軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10-17 閑話15 蓬莱島の秘密とトパズのお仕事

蓬莱島のゴーレムメイド、トパズは土地開発担当である。

同時に作られたアメズとルビーは防衛担当、ペリドは家事担当、アクアは治水担当。

それぞれが1から100までの番号が振られた配下を持っており、日々仕事に勤しんでいた。

土地開発は地味だが、重要である。

なぜなら、主人である仁が必要とする食料を生み出す事に繋がるのだから。

トパズ1から100の長であるトパズリーダーは、仁そして老君(結局は仁の知識だが)から、その活動に必要な知識を授けられている。

不明な点は老君に確認する事で大半は解決されるので、日常業務に支障が出ることはほとんど無い。

「果樹園は一段落しましたし、畑も整備出来ましたね」

独り言を呟くトパズ。これは仁から受け継いだクセでもある。一人暮らしが長いと独り言が多くなるものだ。

トパズの目の前には、見渡す限りの畑と果樹園が広がっていた。

畑には小麦と大麦。果樹が四季成りなので、麦はどうかと試しに播いてみたらぐんぐんと育ち、もうすぐ収穫出来そうである。

果樹はペルシカ、アプルル、シトラン。それとマルオン(栗もどき)、オーナット(クルミもどき)。それにラモン(レモンもどき)が少々。

「一番役に立ちそうなのはペルシカですね」

現代地球で言う『桃』に酷似したその果樹は、この世界でも春に花を付け、夏に果実を実らせるのだが、ここ蓬莱島ではほとんど一年中収穫出来る。

これを老君と調べてみたところ、蓬莱島の地質的特性にあった。

『蓬莱島は、 自由魔力素(エーテル) の『地脈』が通っているようなのです』

と老君は言った。まだ調査中の事項なので、仁には報告されていない。

老君の移動用端末である老子と、トパズ11から30らが協力して調べているので、あと数日もしないうちに結論が出るであろう。仁への報告はそれからだ。

先代の 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 、アドリアナ・バルボラ・ツェツィがここに拠点を設けたのは、地下にある豊富な鉱脈のためであった。

『その豊富な鉱脈があるということは、蓬莱島が『 自由魔力素(エーテル) 』の通り道になっている可能性が高いのです』

老君はそう推測し、推測に基づいた調査が始まった。

事実、蓬莱島の作物の成長速度は速い。

魔力特性の高い植物ほど成長が早いことは確認出来た。

「その最たるものがペルシカ、ですしね」

ペルシカ、アプルル、シトランといった、おそらく昔から自生していたであろう果樹は例外なく四季なりとなっている。

『先日、ブルーランドで購入したアプルルと、蓬莱島のアプルルを比較してみました』

一昨日、老君と交わした会話を思い出すトパズ。

「どうでしたか?」

と問いかけたトパズであったが、彼女の中では既にその答えは想像が付いていた。そして、

『蓬莱島産の方が含まれている 自由魔力素(エーテル) が多かったですね。具体的には約10倍』

と、その推測通りの答えが返ってきたのであった。

仁の理論によると、 自由魔力素(エーテル) の大きさは素粒子よりも小さく、物質を素通りしてしまう。

自由魔力素(エーテル) を留めおくには、魔力によるしかない。

「でも、ペルシカの実には 自由魔力素(エーテル) が留まるんですよね……」

『魔法使い、魔導士と呼ばれる人種は、空気中にある 自由魔力素(エーテル) を呼吸などで取り入れ、体内で 魔力素(マナ) に作り変えることができる。

体内の 魔力素(マナ) は魔法を使えば減少するが、時間が経てば空気中の 自由魔力素(エーテル) を取り込んで回復する。

この 魔力素(マナ) は、精製した人間の意志とイメージにより、様々なエネルギー形態を取らせることができ、またそれを操ることができる。これが魔法である』

先代が構築した理論に、仁が独自の解釈を加えた魔法理論である。

魔力を持たない人間は、そもそも『取り入れる』事が出来ないから利用することも出来ないわけだ。

「でも、ペルシカの実には 自由魔力素(エーテル) が留まる。つまり、実自体が魔力を持つと言うことですよね」

実が魔力を持つというなら、木も魔力を持っている。

自由魔力素(エーテル) 濃度の濃い地域では魔法の威力が上がったりする。

「このため、蓬莱島では魔力植物(仮称)の生育が早いということですね」

ここまでが、老君とトパズの出した結論である。

残るは、地中にあるはずの 自由魔力素(エーテル) 脈(仮称)を発見すること。

尤も、これはもうある程度証明されてはいる。

自由魔力素(エーテル) を糧とする『 地底蜘蛛(グランドスパイダー) 』や『 地底芋虫(グランドキャタピラー) 』が、島の地下に大量に棲息し、繁栄していることでわかる。

あとは調査結果がそれを裏付けするのを待つだけである。

ところで、ペルシカなどが魔力を持つと言う特性の発見は、画期的な保存法を見出す指標となった。

『 魔力庫(エーテルストッカー) に入れたペルシカ、アプルル、シトランは劣化していません』

4月11日に 魔力庫(エーテルストッカー) が完成したのだが、老君はその時実験的に果実も貯蔵していたのである。

それによると、普通の冷蔵庫では緩やかに傷んでいく果実が、 魔力庫(エーテルストッカー) 内ではまったく劣化しなかったという。

魔力庫(エーテルストッカー) に魔力を持たない物を貯蔵してもまったく問題無いことから、研究所内の冷蔵庫・冷凍庫は全て、 魔力庫(エーテルストッカー) 併用に改造されていた。

「ご主人様がお召し上がりにならない果実が腐ってしまうのもこれで防げますからね」

そう、仁のためにせっせと備蓄している果実であるが、冷蔵庫に入れていても、およそ1ヵ月で腐ってしまう。

もったいないので、傷みかかったものは乾燥加工して、タツミ湾の生け簀で飼っている魚の飼料に転用していたのだ。

だが、冷蔵庫を 魔力庫(エーテルストッカー) としてからは、腐らせることなく貯蔵しておけていた。

このごくごく一部を、各地に散らばった 第5列(クインタ) に利用させている。

「おお、この季節にペルシカとは珍しい! 金はいくらでも出すぞ!」

そう言ってくる貴族は多い。そんな貴族に贈り物とすることでコネを作り、いろいろな情報を手に入れることが出来ているのだ。

『もしかしたら、魔力の回復も出来るかも知れません』

そう推測した老君は、 第5列(クインタ) を使い、密かに人体実験をさせてもいた。

人体実験と言っても、ペルシカを食べる前と食べた後での魔力量を計測するだけである。

以前、エゲレア王国のギルドで、魔力特性を測定した時の経験から、仁が考案した計測器。

原理は簡単。魔力共振という現象を使い、対象の保有魔力を測定するのである。

ペルシカを食べた貴族は大抵、魔力持ちでもある。ゆえにこっそり計測してデータを集めることが可能であった。

それによると、推測通り、蓬莱島産のペルシカは魔力回復の効果が高いことがわかったのだ。

『 御主人様(マイロード) ならきっと『仙桃』とお呼びになる気がします』

『蓬莱島』に実る『仙桃』。まさしくファンタジーである。

そんな折、仁に付いている 隠密機動部隊(SP) から面白い情報が入ったと老君からトパズにも連絡があった。

『クライン王国でペルシカが食卓に出たそうです』

普通に考えたら、まだ花が散ったばかりの筈だ。蓬莱島よりかなり北にあるクライン王国で実がなっているはずがない。トパズは不思議に思い、反問する。

「そのペルシカはどこで採れたのでしょう?」

『 第5列(クインタ) に追跡調査させています』

老君は即座に答えた。

クライン王国首都アルバン付近にはスピカ7とレグルス2の2体が派遣されている。そのうちの成人男性型、レグルス2が調査に当たっていると付け加える。

その結果は翌日にはもたらされた。

クライン王国は魔法技術的には後進国だが、逆に農業は他の国よりいくらか進んでいる。

なんと、『温室』があったのである。

3方を石で囲った果樹園。残る1方と天井を、巨大な水晶の板で覆った温室。

中で火の 魔石(マギストーン) を使って夜も保温することで、春に収穫出来るようにしているとのことだった。

「11月まで寒さに遭わせた後、12月から保温を開始。1月中に花が咲き、4月中には収穫が開始されるとのことです」

『だが、量はたかが知れているでしょうね?』

「はい、せいぜいが100個といったところです。その大半は王宮に納められます」

レグルス2はそう締めくくった。

「それなりに貴重なものを饗されたということは、ご主人様たちは歓迎されていると言うことですね」

トパズは老君に向かってそう言った。

『そうですね。温室は今のところ蓬莱島では必要無いでしょうが、一応準備しておくのも悪くないかも知れません』

このように、仁の食生活改善のため、トパズは老君と協力し合って日夜尽力しているのである。

* * *

自由魔力素(エーテル) の通り道、すなわち『魔力脈』の存在が明らかになるのはこの2日後、ちょうど仁が戻ってきた時になる。