軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09-39 仁、出撃

「それじゃあ、今は戦闘は行われていないんだな」

老君と連絡を付けた仁は、状況が好転したことに安堵する。

『ごしゅじんさま、組織というものは手足を潰すのではなく、頭を潰すのが効果的なのです』

そこにアンの声が割って入った。つまり支部ではなく本部を潰せと言うことである。

言われた仁は苦笑して、

「まあ、そうだな。わかった。じゃあ、俺はもう少ししたらそっちへ戻る。そして、この騒ぎにケリを付けよう」

『わかりました。お待ちしております』

仁はそれで通信を切る。無言で広場へ戻り、マーサ、ハンナ、ミーネ、エルザがいる場所へ。

「ああ、ジンかい、どうだい、楽しんでるかい?」

「ええ、もうお腹いっぱいです。ところで、ちょっとお話があるんですが」

と言って仁は4人を少し離れた所へ誘い出した。

「何だい、ジン?」

「おにーちゃん、どうしたの?」

マーサとハンナは怪訝そうな顔をしているが、ミーネとエルザは薄々感付いているようだ。

「今、この国は侵略を受けています」

仁は口を開いた。

「相手は 統一党(ユニファイラー) という奴らです。俺はそいつらを止めに行くつもりです」

簡単に略して話したのでハンナだけは『?』という顔をしているが、マーサにはわかったらしい。

「ジンにはそいつらを止めるだけの力があるんだね?」

幾分心配そうにマーサが尋ねた。それを察した仁は胸を張って答える。

「はい」

「そいつらを止めたらまたここへ戻ってくるんだね?」

「はい」

「必ず、だよ。戻って来なかったら承知しないよ」

「はい!」

「うん、なら行っておいで、ジン。……ミーネさんとエルザちゃんのことは心配いらないよ」

胸を叩いてマーサはそう言った。

「おにーちゃん、気を付けてね。あたしいい子で待ってるから」

マーサの雰囲気で、ハンナにもなんとなくわかったらしい。

「ああ、わかってる。ハンナの所へ必ず戻ってくるからな」

仁は屈み込み、ハンナの頭を撫でながらそう言った。ハンナは少し涙ぐみながらも微笑む。

「ジン兄、気を付けて。そして、これ以上あいつらのせいで不幸な人が出ないようにして」

エルザも真剣な顔で仁にそう声を掛けた。

「わかった。これでケリを付けてやる」

「ジン様、お気を付けて。ご武運を祈っております」

ミーネも言葉少なに見送りの言葉を掛けた。

「ああ。それじゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

家族(・・) の見送りを受けた仁は笑って手を振り、歩き出す。

そして仁は礼子と共に蓬莱島へと戻った。

* * *

「老君、情報を頼む」

『はい、 御主人様(マイロード) 。 統一党(ユニファイラー) の本部と思われる場所が判明しました』

「おお、すごいじゃないか。それはどこなんだ?」

『アスール湖の西岸、カシムノーレという街の更に西の山中です。そこには鉱山と、遺跡があります』

「なるほど、遺跡をそのまま利用して本部にしたのかな? それに資源があればゴーレム製造も捗るな」

『はい。そして例の熱気球、あれはやはり魔導大戦で開発されたものです。アンが裏付けてくれました』

統一党(ユニファイラー) では熱飛球と呼んでいるそれは、飛行できる魔物に対抗して作られたのだが、速度が出ないなどの欠点があり、結局実用にはならなかったという。

「こっちには 垂直離着陸機(VTOL) があるしな」

『それと、ラインハルトさんを襲ったゴーレムと 自動人形(オートマタ) ですが、 自動人形(オートマタ) はアンの言っていた黄金の破壊姫に間違いないですね。そしてゴーレムに1点、気になる機能が付いていました』

「それは?」

『ラインハルトさんが放った 炎玉(フレイムボール) を手で触れただけでかき消したというのです。それを分析した結果、『魔法を無力化する』能力ではないかと推測しました』

仁はそれを聞き、自らも考えてみる。

「うーむ、例のギガースは魔力を吸収できたな。あれを応用したなら可能かもしれない。魔力を吸収するのではうっかり魔導士に触れられないだろうが、魔法を無力化するなら別だからな」

『はい、私も同じように考えます』

「なら、魔法を使わなければいいだけだ」

純粋に物理的な攻撃なら防ぎようがない。大した脅威にはならないだろうと仁は結論した。

「あとは何かあるか?」

『ラインハルト様の傍に精神操作された者がいたので解放した、というのは聞いていただけましたか?』

「ああ、聞いている。多分……彼だろうな」

仁はエルザの兄、フリッツの顔を思い浮かべた。

『そして、ラインハルト様にお願いして、ショウロ皇国騎士の剣技を 知識転写(トランスインフォ) でコピーしていただきました』

「おお、それはすごいじゃないか! よし、 陸軍(アーミー) 優先でコピーしよう。出撃前の時間で何とかなるだろう。時間があれば蓬莱島 隠密機動部隊(SP) や 第5列(クインタ) 、他のゴーレム達にもな」

『さっそく行います』

ーーとはいうものの、黙して何も言わないがラインハルトはかなり苦労したらしい。

「それで終わりか?」

『はい。あと1点。 御主人様(マイロード) 専用機を用意しましたのでご確認下さい』

「俺の専用機だって?」

仁は研究所前に駐機してあるというそれを見に外に出た。老君の移動用端末、『老子』が付いてきて説明してくれる。

『基本は 垂直離着陸機(VTOL) ですが、搭載量を減らし、速度を出せるようにしました』

その言葉の通り、 垂直離着陸機(VTOL) であるファルコンよりも1回りほど小さく、かつスマートである。

『非常用脱出装置としてコクピットがそのまま 転移門(ワープゲート) になっております。信頼性を上げるため、2系統を備えており、転送後は自動的に自己破壊し、機密を守ります』

転移門(ワープゲート) は確かに究極の脱出装置と言えよう。

『操縦はスカイ1の 制御核(コントロールコア) をコピーした専用の 制御核(コントロールコア) が自動で行います。もちろん、非常用に手動での操縦も可能です』

自動操縦装置付き。仁は行き先などの簡単な指示で良いというわけだ。

『武装は 麻痺銃(パラライザー) 、 電磁誘導放射器(インダクションラジエータ) 、レーザー砲、それに小さいながら 魔力砲(マギカノン) を搭載。精度は低いですが 魔力探知装置(マギディテクター) も装備。独立した火器管制専用 制御核(コントロールコア) が制御しています。また、防御として物理・魔法双方を防ぐバリアを備えております。当然 消身(ステルス) 機能も』

「至れり尽くせりだな……」

まるで自重していない老君。それは仁自身を映す鏡のようだ。

『定員は5名。 御主人様(マイロード) 、礼子さんの他に3名までお乗せできます』

崑崙島でハンナ、エルザ、ミーネと一緒に海へ行ったことを前提にしているのかもしれない。

『64軽銀を使用、最高速度は推定で時速800キロ』

蓬莱島の航空戦力中最高速である。

「すごいな、制限のある中、よくぞここまでの物を作ったな、老君、誇りに思うぞ」

老君の権限は、既存のもののアレンジまでしか許されておらず、それの組み合わせでこれだけのものを作り上げた老君に仁はただ感心した。

『お褒めにあずかり光栄です、 御主人様(マイロード) 。どうぞその専用機に名前を付けてやって下さい』

そう言われた仁は考え込む。そして考えた末、

「よし、『ペガサス1』だ」

と命名。同時に機体に工学魔法で『PEGASUSー1』と印した。

『ありがとうございます。蛇足ですが、 魔力探知装置(マギディテクター) を備えておりますので、お持ちの 魔素通信機(マナカム) で呼び寄せることも可能です』

距離が近ければ近いほど 魔力探知装置(マギディテクター) の精度は上がるから、仁を探知してその下に飛んでくる事は可能というわけである。

「そうか、あらためてありがとう、老君。よし、礼子も一緒に行くぞ。そしてアン、お前も来い」

「はい、ごしゅじんさま」

遺跡に詳しそうなアンを伴うことにした仁。同時に身代わり人形も連れていく。もちろん前回改造した謎のゴーレム 使役者(マスター) バージョンで、仁には似ていない。

そして仁自らも万全を期し、強化服、ヘルメット、正宗に村正などを装備してペガサス1に乗り込んだ。礼子も桃花と 魔力砲(マギカノン) を装備して乗り込む。

予備の武器として、 超高速振動剣(バイブレーションソード) も幾振りか積み込んでおく。

これで準備は整ったと判断した仁は、老君に指示を出した。

「老君、今回礼子が俺と一緒だから、タイタンは1号機を出撃させる。俺は大まかな指示をするから細かい指示は老君に頼むぞ」

『承りました』

「よし、出撃可能なラプターとファルコン、それにペリカンは全機出撃だ。 陸軍(アーミー) ランド隊はそれぞれに分乗しろ。武器はフル装備。医薬品も持っていけ」

これで忘れた事はないかと自問する仁。だが、ファルコン内にも 転移門(ワープゲート) はあるし、いざとなれば浮沈基地経由でも輸送可能である。

「蓬莱島軍、出撃だ!」

仁の声が響き、まずラプター隊が一足先に発進する。浮沈基地の大きさでは離着陸できないためだ。次いでタイタン1を乗せたコンドル1が発進。続いてファルコン1から10が離陸。

最後に仁の乗ったペガサス1が蓬莱島の空へ舞い上がった。

そして蓬莱島航空戦力がセルロア王国に近づいた頃、巨大湖アスール湖中央に浮沈基地が浮上。上部ドームが開き、巨大なゴーレムを乗せた飛翔体が飛び出した。

だが 消身(ステルス) フィールドに守られ、それを目にした者はいない。

今、蓬莱島戦力の大半を注ぎ込んだ対 統一党(ユニファイラー) 戦が始まろうとしていた。