軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

01-23 久しぶりの研究所

「ああ、なんか懐かしい気がするな」

夜、ハンナやマーサが寝静まってから、仁と 自動人形(オートマタ) の礼子は、 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 拠点の研究所に戻っていた。

「夜でも明るいな……魔導ランプがあるんだっけか」

研究所内には要所に魔導ランプが備えられており、 自動人形(オートマタ) がずっとメンテしていたため、研究所内の設備は今でも十分に機能している。

その分、 自動人形(オートマタ) 自身は耐用年数が過ぎ、一度は仁の前で崩壊してしまっていた。それを仁が直した、というか魔改造して今の礼子がある。

「さて、それじゃあ手始めに礼子を改良するか」

「よろしいのですか?」

「ああ、お前にはこれからも世話になるだろうからな。……そこに横になれ」

「はい、ありがとうございます」

礼子を改造した部屋、その同じ作業台に横たわる礼子。

「一旦魔力を切るぞ」

「はい」

魔力炉(マナドライバー) を止めると自然に礼子の動作も止まった。仁は既に礼子の改良プランを頭の中で組み上げているので、即座に材料を取りに行った。

「よし、これが良さそうだ」

倉庫内に大量に貯められた 魔鉱石(マナ・マテリアル) の中から、とりわけ綺麗な 黒曜魔石(マギオブシディアン) を2個、選び出した。

次に透明な 魔水晶(マギクオーツ) を取り出し、2つを組み合わせて眼球とする。併せて、書き込む 魔導式(マギフォーミュラ) も工夫する。

「よし、魔力探知、に生命探知。それに望遠、拡大、暗視、透視、と」

これまたとんでもない機能を付加して改良は終わった。と思ったら。

「なんか、少し劣化している部分があったな、ついでだから 直(きょうか) しておくか」

腕と脚の関節に少しガタがきていたのを感じた仁。

「やっぱり、 軽銀(ライトシルバー) じゃ礼子のパワーを受けきれないか、 軽魔銀(ライトミスリル) に変えるとするか」

骨格の形状はそのままにして、より強い材質に変更、更に表面にアダマンタイトの薄い膜をコーティング。これにより、耐久性が何倍にもなる。

「あの時は急いでいたから筋肉はあまりいじらなかったんだよな。でもついでだから 魔法繊維(マジカルファイバー) の素線を細くして、本数を増やす。これでしなやかさが増すし、耐久性も上がるはず」

ワイヤーロープが、細い鋼線をよりあわせて作られるのと同じだ。

「なんか前になかったような材料があるな……ああ、礼子が退治したという 疑似竜(シャムドラゴン) の羽か。皮膚の 魔法外皮(マジカルスキン) にはもってこいだな」

やりたい放題の仁は全ての改良を4時間ほどで終えた。見た目は全く変わっていないが、中身は別物といってもいいくらいにパワーアップしている。

「よし、礼子、『 起動(おきろ) 』」

魔力炉(マナドライバー) を再起動する。今回は保有魔力は十分だったのですぐに目を覚ました。

「お父さま」

「礼子、具合はどうだ?」

起き上がり、床に降り立つ礼子。しばらくの間、身体の調子を確認するように小刻みに動いていたが、

「とてもいいです。ありがとうございました」

そう言ってお辞儀をした。

「そうか、よかった。そんじゃ、今日は村に戻るか」

仁がそう言うと、礼子は、

「え? ずっとここにいらっしゃるのでは?」

「いや、ハンナとの約束もあるし、第一、ここには食い物も水もないんだ……」

その仁の言葉に礼子はショックを受けたらしく、

「そ、そうなのですね、お父さまは食事を必要とされるのですよね……」

と落ち込んだ。仁はそんな感情が 自動人形(オートマタ) に育ってきたのを驚きながらも、

「ああ、そういうわけだから、村とここを行ったり来たりして、ここの生活環境も整えていきたいな」

「……はい、頑張ります」

それで 転移門(ワープゲート) を使い、カイナ村へと戻った仁と礼子。仁はそっと自分のベッドにもぐり込み、礼子はその傍らに立つ。そんな礼子に仁は、

「なあ、そこに立っていられると落ち着かないんだが」

だが礼子は、

「ですが、お父さまに何かあったら大変ですから。それにわたくしは疲れたりしませんのでお気遣いはご無用です」

「それじゃあせめて、そこの椅子に座っていてくれ」

「でも……」

「いうことを聞きなさい」

「……はい」

そんなやり取りの後で、ようやく仁は短い眠りに就いたのであった。

翌朝。

昨夜研究所へ行ったりして夜更かししたせいで寝坊している仁をハンナが起こしにやってきた。が。

「まだお父さまは寝てらっしゃいます」

礼子に遮られる。ハンナは、

「どいて。あさごはんだからおにーちゃんおこすの」

「もう少し眠らせて差し上げて下さい」

「ごはんできてるの!」

「睡眠不足は体によくありません」

「たべないとおなかすくの!」

「……うるさいな」

さすがに枕元で騒がれては目を覚まさざるを得ない。

「ああ、もう朝か。ハンナ、起こしに来てくれたのか」

「うん!」

なぜか勝ち誇った顔で礼子を見つめるハンナ。

「……」

礼子はうなだれている。

仁は着替えて顔を洗い、食事に行く。

「おはよう、ジン。寝坊とは珍しいね」

いつもは早起きの仁が寝坊したのが珍しいと、マーサが言った。

「ええ、ちょっと遅くまでいろいろやってたもので」

「まーた何か作ってたのかい? 好きだねえ」

仁の工作好きはマーサも知っているのでそれについてはその一言で終わりとなった。

朝食後。

食器洗いの手伝いを終えたハンナは庭に出る。と、そこに礼子が待っていた。ハンナは礼子を避けて仁のいる作業場へ行こうとするが、

「ハンナちゃん、待って下さい」

礼子が声を掛けた。

「なに? あたしおにーちゃんのところへいくんだけど」

「少し、お話しませんか?」

「あたしはなにもはなすことなんかないもん」

素っ気ないハンナに礼子は食い下がり、

「そう言わずに。お父さまのお話を聞かせてもらいたいのですよ」

「おにーちゃんの?」

仁の、という事で、去りかけたハンナの足が止まった。

「はい。わたくしは、作り直してもらった直後にお父さまが失踪……いなくなられてしまったので、昨日生まれて初めてお父さまとお話ししたんですよ」

「そうなんだ……」

その告白にハンナもちょっと礼子のことをかわいそうだな、と思った。

「ハンナちゃんは、お父さまと半年も一緒に暮らしていたので、わたくしよりもずっとお父さまの事を知っていると思うのです。ですからお話を聞かせてください」

そうまで言われると、ハンナとしても断り切れず、多少自慢げに話を始めることになった。

「……いっとうさいしょにジンおにーちゃんみつけたのあたしなんだ! おちゃの木のはっぱをとりにいこうと森へいったらおにーちゃんがたおれてたの」

「あたしがお水くむのをみたおにーちゃん、たいへんだって言ってくれて、ぽんぷつくってくれたの!」

「りやかーつくってくれたから、お水はこぶのらくになったんだよ!」

「むぎをふるうどうぐつくってくれて、おいしいぱんがたべられるようになったの!」

「こんろっていってね、ごはんつくるのらくになったんだよ! たきぎとかいらないの」

「ぼーるやてまりをつくってくれたり、おにごっこしてくれたり。おにーちゃんやさしいの」

「ごーれむのゴンとゲンつくったし、あたしのおうまさん、みんとっていうのだけど、つくってくれたの。はやいのよ!」

時系列はばらばらだが、ハンナの振るう熱弁からは、仁がハンナを大事にして可愛がっている事がうかがえた。

「そうなんですか。お父さまはハンナちゃんを大事にしてらっしゃるのですね」

なので、自然とそういうセリフが礼子の口からこぼれた。

「そう……かな」

「はい。それはもう。わたくしなんて、昨日やっとお父さまにお会いできて、やっと身体の調子が悪いところを直していただけたんですよ」

「そうなの?」

ハンナは、自分が仁をほとんど独り占めしていたことや、礼子がずっとひとりぼっちだったことをあらためて知り、少し申し訳無いような気にもなる。

「そっ、か。……レーコおねーちゃんもおにーちゃんにあえなくてさびしかったんだよね……あたしもそうだったんだなあ……」

両親を亡くして、仁に会うまで、自分も寂しかったことを思い出したハンナ。

「ごめんね。なんだか、レーコおねーちゃんが、ジンおにーちゃんをつれてっちゃうようなきがして……」

すると礼子は優しくハンナの頭を撫で、

「大丈夫ですよ。お父さま、昨夜もおっしゃってました。『ハンナちゃんとの約束がある』って」

「やくそく……」

春までは村にいる、と言ってくれた仁。

「そっか、おにーちゃん、そういってくれたんだ!」

明るい顔になるハンナ、そんな彼女に礼子は、

「ハンナちゃん、わたくしともお友達になっていただけますか」

そう言って手を差し出した。ハンナは少しの間その手を見つめていたが、やがて両手でしっかりと握り返すと、

「うん! レーコおねーちゃんとあたし、おともだち! よろしくね、おねーちゃん」

「はい、ハンナちゃん」

そんな2人の様子を仁は作業場の陰で微笑みながらそっと見ていたのだった。