁は説明して回り、全員きちんとシートベルトを着用したことを確認すると自分も着席し、ベルトを締めた。

「よし、スカイ2、やってくれ」

「了解。発進します」

3基の 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) によって駆動されるペリカンは、短い滑走距離で離陸できるが、初めて乗る者が多いので今回は加速も控えめにして十分な滑走距離を取り、ゆっくりと離陸した。

「う、わわわわ!」

「と、飛んでますわ!」

「ほ、本当に飛ぶんだ……」

「ジン様がこれほどのお力を持ってらっしゃるとは……」

仁の話では飛ぶと言うことを説明されていたが、やはりそれに乗って飛び上がった事実には、エルザ以外の全員が感動を超えて驚愕の表情であった。

一旦飛び上がると蓬莱島は見る見る小さくなり、大海原に浮かぶ小島であることがわかる。

「す、すごいね……飛行船に乗せて貰おうと思っていたんだけど、これはそれ以上どころじゃないね」

「ああ、まったくだ。ジン、今更ながら君は凄いよ。脱帽だ」

だが仁はそんな褒め言葉を謙虚に受け止める。

「いや、これだって俺の世界の『科学』があったればこそだよ」

仁がそう言えば、サキはまた、

「科学と魔法の融合、それが作り出した傑作だね!」

と褒める。ベルチェなどは無言のまま、窓に貼り付くようにして外を見ていた。

「今、だいたい高度にして1万メートルくらいを飛んでいる。地上からは点にしか見えないだろう」

「うーむ、ジン、もしかして下に見えているのはエリアス半島だろうか?」

さすがに外交官をしていたラインハルト、大体の地形は頭に入っているようだ。

「そうさ。今このペリカンは西へ向かって飛んでいる。……スカイ2、少し北へ進路を向けてくれ」

「了解」

北へ曲がったことから、ペリカン2の進路方向の眼下には広い台地が見えてくる。

「あのあたりがもしかしてブルーランドかな?」

「あなたのお友だち、ルイス様がいらっしゃる街ですわね」

ルイスというのはクズマ伯爵の名前である。ラインハルトはベルチェに頷きかけると共に、

「ジン、どのくらいの速度が出るんだい?」

と、技術者らしい一面も見せた。

「今は大体時速300キロくらいだ。最高で500キロくらいは出せるかな」

そんな仁の答えに驚くラインハルト。

「ああ、ジン君、一生あなたに付いていくわ!」

そんな嬌声を上げたのはステアリーナだ。顔を上気させ、興奮している。

「こんな世界があるなんて! うちの国は、歴史の古さだけを誇り、新たな試みをしようともしない。あの 統一党(ユニファイラー) の温床になったほど保守的な国よ。わたくしだって、好んでクリスタルゴーレムばかり作っているんじゃないのよ。それ『しか』許されないのよ!」

大声でカミングアウトするステアリーナであった。

「わたくしだって、もっと、もっと、人々の役に立つものを作りたいのよ! なのに、来る日も来る日も来る日も来る日もクリスタルゴーレムと美形オートマタの研究だけ。それしか許されないの!」

それはおそらく、セルロア王国が抱える闇の一部なのであろう。高空という、誰に憚る必要もない環境において初めて発露されたステアリーナの魂の叫びであった。

「ステアリーナさんも大変だったんですね」

仁が同情するように言うと、ステアリーナは頬を膨らませた。

「嫌よ、ジン君。もう『仲間』なんでしょ? ラインハルト君みたいにもっと気さくに話してちょうだい?」

その言葉に、ベルチェはラインハルトを、エルザとサキは仁を。それぞれちょっとだけきつい目で見つめた。

ペリカン2は大きな弧を描いて飛行。ゆっくりと東へと向きを変え、また海が見えてきた。

「今日はお披露目だからこんなもの。今蓬莱島で一番速いのは俺専用のペガサス1で、最高速が800キロ出る」

その数値にまた絶句する一同。

だが、ラインハルトは、従妹がさほど驚いた顔をしていない事に気付く。

「エルザ、お前、もしかして以前にも飛行機に乗ったことがあるのか?」

「うん。…… 統一党(ユニファイラー) から助けてもらった時。それと、この前、クライン王国の病気対策しに行った、時」

それを聞いたラインハルトは血の涙を流さんばかりに悔しがった。

「くうううう! ……今ほど、宮仕えが残念に思えたことはないぞおおお!」

そんな彼の横では愛妻が少し冷めた目つきで見つめていた。

* * *

2時間ほどの空の旅を終え、研究所前に着陸。

まだ足元がおぼつかないような一同を尻目に、仁は追い打ちをかける。

「今度は研究所の裏手に来てくれ」

そこで彼等の目に映ったのは巨大な 転移門(ワープゲート) 。

「受け入れ側のいらない 転移門(ワープゲート) なんだ。『転送機』という。惜しむらくは一方通行なんだけどね」

「何だってええええ!」

転移門(ワープゲート) でさえ 古代遺物(アーティファクト) 扱いのこの世界において、それを改良して新しいものを作り出してしまう仁。

声を出せたのはラインハルトだけで、他のメンバーは声も出ないほどに驚いていたのである。