軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09-38 それぞれの対処

4月22日夕刻。

城塞都市テトラダには、騎士団が集結しつつあった。

クライン王国第2騎士団と第4騎士団、それに救護騎士隊、第2魔法騎士隊。

いずれも、テトラダでの第3騎士団ほどではないが、訳がわからないままに戦闘を強制終了させられたのである。

周囲に城塞都市がないので、自然とテトラダに集結した形になっている。

「現在、フランツ王国軍は国境付近まで撤退した模様」

斥候からの報告では、フランツ王国軍の様子も自分たちと大差なく、武器・防具を失ったままであるらしい。

「ふむ、そうか」

第2騎士団団長のベルナルド・ネフラ・フォスター子爵は肯いた。彼が今、混成軍の指揮を執っている。

「とにもかくにも武器防具が無くては戦にもならん。撤退にせよ進軍にせよ王都からの返事待ちだな」

「はい。それと、あの捕虜達を尋問した結果、 統一党(ユニファイラー) が今回の黒幕だったことがはっきりしてます」

それに答えたのはニクラス・ファールハイト。

「うむ、それは聞いた。で、王都に向けて護送しているのだったな?」

「はい」

「まあ、城壁の破損箇所を応急修理する以外に急務はない。夜を徹して作業だ。交代で兵達を休ませておけ。貴様達指揮官もだ」

「はっ、おそれいります。ファールハイト、下がります」

「ご苦労」

臨時の司令室として使っている領主の館を出たニクラスは、副官を伴うことなく、1人で救護騎士隊の駐屯所へ向かった。

そこには彼の娘、リシア・ファールハイトがいるはずだったからだ。

「これは準男爵、どこかお怪我でも?」

ニクラスが近づくと、若い警備の騎士が駆け寄ってきて尋ねた。救護騎士隊自体はあまり戦闘に長けていないので、護衛の騎士達が付いているのである。

「いや、今は非番でな。娘に会いに来た。リシア・ファールハイトはいるかね? まだ勤務中なら帰るが」

そう告げるとその当番兵はにこりと微笑み、次いで背筋を伸ばし気を付けの姿勢を取った。

「ああ、リシア殿の父上様ですか! 自分はパスコー・ラッシュと申します。ラッシュ家の3男です。リシア殿には先日、大怪我を治していただき感謝しております!」

そう言って深くお辞儀をする。

「リシア殿は今頃は休憩に入っていると思いますのでどうぞお通り下さい。奥から3番目の天幕です」

「わかった、ありがとう」

ニクラスはそう礼を言い、娘リシアがいる天幕へと向かった。

* * *

夜のとばりが降りようとしているエゲレア王国首都アスントの王城の1室では、王と第3王子が話をしていた。

「ではアーネストよ、お前は、助けに来てくれたあの謎のゴーレムは、ジンが作ったものだと言うのか?」

「うん。動きに特徴があるからね。だってロッテの動きに良く似ているじゃない」

自信たっぷりにアーネスト第3王子は答える。だが王にはゴーレムの動きがどう違うかなどわかっていない。

「うーむ、私にはわからんが、お前がそう言うのならそうなのかもしれんな」

王は、難しい顔をしながらもアーネストの言葉を認めるのであった。

「しかし、そうするとジンはいったい何者なのだ? 我々が手も足も出なかったあの敵ゴーレムをあっさりと倒してしまうゴーレムを作れる……あのレーコという 自動人形(オートマタ) は 古代遺物(アーティファクト) らしいから納得もできたが、今回はな……」

「考えても無駄だよ。ジンは僕の友人で、この国の 名誉魔法工作士(オノラリ・マギクラフトマン) 。それでいいじゃない」

「うむう、それはそうなのだが、おそらく宰相は納得せぬぞ」

いみじくも王子が言ったことがほぼ正解であるのだが、何事も裏を読みたがるのが政治に携わる者の悪い癖である。

「まあいい。これから宰相と話がある。お前はキャサリンに付いていてやってくれ」

「うん、母上も心細いだろうからね」

アーネストは肯いて部屋を出ていった。入れ替わりに宰相、ボイド・ノルス・ガルエリ侯爵が入ってくる。

「アーネスト殿下はどちらへ?」

「あれにはキャサリンの所に行ってもらった。あの騒ぎ以来伏せっておるからな」

宰相は訳知り顔で肯く。

「ははあ、殿下におかれましては、キャサリン王妃殿下に懐かれてらっしゃいますからな」

「うむ。キャサリンも、妾腹のあれを可愛がってくれておる。父親であり夫である私としてもほっとしておるよ」

「で、しょうな。……さて陛下、早速ですが」

宰相は抱えてきた書類をテーブルの上に広げた。

「わかっておる。 統一党(ユニファイラー) の傀儡、と言われた奴らの件であろう?」

「はい。残念ながら、あの情報は真実でした」

* * *

『戦闘は止んでいるようですね』

ラプターが送ってくる映像を確認した老君は、同じく映像を見ていたアンに向かって言った。

「ええ、老君。ごしゅじんさまの目論見が当たりましたね」

『そうですね。戦場を調査していた 第5列(クインタ) からの報告では、今回の戦死者は119名。我々が介入する以前のものです』

「それでもごしゅじんさまは気に病まれるかも知れません」

『はい、十分に考えられます。ですから、ご下問があるまで、こちらからこれについての報告はしないということにしましょう』

「わかりました」

そして次の話題は 統一党(ユニファイラー) の事。

『 第5列(クインタ) からの情報ですが、 統一党(ユニファイラー) の本拠地らしき場所がわかりました』

「どこなのですか?」

『セルロア王国にあるアスール湖の西岸、カシムノーレ鉱山の上にある古い遺跡です。捕獲した敵魔導士からも同じ情報が得られていますから間違いないでしょう』

老君は、作業用端末の『老子』に付近の地図を広げさせた。

「ええと、ああ、わかりました。そのあたりでしたら旧ディナール王国の基地があってもおかしくないですからね。それを上手く改造したのではないでしょうか」

アンは魔導大戦初期の記憶がある。老君もデータとして同じものを持っているが、思考に直結している分、同じ情報でもアンの方が上手に使えているようだ。

『今、10体の 第5列(クインタ) を向かわせている所です』

これで 統一党(ユニファイラー) の本拠地であるとわかれば、一気に小群国間の対立を収束させられるかもしれない。

「ええ、手足をちまちま攻撃するより、頭を潰すのが一番手っ取り早いですからね」

『その通りです。そして最後になりましたが、ラインハルト様は何事も無く補給基地でお過ごしになっているようです』

「そうですか。それでしたら私に提案があるのですが」

アンからの提案ということで、老君は興味深く思った。

『何ですか?』

「ええ、この機会に、ラインハルトさんを通じて、兵士、できれば騎士級の方の戦闘パターンを入手できないかと思いまして」

その提案を老君は検討してみた。

『それはいいですね。我々には剣技、格闘技の動作見本がほとんどありませんから。確かラインハルト様は 知識転写(トランスインフォ) レベル2まで使える適性があった筈ですし」

そこで老君は、手空きの 第5列(クインタ) を呼び、ラインハルトの元へ向かわせることにした。上手くいけば、蓬莱島の戦力強化に繋がる。

そして、ラインハルトはそれを快諾するのである。

* * *

ドナルドはゴーレム457号とエレナと共に、アスタンを離れた後、1日がかりで最寄りの秘密基地に辿り着き、密かに隠してあった『熱飛球』に乗り、本部を目指していた。

隠身(ハイド) の魔法が掛けられており、気付く者は滅多にいない。まして今は夜である。

そのエレナは内蔵された 魔素通信機(マナカム) に似た装置で 統一党(ユニファイラー) 本部と通信していた。

それが終わると、無言で考え込むエレナ。

「エレナ、いったいどうしたんだ?」

いつもと違うエレナを見て、ドナルドが不思議がる。

「あのラインハルトのことを考えているのか? 確かにあいつは優秀だったが、私には敵うはずもない。それに……」

「うるさいわね、少し黙っていて」

「わ、わかった」

エレナが考えていたのは 隠密機動部隊(SP) のセージとコスモスの事だった。

駄作と決めつけたが、その実、強敵であると認めていたのである。

そして今耳にしたジンとかいうゴーレム使いの事。

考えることは多かった。

「数、ね」

以前、集団の強さの前に後退を余儀なくされた記憶を呼び起こすエレナ。

「ドナルド、帰ったらゴーレム部隊を全部起動するわよ」

「わかったよ、エレナ」

熱飛球の速度は時速15キロくらい。彼等が帰投するまであと数時間。

* * *

「おー、やっぱり大勢で食べるとうめえな!」

カイナ村の村長宅前広場では、獲れたばかりの山鹿の焼き肉バーベキューと冷やした酒に皆舌鼓を打ってお祭り騒ぎ。

獲物がたくさん獲れたときはみんなで分かち合う、これがカイナ村流だった。

「これ、おいしい」

「だろー! エルザちゃん、ミーネさん、こっちも食べてみな」

作りたての燻製はまだ煙かったりして味わいが今一つなので、作り置きの燻製が振る舞われていた。

「いい味付けですね。燻製というのですか、香ばしい香りが食欲をそそります」

エルザとミーネも輪に加わって楽しげだ。

そんな雰囲気の中、礼子がそっと仁に耳打ちする。

「お父さま、老君が何か報告があるそうです」

「そうか。その後の事かな?」

仁はそっと広場を抜け出す。ポケットから 魔素通信機(マナカム) を出し、老君を呼び出した。

「老君、報告を聞かせてくれ」