軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07-17 誕生日

ルコールが気が付くのを待つ間、仁は礼子に向き直り、

「礼子、お前アンの言おうとすることわかるのか?」

と尋ねる。先ほど、発声装置に不具合のあるアンに代わり、説明を引き受けたからだ。

「はい、お父さま。この子、私の従妹のようなものですから魔力同期しての代理発言が可能です」

「従妹?」

その表現が今一つよくわからない仁。

「はい。この子と私は基本設計が同じです。おそらくお母さまと同じ系統の設計基盤を使っているのだと思います。発声のための魔力波動を、こうして触れているだけで感じられますから」

周波数が近いと、ラジオに無線の声が飛び込んでくるようなものと言えばいいか。とにかく礼子にはアンの代わりに話すことが可能なのである。そのせいか、特にアンに嫉妬しないので仁はほっと胸を撫で下ろしていたりもする。

「ふうん、なるほどな」

仁は納得しているが、そばにいるラインハルトは疑問符を頭に浮かべた状態だ。

「ジン、どういう意味だい? 僕にもわかるように説明してくれ」

そのラインハルトに仁は謝る。

「ああ、済まない、ラインハルト。おそらくだが、このアン、礼子と同じ人物の設計なんだ。もちろん細部は変わっているが、基本は同じ。だから礼子が従妹、という表現をしたんだよ」

「うーむ、そうするとレーコちゃ……嬢は、そんな昔の設計なのかい?」

仁はラインハルトに礼子の事を何と話したか思い出そうとしてみる、が、思い出せなかった。ビーナには仁が見つけた『 古代遺物(アーティファクト) 』とか説明した気はするが、ラインハルトにはなんとなく有耶無耶にした気がする。

「ああ。元々礼子は 古代遺物(アーティファクト) 級の 自動人形(オートマタ) だったんだが、俺が見つけた時はかなり傷んでいてな。それで、設計はそのままに、新しい材料を使って組み直したのが今の礼子なんだ」

そう説明するとラインハルトは合点がいったらしく、何度も大きく肯く仕草をし、

「そうか、それでよくわかったよ。レーコちゃ……嬢が高性能なのも納得できるというものだ」

「ラインハルト、礼子の事なら今更『嬢』付けなくてもいいぞ。なあ、礼子」

「……はい」

若干の間があったものの、仁の言いつけでもあるし、特にラインハルトに悪感情を持っているわけでもない礼子はそれを承知した。

「そうか、ありがとう、レーコちゃん」

「……いえ」

「アン、あとで整備をしてやるからな」

「は・いあり・がとうご・ざい・ます」

そうこうしていると、気絶していたルコールが身じろぎをした。それに真っ先に気が付いたのはラインハルト。

「おい、気が付いたか?」

軽くぴしゃぴしゃと頬を叩いてみると、ようやく目を開けるルコール。

「うう……どこだ、ここは?」

「ここは遺跡の中だよ」

「遺跡?」

どうやら記憶が一部吹き飛んでいるらしかったので、代表してラインハルトがこれまでの経緯を説明する。

「ふむ、そんなことが……確かに、うっすらと憶えている……気がする。ところで、これ解いてはくれんかね?」

ローブの袖で縛られた自分の姿を見まわしてルコールが言った。

どうやら正気に戻ったようなので、用心しながらも縛った服を解いてやる。

「ふう、楽になった。ところで、ここは遺跡の中なのかね?」

「そうですよ」

「ふむう、いくら探してもわからなかった遺跡の秘密が、今日来たばかりの君達に発見されてしまうとは……私ももう引退だな……」

催眠(ヒュプノ) に掛かっていた時とは人が変わったようにおとなしいルコール、これが本来の性格なのだろう。

「さて、これからどうする?」

ラインハルトが仕切り直した。遺跡の調査も一通り終わりであるし、もう真夜中過ぎである。

「何だか疲れた。私は自分の小屋に帰るよ」

ルコールは遺跡の傍に小屋を建てて住んでいるとのことだった。仁達も一旦馬車に戻って朝まで仮眠を取り、明るくなったらあらためてルコールの小屋を訪問することにした。

「エルザ、まだ寝ていればいいんだが」

とはラインハルトの言。もし目を覚まして、2人がいない事を知ったらむくれそうだ、と仁も同感。

それで急ぎ足で馬車に戻る。

結果。

「ラインハルト様、エルザ様はよくお休みです」

ほっとする2人。寝ているエルザを起こさないよう、そっと馬車に乗り込み、シートをリクライニングさせると、仮眠を取る2人であった。

礼子とアンは馬車の外。礼子は警戒を怠らず、アンも本調子でない身体で歩哨を勤めていた。

* * *

翌朝。

「私をおいてけぼりにして2人で遺跡に行くなんて。2人ともひどい」

案の定、目を覚ましたエルザが、外にいるアンを見つけ、どこから来たのか説明する羽目になってしまった。

「ごめん、エルザ。気持ちよさそうに眠っていたし、起こすの可哀想だったからさ」

「うそつき」

「危険だったかもしれないし、そんな所へ連れていきたくなかったんだよ。わかってくれ、エルザ」

「しらない」

むくれてしまったエルザにはとりつく島もない。

仕方なく、まずは朝食の準備を整えることにする。

仁作のコンロでお湯を沸かし、スープを作る。パンを切ってスープに浸せば、簡単な朝食となる。

まさかここまで何も無い村だと思わなかったため、貧相だが仕方ない。

「まあ、たまにはいいよな」

ラインハルトがそう言いながらちらちらとエルザの方を伺うが、機嫌は直っていないようだ。

そんな空気を察した礼子がある意味爆弾発言をする。

「お父さま、今日がお誕生日でしたよね?」

「え?」

「ほう?」

「そ、そうだったっけ?」

台詞は順にエルザ、ラインハルト、そして仁だ。

「はい。お父さまの誕生日は今日、4月1日で間違いないです」

礼子に転写されていた仁の情報には誕生日についても入っていた。

偶然だが、仁がこの世界に召喚されたのも同じ4月1日。2つの意味で仁の誕生日である。

「あー、俺も21歳か」

同時にこの世界に来て丸1年経ったことになる。

「そ、そうか。ジン、今日、ヤダ村に帰ったらお祝いしよう」

ラインハルトが慌て気味にそう言ってくる。

「い、いいよ、もう21だし」

だが仁はあまり嬉しそうではない。

「そんなことない。ジン君が生まれた事を記念する日。それはとっても大事な日」

とはエルザである。

むくれていた筈のエルザであるが、今日が仁の誕生日と聞いて、そんなことは忘れてしまったようであった。

「そ、そうかな」

そもそも孤児院出の仁が誕生日祝いをしてもらえたのは小学校低学年まで。それ以降は祝ってやる側だった。

であるから、祝ってもらうことに慣れていない仁はひたすら照れを隠していた。

とりあえず、ルコールの小屋を訪ね、話をしてからヤダ村へ戻ろうと、今度はエルザも一緒に向かう。

途中で、なにやら大きな音が響き、物が壊れる音がした後、また静かになった。

「何だったんだ、今の?」

「わからない。礼子、警戒を怠るな」

一応仁は礼子に指示を出し、周囲を警戒しつつルコールの小屋へ向かって行った。

そのルコールの小屋は遺跡から崖に沿って50メートルほど離れた窪地にあった。

だが。

「どういう事だ?」

小屋はまるで巨大な足で踏みつけられたように潰れていた。

ルコールの姿は無い。小屋と一緒に潰されたか、それとも逃げ出したのか。血の臭いはしないので、上手く逃げ出したと思いたい。

「とにかく、こうしていても仕方ないか」

「そうだな、一旦馬車へ戻るとしよう」

すっきりしないまま、仁達は馬車に戻り、その話をアンや執事のクロードにも話し、意見を聞いてみた。

するとアンからとんでもない発言が。

「まさ・か・ギガース・をき・どうしたわ・けではな・いで・しょうね」