軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08-29 蓬莱島軍、始動

仁は自分の甘さを悔やみながら、出撃の準備をしていた。

そして悩んだ末、崑崙島のエルザにもラインハルトが誘拐されたことを話した。今後の展開によっては、翌日の昼食を一緒に食べられないと思ったからだ。

その際仁に連絡が取れないと余計心配しそうなので、今のうちに現状を説明することにした仁である。

「 統一党(ユニファイラー) ……ライ兄まで……」

沈んだエルザの声。

「ジン兄、ライ兄を助けて」

「ああ、任せておけ。じゃあ行ってくる」

通話を切り、仁は出撃準備を続けていった。

垂直離着陸機(VTOL) 、ファルコン1から3が出撃可能なのでそれも参加させる。操縦は 空軍(エアフォース) ゴーレムのスカイ11から13が担当する。

「さてと、こうしてみると移動手段がまだ足りないな」

事が起こった際、現場へ向かう手段が不十分と感じる仁。

「超音速の航空機が必要か……いや、それよりも」

思いついたのは 転移門(ワープゲート) の暴走。受け入れ側を無くして転移した場合、どこへ出るかわからないが、もしそれをコントロールできたら。

出撃準備が整ったので、ファルコン1に乗り込み、仁は蓬莱島を離れた。

ファルコン1で同行しているのは礼子と仁付きの 隠密機動部隊(SP) 10体である。礼子はちゃんとレールガンも持ってきている。更に小型の 転移門(ワープゲート) を搭載していた。

ファルコン2にはランド41から60までの 陸軍(アーミー) ゴーレム。

そしてファルコン3には念のため、 海軍(ネイビー) ゴーレムのマリン5を乗せ、ハイドロ5を懸架していた。これは大河アスール川で使う可能性を考慮したアンの献策である。

ファルコン3機は夜の空を最高速度で飛んでいた。おおよそ時速600キロ。この大きさの機体としては驚異的な速度である。

「空母が出来たら西海上へも派遣しておいて、そこまでは 転移門(ワープゲート) で飛ぶと早そうだな」

移動中、ラインハルトのことが気がかりだがどうしようもないので仁は今自分たちに足りない物を挙げ、その改良方法を考えていった。

「そうだ、礼子」

「はい、お父さま」

「お前にちょっとききたい。 転移門(ワープゲート) の暴走な、あれって制御出来ると思うか?」

仁を捜すために幾度となく 転移門(ワープゲート) の暴走で世界中に飛んだ礼子。仁は礼子の体験にヒントを得ようとしていたのである。

「はい、暴走ですが、指向性は無かったですね。飛ばされる先の規則性も感じられませんでした」

「そうか……」

少々がっかりする仁。

「でも、一つだけ気になる現象が」

「それは何だ?」

「はい、 転移門(ワープゲート) が消費した魔力と、転移先と研究所間の距離には関連がありそうです」

礼子の受けた感じでは、魔力消費が多いほど遠くへ飛ばされたようだ、というのである。

「測定できたわけではありませんが、現在測量で判明しているポイント、つまりカイナ村北方の山、ブルーランド郊外の森、ポトロックですね。ほとんど距離が同じです」

これは朗報である。魔力消費で距離がコントロールできるのなら、後は方向だ。

転移門(ワープゲート) は2点間の空間を繋げる魔導具である。

転移の際、受け入れ側は単なる目印程度で、送り出し側がほぼ全てと言っていい。そこまでは仁も理解している。

「ということは、受け入れ側を装置無しで指定する事が出来れば……」

ダリまでの1時間と少しの間、仁はその考えに没頭していた。

「お父さま、間もなくダリ上空です」

「お、そうか」

思索を打ち切り、現実に戻る仁。こちらも夜。仁の目には何も見えない。

「ファルコン1、ステルス解除。礼子、下を見てくれ。何か気になる物はないか?」

礼子の視力で不審物を探して貰おうと指示する仁。自分も強化服とヘルメットを付ける。

「今のところ特にありません」

だが、残念ながら見つからなかった。

「くそっ、やはり遅かったか」

仁はラインハルトを捜す手段を考える。

ラインハルトの魔力パターンがわかれば、蓬莱島の探知機で探せるのだが、今のところそういうものは手元にない。

「貰ったギルドカードケースにも魔力は残っていないしなあ」

そこでふと思いつき、ダリにいるはずの 隠密機動部隊(SP) 、セージとコスモスに連絡を取った。

「はい、チーフ。こちらセージです」

「よし、いいか、ラインハルトを探知するために、何かラインハルトの魔力が残っている物って無いか?」

そう尋ねるとすぐに返答があった。

「はい、破壊された 黒騎士(シュバルツリッター) が」

「何!?」

仁は驚いた。報告によれば、四肢をもぎ取られて転がっているという。

「 黒騎士(シュバルツリッター) をそこまで破壊できる相手か」

今までの敵ゴーレムに比べ、段違いのパワーである。

「まあいい。それじゃあ 黒騎士(シュバルツリッター) をこっちに運べるか?」

「はい。2体でステルスフィールドを重複させて運べば大丈夫だと思います」

「よし、それじゃあ急いでくれ。合流地点は……」

セージ、コスモスと合流するのはダリから北へ10キロほどアスール川沿いに遡った場所。もちろん着陸時はステルス作動である。

このあたりはセルロア王国の城壁が川向こうに見える地点であるのに集落は無い。どういう防衛思想なのかきいてみたいものだ、と仁は思った。

ファルコン1が着陸して10分も経たないうちにセージとコスモスがやって来た。さすがの早さだ。

「ご苦労、セージ、コスモス」

「チーフ、ラインハルト様をお守りできず申し訳ございません」

到着するや否や謝る2体に仁は気にするな、と言い渡す。

「それよりこっちだ。 黒騎士(シュバルツリッター) 、こいつはひどいな……」

四肢を無理矢理引きちぎられたため、魔力漏れを起こし、動作停止している。

「だが、 制御核(コントロールコア) は関係ないからな」

そう呟きながら 黒騎士(シュバルツリッター) の胸部から 制御核(コントロールコア) を取り出す仁。

「よし、これなら十分ラインハルトの魔力パターンはわかるな。セージ、ファルコン1の 転移門(ワープゲート) で蓬莱島に跳び、この 制御核(コントロールコア) を老子に渡せ。そしてラインハルトの居場所を捜させろ。時間から言っておそらくダリからそうは離れていないはずだ」

「了解しました」

セージはその 制御核(コントロールコア) を持ち、 転移門(ワープゲート) をくぐって蓬莱島へ跳んだ。

仁は老子からの連絡を待つだけである。待ちながらまた考える。

「魔力探知機をファルコンやラプターにも搭載すべきだな」

そして思い至る。

「そう、か。位置算出の精度を上げるなら蓬莱島だけでなく、崑崙島やこれから完成する空母にも搭載しておくべきだよな」

測定器2点間の距離が離れるほど、また測定器と対象の距離が近いほど精度は上がる。空中停止できるファルコンに搭載するのは有効だろう。

そんなことを考えていると老子から連絡が入った。

「早いな。で、わかったか?」

「はい、 御主人様(マイロード) 。ラインハルト殿の魔力が大きかったので特定が楽でした」

加えて老子が慣れてきたというのもあるのだろう。

「で、場所は?」

「はい。今 御主人様(マイロード) がいらっしゃる場所からほぼ北へ10キロ、川のすぐそばです」

「わかった。ご苦労だった」

連絡が切れるとほぼ同時にセージが戻ってきた。手には簡単な地図を持っている。

「チーフ、老子から略地図も貰ってきました」

「セージ、ご苦労だった。よし、ファルコン2、3も降下!」

ステルス状態で2機が下りてきた。ジェットエンジンと違い、 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) は騒音が出ない。多少砂埃は上がるが、そのあたりは砂利が多いので何とか誤魔化せる。

気が付かれたとしても着陸は短時間なので見回りに来た頃にはもう飛び立っているだろう。

「ランド41から60は陸地から。セージとコスモスも同行しろ。ハイドロ5を下ろせ。俺と礼子、それにマリン5は船で向かう。ファルコン1から3は上空で援護だ」

「了解しました」

陸海空からの包囲作戦である。準備は3分で完了。仁と礼子はハイドロ5に乗り込み、ファルコン1から3は上空へと飛び立った。

「よし、出撃!」

仁の号令でランド達は走り出した。敵拠点近くに行ったなら接近はステルス装備のセージとコスモスに任せ、包囲網を敷くことになる。

仁はマリン5の操縦するハイドロ5でアスール川を遡っていった。もう見られても気にするつもりはない。

「 統一党(ユニファイラー) め、今度こそ後悔させてやる」

第8支部支部長と自称したパーセルは大した情報を持っていなかった。本当に下っ端だったらしい。金で 統一党(ユニファイラー) 内に地位を築いた小物。

そんな新参の成り上がりに重要な機密を知らせるほど馬鹿ではなかったということである。

仁は今度こそ重要な情報を吸い上げてやる、と息巻いていた。

ハイドロ5は川面を時速50キロ、27ノットほどで進んでいった。

そして 陸軍(アーミー) ゴーレム達もほぼ同じ速度で疾駆。

10キロの距離は10分と少しで踏破され、目指す敵拠点は目の前である。

それはセルロア王国が放棄した監視砦であった。