軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10-30 進展いろいろ

ハンナは久しぶりのカイナ村、昼食を食べ終わると遊びに行った。

エルザはミーネに旅の話をゆっくり話して聞かせている。

仁は、念のため、というか、この先に何があってもカイナ村を守れるようにしようと計画を立てた。その実現のため、蓬莱島へと跳ぶ。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

バトラー1が出迎えてくれた。

仁は工房に向かった。

「おかえりなさいませ、ごしゅじんさま」

アンもやってきた。あとで、同じ型の 自動人形(オートマタ) 、ティアに会った事を話してやろうと仁は思った。

馴染んだ工房の椅子に座り、備え付けの 魔素通信機(マナカム) で老君と相談を始める仁。

カイナ村が仁の租借地になった事、そのため、警備を増やそうという事を説明。

「何箇所かに 魔導監視眼(マジックアイ) を備え付けて、監視出来るようにすること。それから警護のゴーレムを増やす事」

仁の考えを話すと、老君は賛成した。

『そうですね、街道沿い、エルメ川、北の山、東の森、西の森などに監視用に 魔導監視眼(マジックアイ) を備えるのは賛成です』

「ごしゅじんさま、結界も準備した方がいいかと思われます」

アンが意見を述べてきた。確かに、防御用の結界は有効だ。

「よし、エルメ川にかかる橋と、村の柵、その地下に結界発生機を埋め込もう」

制御は仁と礼子、そして老君の3者のみに可能とした。優先度は仁、老君、礼子とする。

「ゴーレムは26体。 陸軍(アーミー) ゴーレムと同型で、ランドAからZまでとする。色は目立たないようグレーにしよう。 消身(ステルス) は標準装備」

蓬莱島軍は数字なので、そちらと区別するためである。

『はい、すぐ製造に取りかかります』

同型機ということで、老君にも製造する事は可能となっている。

「ごしゅじんさま、武装もさせた方がよろしいかと」

またアンの助言。確かにそうだ。

「よし、対人用に 麻痺銃(パラライザー) 。対ゴーレム用には近接が 超高速振動剣(バイブレーションソード) 。遠距離用に 電磁誘導放射器(インダクションラジエータ) でどうだ?」

「そうですね、相手がゴーレムとは限らないので、 電磁誘導放射器(インダクションラジエータ) よりレーザー砲の方がよろしいかと」

「そうか、じゃあ両方にしておこう」

いったい何と戦うつもりなのか、と突っ込む者は蓬莱島にはいない。

「最後に、俺がいない時の代理がいるといいな」

『そうですね、バトラーを常駐させましょう』

ということで、バトラー1体をカイナ村にある仁の家に常駐させることとなった。

「それはいいが、バトラーは何体作るつもりだ?」

仁が尋ねると、50体、と言う返事が返ってきた。

「わかった。じゃあそれを51体にして、俺の所に来るバトラーはナンバー外にしておけ」

『はい、わかりました。ナンバーが何も無いと呼びづらいので、Aとしておきます』

ということで、完成したばかりのバトラーが1体、仁の家に常駐し、仁が不在の時の代理を務めることとなる。

「さて、それからだな……」

仁は、クライン王国でハンナが暴漢に拉致されたことを話し、

「こういう事態を防ぐには 隠密機動部隊(SP) の設定を少し変える必要があると思うんだ」

『そうですね、転ばぬ先の杖と言いましょうか、疑わしい者がいた場合の対処ですね』

「ハンナちゃん、ごしゅじんさま、おねえさまが知らない相手の場合、いつでも取り押さえられるようにするというのはどうでしょうか」

アンの提案である。

「うーん、下手すると、例えば、道を尋ねたくて近づいて来た人まで取り押さえそうな気がするんだが」

「そうですね……」

なかなか良いアイデアは出ないものだ。

『これはもう、 御主人様(マイロード) に新しい防御用魔導具を開発していただくより他にありませんね』

「え?」

『身体の表面に沿って形成される 防御結界(バリア) ですよ』

老君からの提案。確かにそれなら常時展開させていられる。

「うーん、難しいが考えてみよう。今すぐには無理そうだが」

『はい、そうそう必要な事態が起きるとも思えませんから』

併せて、 麻痺銃(パラライザー) を標準装備にすることとした。雷魔法は使えても、気絶させる程度の電撃は難しい。そばにいる者を巻き込みかねない。

その点、 麻痺銃(パラライザー) なら対象だけを麻痺させることが出来る。

「よし、 隠密機動部隊(SP) はそれでいいだろう。それとな……」

仁は、その他の用事として、ポケットから 魔結晶(マギクリスタル) を2個取り出す。

1個はティアの古い 制御核(コントロールコア) 、もう1個はハインツ・ラッシュの剣技などのデータが入っている。

「これを解析しておいてくれ。多分貴重な情報になる筈だ」

『承りました』

仁は、移動用端末である老子の手に2個の 魔結晶(マギクリスタル) を手渡した。

「あとは……なあ、俺が言い出さないからかも知れないが、例の、遺跡で見つかった日記のような本、な? いくらなんでも解読終わってるだろう?」

仁は渋い顔をしてそう尋ねてみた。老君が何と応えるか、内心楽しみにして。

『はい、それが……』

珍しく歯切れの悪い老君の反応。仁はおや、と思う。

「どうした? 何か問題があったのか?」

『はい、問題と言えば問題ですが』

「だから、どうしたんだ?」

『はい、それでは申し上げます。あの日記は日記でした』

「あ?」

仁は耳を疑った。老君がおかしくなったのかと思って。

『いえ、つまりですね、魔導大戦時の重要な事が書かれているのかと思っていたら、本当に個人的な日記だったんです』

「ああ、なんとなくわかった」

仁は理解した。過去に生きた人間の私生活が延々と綴られていたのであろう。そう老君に聞くと、その通りです、と返答が返ってきた。

『辛うじて、参考になる事柄が2つ3つありましたが、それ以外は得る物はありませんでした。見も知らぬ者の私生活を読んでも面白くないでしょう』

「まあ、なあ」

力が抜けた仁は、参考になる事柄とは何か、と老君に問いかける。

『錬金術に関する事項と、魔族に関する事項、それに他の遺跡に関する情報です』

「ほう、面白そうだな」

仁が一番興味を惹かれたのは魔族のこと。魔族という種族に関して、仁はほとんど知らない。

『とはいえ、僅かですが。……魔物は、 自由魔力素(エーテル) を主な糧として生きる生命体ですが、魔族はその中でも知性を持った種族を言います』

「うんうん」

老君の説明が続いた。

それによると、魔族は人間に匹敵するほど高度な文明を築いたようだ。が、人間ほど『群れる』事を良しとせず、それがために『戦術』『戦略』を用いなかった。

そのため、人間側は辛くも勝利を得ることが出来た、という。

「だがそうすると、砦を放棄して撤退というのはおかしいじゃないか」

勝っているなら撤退の必要は無さそうなものである。

『はい、あの日記ではそこまではわかりませんでした』

「そうか、残念だ」

『先ほどお預かりした、アンの同系列機の記憶から何か得られるかも知れません』

「うん、そうしたらまた報告を頼む。で、次の錬金術というのは?」

仁も、錬金術は現代地球で言う化学に相当するらしい事だけは知っている。だが、そこ止まりだ。

錬金術が発達したのはおよそ500年前で、先代よりも後。であるから、孤島に引きこもったゴーレム達(礼子の前身である 自動人形(オートマタ) 含む)には知る由もなかったわけである。

『はい、これも大したことではありませんが、いわゆる『強酸』を兵器として使おうという動きがあったようです。結局、強酸を大量に作る事が出来なかったことで実現しませんでしたが』

強酸とは、電離度の高い酸のこと。硫酸や硝酸、塩酸などのことである。これを兵器として使うと言うことは、密閉容器に入れて敵である魔物にぶつけるなどするのだろう。

「化学兵器か……」

あまり広まって欲しくない技術ではある。

「最後の遺跡の情報というのは?」

『はい、便宜上遺跡と呼びましたが、当時なら放棄した砦、ということになります。あのヤダ村遺跡の周辺にあった砦の情報です。ですが、全て我々つまり 第5列(クインタ) が調査済みでした』

「わかった。引き続き、預けた 制御核(コントロールコア) の解析を頼む」

『承りました。それから、これは私とトパズが調査していた事なのですが、報告してよろしいですか?』

「ん? 何だ? 聞こう」

老君の珍しい発言が続く日だ、と思いながら、仁は先を促した。

『はい、それでは。……蓬莱島の植物、特に果樹の成長が良い理由が判明しました。蓬莱島は魔力の特異点なのです』

「特異点?」

『はい。通常、 自由魔力素(エーテル) は北極に集中しています。北極の10分の1以下ではありますが、蓬莱島周辺には 自由魔力素(エーテル) が集中する『脈』があったのです』

風水などでは地脈、などという考えがあるという。老君が述べたのは、正に魔力の脈道である。

「なるほど、それで?」

『ペルシカ、アプルル、シトランの順に、 自由魔力素(エーテル) の含有量は下がります。最も高いペルシカは、他の地方産のものに比べ、蓬莱島産のものはおよそ10倍も 自由魔力素(エーテル) を含んでいます』

「すごいな。まるで『仙桃』だ」

少し前、老君は、仁がこの事実を知ればそう言うだろうと推測したその通りであった。

『ですから、 魔力庫(エーテルストッカー) を使う事でほぼ劣化無しに保存することが出来る事もわかりました』

「おお、それはいいな。で、もう冷蔵庫は改造済みなんだろう?」

今度は仁が、老君の仕事ぶりを看破した。

『はい、仰るとおりです』

仁は、自らが作り出した老君というシステムが健全に動作していることを知り、嬉しく思ったのである。

* * *

セルロア王国の地方都市、アスタン。その北へ1キロメートルほど離れた場所。

その露岩地帯にショウロ皇国の補給基地がある。

外交官ラインハルトはそこで足止めをくらっていた。

セルロア王国の首脳陣の大半が 統一党(ユニファイラー) の関係者だったため、その首のすげ替えを行った結果、政府としての機能が麻痺してしまったのである。

遅くとも25日には出発出来ると踏んでいたのだが、セルロア政府からの許可が下りなかったのである。

「ラインハルト! 喜べ! やっと出発出来るぞ!」

エルザの兄、フリッツが小走りに駆けて来てそう言った。

「え、本当か?」

「ああ。ようやく手続きが通った。明日朝、出発するぞ! フォルト、ボロロン、ガニーズ、トスコシア。そして我が祖国だ!」

テンションの高いフリッツだが、ラインハルトも素直に嬉しい。予定より1週間くらい遅れているのだ。

「これでようやく祖国の土が踏めるな!」

「ああ、楽しみだ」

その夜、ラインハルトは久々に仁と会話することも出来、満ち足りた気分で床に就けたのである。