軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

01-22 父と娘?

「……苦労かけたな」

仁は今、抱きつく 自動人形(オートマタ) の頭を撫でている。

「あー、なんか取り込み中みたいだが、俺たちにもわかるように説明してくれねえかな」

ついにじれたロックがそう声を掛けた。その声に 自動人形(オートマタ) は少し仁から離れる。

「申し訳御座いません。わたくしはずっと行方不明だったお父さまを捜し続けていました」

そして更に言葉を紡ごうとする、それを一旦仁は遮って、

「いや、ここでなく、そうだな、村長さんの家で話をしよう。ロックさん、それでいいですよね?」

「あ、ああ、いいぞ。……で、山からの危険は?」

「わたくしの来たあの山のことでしたら、危険は御座いません。 百手巨人(ヘカトンケイル) がいましたがわたくしの邪魔をしたので退治しておきました」

「ああ、そうか。それならいい…… 百手巨人(ヘカトンケイル) !!??」

ロックの知識では 百手巨人(ヘカトンケイル) は通常、中隊規模の人数で討伐する 怪物(モンスター) である。ロック以外の村の住人はそんなことまでは知らないので、危険が無くなったことを単純に喜んでいた。

「ジンだけじゃなくてその娘(?)もとんでもねえな……」

そう呟いたロックは少し遅れて皆のあとを追った。仁は 自動人形(オートマタ) を見やり、

「お前、……そっか、名前が無かったんだよな」

「はい、お父さま」

「なあ、そのお父さまって……」

「わたくしを造って下さった男性ですから、お父さまとお呼びするのが適切かと」

「ああ、やっぱりな」

仁もなんとなく理解していたが、はっきりと言われて完全に納得する。

「ということは先代が母親ってわけか」

「はい、アドリアナ・バルボラ・ツェツィ様がお母さま、です」

仁は 自動人形(オートマタ) が随分人間くさくなった、と感じた。それは仁の知識を転写したからに他ならない。仁もうすうすそれは感じている。

「と、なると、やっぱり名前がな……」

ちょっと考えた後仁は、

「よし、今からお前の名前は礼子だ」

仁にしてはまともなネーミングである。

これは、仁の名前が、孤児院の院長により『仁義礼智信』から1文字を取って付けた事を聞いているので、同じくその5文字の中から女の子向けの文字を探し出して付けたからに他ならない。

「はい。ありがとうございます。わたくしは今から『礼子』です」

そんな話をしているうちに村長宅へ着いた。仁は、1つだけ礼子に念を押す事を忘れない。

「いいか礼子、『 転移門(ワープゲート) 』のことは秘密にしておけよ」

と、周りにいる人間には聞こえないよう小声で指示を出した。

その時、村長のギーベックが何事かと表へ出てくる。

「揃いも揃って何事だね?」

1番後ろを歩いていたロックが前に出て、『礼子』の事を掻い摘んで話し、詳しい話を聞きたいからここへ来た、と締めくくった。

「なるほどのう、もう危険がないというならいいだろう。ほれ、中へ入れ」

「ありがとうございます」

それで仁、礼子、村長、ロック、そしてトム達男衆が。そしてその他にも、手の空いていた村の者達がぞろぞろとやって来た。おかげで広い村長宅の居間も、人で埋め尽くされてしまった。

「さて、それじゃあ話を聞こうか」

村長が口火を切った。

「そんじゃ、俺からまず話そう」

最初に話し始めたのは仁。

「この子、礼子は、俺の先代が造り、俺が直した 自動人形(オートマタ) なんだ。俺が 転移門(ワープゲート) の暴走でここへ飛ばされたのをずっと捜し続けてくれていたらしい」

「はい。お父さまの行く先がわからなくなってしまったので、わたくしは……」

仁の後を受けて 自動人形(オートマタ) 、礼子がこれまでのことを簡単に説明する。もちろん 転移門(ワープゲート) のことはぼかして。それでもそれは聞く者の興味を引いた。

「……というわけです」

礼子の長い話が終わった後も、しばらくは口を開く者はいなかった。皆、礼子の忠誠心に感心し、その苦労に同情し、そしてその強さに呆れていたのである。

「なるほどな、そうするとあの山鹿は 百手巨人(ヘカトンケイル) が棲みついたせいでこっちへ逃げてきていたんだな」

仁がそう言うと、周りの人間も我に返ったように、

「そ、そうするともう危険はないんだな?」

「はい、 森熊(ウッドベアー) は 百手巨人(ヘカトンケイル) がみんな食べてしまっていました」

「ああ、よかったぜ。結局、山鹿の肉が大量に獲れて、俺たちは得をしただけだしな」

「それにしてもレーコ、だっけ? 人間と変わらねえな。でもそんな 形(なり) で 百手巨人(ヘカトンケイル) を倒しちまうなんてすっげえよ」

「作ってくれた仁をはるばる捜しに来るなんて泣かせるぜ」

口々に言い合い、収拾が付かなくなりかけたところを、

「さあ皆、わかったなら解散だ。それぞれの家に戻って家族を安心させてやるがいい」

村長がそう締めくくり、皆それぞれ散っていった。仁はもちろん礼子を連れてマーサの家へ帰る。

「ただいま」

「おかえり、ジン……何だい、その子は?」

「おかえりなさい、おにーちゃん……!?」

マーサもハンナも、礼子を見て驚いている。そんな2人に仁は、

「紹介するよ。俺の 自動人形(オートマタ) で名前は礼子。行方不明になった俺を捜しに来てくれたんだ」

そう紹介する。

「初めまして、 自動人形(オートマタ) の礼子と申します。お父さまがお世話になっておりますようで、お礼申し上げます」

「お父さま!?」

やっぱり最初は驚いた2人だが、礼子が苦労して仁を捜し出したと聞いてマーサは感心することしきり。一方ハンナはなんとなく不安そうな瞳を礼子に向けていた。

その時、仁のお腹が鳴り、

「まあ、もうお昼過ぎかい、急いでお昼にするからね。そっちの、レーコちゃん、嫌いな食べ物はあるかい?」

台所へ向かいながらマーサがそう聞いたが、

「いえ、わたくしは 自動人形(オートマタ) ですので何も食べません」

と礼子が答える。マーサはあらためて驚いた顔で、

「そ、そうかい。そんじゃあ、3人分でいいんだね」

そう言って台所へ行った。残ったのは仁、礼子、それにハンナ。そのハンナはおそるおそる仁に尋ねる。

「おにーちゃん、ここ出て行っちゃうの……?」

「え?」

「だって、レーコさんが迎えに来たんでしょう?」

ハンナは目に涙を溜めながらそう言った。それに対して仁は、

「いいや、少なくとも春になるまではここにいるよ」

「ほんと?」

「それに、ここを出ていってももう来ないわけじゃない。出来るだけちょいちょい遊びに来るから」

「ほんと? ほんとなのね?」

そう聞いたハンナは目に見えて元気になった。

「本当さ、約束する」

「よかった……」

本当に嬉しそうに笑うハンナ。ちょうどそこに、マーサがお昼のパンとスープを持ってやって来た。

「さあさ、お昼にしましょ。レーコちゃん、ほんとに食べなくていいんだね?」

「はい。お気遣いありがとうございます」

それで仁、ハンナ、マーサは3人で少し遅い昼食。食べながら仁は、もう山からの危険はないだろうと話した。

「そうかい。危険が無くなったのなら安心だね」

マーサもほっとしたようだ。

食後、仁は礼子を連れ、ハンナが食後のお昼寝をしている間にと作業場へ。

「それじゃあ礼子、早速だが 転移門(ワープゲート) の資材を取りに行ってきてくれないか。みんなには危険が去った事を最終的に確認してきてもらうということにするから」

「はい、わかりました。それでは早速」

そう言って礼子は黒髪をなびかせ、風のように走り出した。

「さて、俺はここに 転移門(ワープゲート) を据える準備をするか」

裏手に待機していたゴンとゲンを呼び寄せ、作業場の隅に穴を掘らせる。今度作るのはシェルターではなく、小さな部屋だ。仁の感覚で言うと8畳間くらい。なのでそれはすぐに完成した。

壁、床、通路、階段、それらすべてを魔法で硬化、強化し、入り口にはちょっとわからないような扉を付ける。ゆくゆくは魔法結界でも張るつもりだが、それは研究所に一旦帰ってからになるだろう。研究所との行き来が出来れば、今よりずっといろいろなものを楽に作れるようになる。

「ただ今帰りました」

1時間ほどで資材を担いだ礼子が帰還。まだハンナはお昼寝中、さすがの早さである。

「よし、さっそく設置だ」

ハンナが目覚めて作業場に遊びに来る前に 転移門(ワープゲート) を設置するつもり。仁は急いで出来たばかりの地下室へ潜った。

「これをこれと繋いで、組み立てて、これに組み合わせて」

既に何度もやっている礼子がメインで 転移門(ワープゲート) は据え付けられた。

「これは魔力自給型ですから、もう使えます。この簡易結界により、魔力の波長がお父さまと同じでなければ使用できません」

「礼子は大丈夫なんだな?」

「はい。わたくしはお父さまが起動魔力を注ぎ込んで下さいましたから、波長はお父さまと同じですので」

「他の人を連れて行くことは?」

そういうこともあるかもしれないと聞いておく。この辺、仁にも知識はあるはずなのだが、脳内検索に時間が掛かるようだ。

「お父さまやわたくしと身体的接触があれば大丈夫です」

「手を繋いでいれば大丈夫ということだな」

「はい」

「よし。今夜、一度帰ることにする。欲しい資材もあるし」

仁がそう言うと礼子は、

「それでしたらお父さまにお願いがあります。わたくしの魔力探知機能をもっと向上させて下さいませんか?」

「ん? ああ、俺を捜すのに苦労したからだな。わかった、帰ったらさっそくやってやるよ」

こうして更に常識外れの 自動人形(オートマタ) になっていく礼子なのである。