作品タイトル不明
09-18 くつろぐ仁、そして
老君は活動を続けていた。
仁のサポートとして、
1.空母用の港を作る。
2.セルロア王国を初めとする政府の要人が 催眠(ヒュプノ) や 暗示(セデュース) に掛かっていないかを調査する。
3.マーメイド隊の活用法として海底資源の調査を進める。
4.ゴーレム達の武器を製作する。
5.受け入れ無し 転移門(ワープゲート) の更なる改良をする。
6.タイタンを運べる航空機を開発する。
7.重作業用として、タイタンをベースにした重作業用ゴーレムを製造する。
8. 魔力妨害機(マギジャマー) 、 麻痺銃(パラライザー) の量産。
等を当面の活動目標とした。
加えて、 転移門(ワープゲート) 室に監視員を置くことにする。今回のような事故が起こらないようにすると共に、侵入者に対処するためだ。
また、 魔素映像通信機(マナ・テレカム) で常時監視する。仁が聞いたら監視カメラか、と言うだろう。
いずれも仁は明確な指示を出してはいないが、その目的を考えれば必要な処置である。
「ごしゅじんさまがお帰りになったら驚かれますよ」
サポートのアンもにっこりと笑ってそう言った。
最後に蛇足として、ラインハルトの定時連絡を代わって受け、『 御主人様(マイロード) は他行中です』と断りを入れていた。
その日はラインハルトとしても特に変わりはなかったのでそれで済んだのである。
* * *
仁とエルザは暗い中温泉に来ていた。
昨日エルザは入浴し損なっていたから仁にこっそり相談した結果である。
明かりのないここには村人はいない。仁があまり人慣れしていないエルザに気を使ってのことだ。
光の玉(ライトボール) があるから2人とも照明に不自由はしない。
「それじゃあ、俺はこっちだから」
仁がそう言うと、幼い声がそれに続く。
「じゃああたしはおねーちゃんといっしょにはいるね!」
そう、ハンナも付いてきていた。
「うん、ハンナちゃん、一緒に入ろう」
エルザもハンナにはもうすっかり打ち解けたようである。
仁は久しぶりにカイナ村の温泉に浸かった。正に貸し切り状態である。
「あー、昨日はなんだかんだで入り損なったからなあ」
仁はいざとなれば工学魔法の 消臭(デオドラント) 、 浄化(クリーンアップ) 等を使えるが、やはり温泉は格別である。
「エルザおねーちゃんってきれい」
一方女湯ではハンナとエルザが仲良くお湯に浸かっていた。
「ハンナちゃんもきっと綺麗になれる」
「そうかな? ジンおにーちゃんのおよめさんになれる?」
そう聞かれたものだから、さすがにエルザとしても返答に詰まった。
「う、うん。ジン兄はハンナちゃん大事にしてるから」
と答えるのがやっとだった。
* * *
今回礼子は珍しく温泉の外で待機していた。仁が一人になりたがったからというのもあるが、この機に老君とやり取りをしておくという理由もあった。
「老君、そちらはどうですか?」
『ええ、順調です。やるべき事はたくさんありますが、全ては 御主人様(マイロード) のおためですから』
「そうですね、お父さまのため、私たちはただ尽くすのみです」
『ところで、 御主人様(マイロード) に一度、短時間で結構ですのでお帰り願いたいのですが』
「それは、お父さまにしか出来ない工程のため、ですね?」
『そうです。重作業用ゴーレムの 制御核(コントロールコア) をお作りいただきたいのです』
「わかりました。後ほどお父さまにお願いしておきます」
『よろしく。あともう1点報告があります。ギガースの 魔力核(コア) がまた1つ見つかりました』
「これであと2つ、でしたね?」
『はい。しかし遺跡調査はあまり進展がありません』
「それは仕方ないでしょう。手を増やす必要は?」
『今のところは 第5列(クインタ) の手は足りています』
「わかりました」
* * *
「おーいエルザ、ハンナ、そろそろ上がるぞー」
「はーい、おにーちゃん」
昭和のカップルみたいなやり取りを男湯と女湯間で交わし、仁は温泉を出た。
火照った身体に春の夜気が心地よい。じきにエルザとハンナも上がってきた。
2人とも髪が濡れていて、頬はほんのりと桜色に上気しており、そこはかとなく色気がある(まあハンナの場合は色気とは言えない)。
夜道は仁が灯した 光の玉(ライトボール) で道を照らしながら歩く。ハンナはエルザと仁に手を繋いで貰い上機嫌である。
礼子はそんな3人の少し後ろから黙って付いていく。
なんとも平和な光景であった。
* * *
夜も更けて、ハンナはとっくに寝てしまった頃。
仁は礼子に簡単な報告を受けていた。
「うーん、そうか。一度帰った方がいいなあ」
しかしハンナが心配である。仁がそう言ったら礼子が提案をしてきた。
「お父さま、それでしたらいっそハンナちゃんを蓬莱島か崑崙島へご招待したらいかがですか?」
「うーん、そういう手もあるか。それならエルザのいる崑崙島へだな。礼子、その間お前がハンナの面倒を見ていてくれるか?」
仁がそう言うと礼子は肯いて、
「はい、お父さまがそうおっしゃるのなら」
と答えた。仁はほっとして、礼子に向かいその旨を指示した。
「よし、じゃあ明日、朝食を食べたら一度帰ろう。研究所経由でまずエルザを送りがてら崑崙島へ行って、ハンナもそこで過ごして貰おう」
* * *
『戦況はどうですか?』
「はい、全て我が陣営有利で進んでいます」
『ふふ、それは重畳。ところで、先日来問題になっていた 魔法工作士(マギクラフトマン) の情報はどうなりましたか?』
「はい、第6支部のマルチェロだけを生かしておいた甲斐がありまして、若干の情報が得られました」
『それは興味深いですね。で、なんと?』
「はい、幾つかの情報は本人が混乱していたためか信憑性に欠けますが、我が最強ゴーレムと互角に渡り合ったゴーレムを操る、謎のゴーレム 使役者(マスター) と呼んでいます」
『謎のゴーレム 使役者(マスター) 、ですか……』
「それが何か? 我等の同志には及ぶべくもないと存じますが」
『いえ、私はその者に興味があります。もしや、アドリアナの係累では……』
「は?」
『いいえ、なんでもないのです。『 古(いにしえ) の国』を再興するため、努めて下さい』
「はい、おおせのままに」
『アドリアナ・バルボラ・ツェツィ。この期に及んでも尚、私の前に立ちはだかるのでしょうか……』