軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07-10 エーテルの謎

食事を済ませた後、午後はそれぞれ思い思いに行動することとなった。

なんとなく鉱山方面へ向かった仁だったが、人のいない場所で礼子が 消身(ステルス) を解いて姿を現した。そして、

「お父さま、蓬莱島で何かあったようです」

そんなことを仁に告げたのである。

「何かって、『老子』にも処理できないような事か?」

「いえ、どちらかというと報告したい重要な発見のようです」

「そう、か。よし、一度帰ってみよう」

そう言って仁は自らも 消身(ステルス) を使い、礼子と二人、姿を隠したまま馬車へ戻る。仁は外が見えないので礼子に手を引いて貰いながら。

人が見ていないことを確認、そっと馬車に乗り込み、隠してある 転移門(ワープゲート) を起動、蓬莱島へと跳んだ。

* * *

「お帰りなさいませ、 御主人様(マイロード) 」

蓬莱島の 転移門(ワープゲート) を出ると、老子の声が出迎えた。

「ああ、ただいま。何か報告があるんだって?」

仁は『老子』本体のある部屋へ出向き、備え付けの椅子に腰を下ろした。礼子も傍に控える。

「はい、 御主人様(マイロード) 。実は、『アルバトロス』部隊のことなのです」

アルバトロスは仁が作製した『 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) 』で飛ぶ飛行機である。

「現在も空からの測量による地形図作成は続けておりますがその過程で思わぬ事がわかりました」

「思わぬ事?」

「はい。まずはこれをごらん下さい」

『老子』の指示で仁の目の前に、作製途中の地図が広げられた。担当は陸軍ゴーレムのランド1である。

「良く出来ているな」

「ありがとうございます。細かな部分はこれからですが、おおよその地形の把握は出来ると思います」

「うん。だが、なんで南半球があまりないんだ?」

地形図には北半球は詳しく描かれていたが、南半球は僅かしか描かれていなかったのである。

「それが今回報告するポイントなのです」

そして『老子』は報告を始めた。

「最初のうちは順調に測定が進んでいました。ですが、南方へ向かった『アルバトロス』が異常を訴えてきたのです。同時に搭乗しているスカイゴーレムも」

「異常?」

「はい。 魔素変換器(エーテルコンバーター) 作動効率の低下です。ですが、戻ってきた『アルバトロス』を調べても異常は発見できませんでした」

それを聞いた仁は、一つの仮説が頭に浮かんだが、情報不足のため即断は控え、『老子』に先を続けさせた。

「そして北方へ向かった『アルバトロス』は逆に 魔素変換器(エーテルコンバーター) の効率が異常に良くなったと言うことです。搭乗しているスカイゴーレムもこれまた同様に効率が上がったと報告しています」

それを聞いた仁は仮説が間違っていないという気になった。

『老子』は、以上のことから、空気中の 自由魔力素(エーテル) 濃度が、北へ行くほど濃く、南へ行くほど低下すると思われる、と結論を述べた。それは仁の仮説と一致する。

「お父さま」

その時、今まで黙っていた礼子が口を開いた。

「お母さまの時代、北は魔物の土地、南は人間の土地、と棲み分けられていたそうです。何か関係があるのでしょうか?」

それを聞いた『老子』は、

「礼子さん、良い情報ありがとう。 御主人様(マイロード) 、今の情報から見ても、 自由魔力素(エーテル) 濃度が北へ行くほど濃厚になるということは間違いないと思われます」

と結論付けた。仁も同感である。礼子も、

「それに、以前お父さまを捜しにあちらこちらへ転移した際、異常に 魔素変換器(エーテルコンバーター) の効率が上がった土地がありました。もしかしたら北方だったのかもしれません」

と説明する。仁もそれに肯き、結論を口にする。

「うん、それだけの事実があれば、理由はともかく、それに間違いは無さそうだ。となると、北へ行くのはともかく、南へ行ける飛行機の開発が急務だな」

ということで仁は『老子』と協力して新型機の設計に取りかかった。

「 魔素変換器(エーテルコンバーター) は3基搭載しよう。そして 自由魔力素(エーテル) が無くても飛べるように、大型の 魔力貯蔵庫(マナタンク) も搭載する」

機械式の飛行機と違って、 魔素変換器(エーテルコンバーター) も 魔力貯蔵庫(マナタンク) も、大きさはさほどでもないから、追加した所で機体が大きくなることはない。

「 御主人様(マイロード) 、 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) の追加も推奨致します」

『老子』がエンジンを増やす方がいいのでは、と提案してきた。仁はその意見を採用する事に決め、

「よし、両翼に1基ずつ増やそう。計3基のエンジンを搭載すればより長距離飛行も可能だろう」

エンジンの数と飛行距離は単純に比例するわけではないが、飛行速度や飛行高度を上げやすくなるという点からは有効だろう。元々仁はそれほど航空力学に通じているわけではない。模型飛行機を作った経験があるだけだ。違っていたら作り直すだけだ、と思っている。

こうしていくつかの機体を建造することに決まった。

まずは長距離偵察用の機体。 魔素変換器(エーテルコンバーター) を3基、 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) も3基搭載。大きな 魔力貯蔵庫(マナタンク) を持ち、理論上、この世界のある惑星を楽に1周出来る。

次が輸送用の機体。長距離偵察用に準ずるが、飛行距離より搭載重量を増やすため、主翼面積や胴体容積を増やした機体である。

最後が隠密機動用の機体。『アルバトロス』ベースだが、 消身(ステルス) 機能を備え、攻撃力を強化し、かつ高速移動できる機体だ。ステルス戦闘機といっても過言ではない。

それぞれの名前は偵察用が『スカイラーク』、輸送用が『ペリカン』、隠密用が『ラプター』。

スカイラークはヒバリ、ラプターは猛禽。仁が地球にいた時聞いた名前からの命名である。どちらかというとアルバトロスの方がスカイラークより長距離偵察機向きの名前のような気がするが、仁の命名だから気にしてはいけない。

* * *

一通りの設計が終わった時点で、あらためて仁は地図を眺めていた。

これまでの測量で、この星の大きさは大体掴めている。

「しかし、思ったより小さかったな」

『老子』が算出したこの惑星の直径は約2400キロメートル。地球の直径が約12700キロメートルあるのに比べてかなり小さい。

「やはり重い元素……多分魔元素が詰まっているんだろうな」

仁はこの星の構造にも興味を持ったが、それは後回し、と思考を切り替える。

「『老子』、この世界にも不穏な空気があるようだ、警戒を怠るな」

と、念を押す。

「はい、『隷属書き換え魔法』や 統一党(ユニファイラー) の事ですね。礼子さんからも報告が来ています」

「うん、そうだ。ここのことがわかったら絶対に狙われる。気をつけてくれよ」

「了解です、 御主人様(マイロード) 。そうしますと、カイナ村も要警戒ですね」

「そうだな」

仁にとって特別な村の名前。第2の故郷とも言える村である。

仁は、エゲレア王国で 名誉魔法工作士(オノラリ・マギクラフトマン) の称号を受けた今なら、クライン王国へ、そしてその一地方にあるカイナ村へ堂々と行くことが出来るかもしれないと少し期待を膨らませた。それはもう少し先になりそうであるが。

それから仁は、島の開発状況についての細かい報告を聞いたり、崑崙島の状況を聞いたりして過ごした。

一言でいって非常に順調である、ということだ。

最後にエルラドライトの採掘について尋ねてみたが、残念ながら蓬莱島にも崑崙島にも鉱脈は見つからないとのことであった。

「まあ仕方ないか。調査は続けていてくれ」

「はい、 御主人様(マイロード) 」

そして仁は再び 転移門(ワープゲート) をくぐり、ヤダ村へと戻ったのである。

* * *

ヤダ村は時差の関係でまだ明るかった。

馬車から出た仁は、ついでに傷んだ所がないかなどのチェックをしてみるが、どこにも異常は無い。

「あ、ジン君」

そこへ声がかかった。振り向いてみればエルザ。

「何、やってるの?」

「うん、馬車の点検をね。明日、これで遺跡のある村へ行くだろう? だからさ」

そう答えればエルザは納得がいったという顔をする。

「ジン君はえらい。これだけの物を作っておいて、まだ慎重になっている」

「はは、おだてても何も出ないぞ」

エルザの褒め言葉にそう返した仁は、

「よし、異常なし」

ぱんぱんと手を叩いてそう言った。

「明日、天気になるといいな」

「ん」

エルザと並んで歩きながら空を見上げる仁。

赤く染まった夕焼け雲が明日の好天を告げているようだった。