軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-31 アプローチ

「それでは、礼子の事は詮索しないでいただけますか」

仁の頼み事が決まった。

「ふむ、レーコというのはゴーレムを瞬く間に撃退してくれたゴーレム、いや 自動人形(オートマタ) の少女のことだな。…………よかろう、非常に、非常に残念だが、その願い聞き届けよう」

それを聞いて仁はほっとした。

王は傍に控えていた側近の一人に何か言付けをし、

「宰相達閣僚にも徹底するよう伝えておこう。それだけでは我々の気がすまん。後に何か贈らせてもらおう」

「ありがとうございます」

そして仁は、今一番の懸念事項をも口にする。

「ところで、今回の犯人または犯ゴーレムは見つかったのですか?」

その問いに答えたのは近衛騎士隊隊長のケリー。

「君の心配はもっともだ。今、魔導騎士達が全力で探している。それと、報告によると、先ほど暴走ゴーレム最後の1体が鎮められたそうだ」

「そうですか」

近衛騎士隊としては、客人の客人に当たる仁にこれだけ活躍されてしまった今、締めくくりくらいは自分たちの手で行いたかったということもある。

「陛下、殿下、最早危険は去ったと思われます。どうぞお部屋でおくつろぎ下さい」

近衛騎士隊隊長ケリーの報告に胸を撫で下ろした王は、

「アーネスト、それでは休むとするか。……内務卿、あとはよろしく頼む」

そう言い残し、王と王子は護衛に守られながら自室へと引き上げたのである。

「いらしていただいた皆様にはこのような結末となり、お詫びのしようもございませぬ」

後を任された内務卿は残っていた貴族や招待客1人1人に頭を下げていった。

「ここは散らかっております、迎賓館は無事のようですから、そちらへ移動致しましょう」

そう言って自ら先導を務め、迎賓館へと向かった。

途中、内宮と外宮を仕切る厚い鉄の扉が歪んでいるのを見た面々は、ここまでゴーレムが暴れたのかと思い肝を冷やした者が大半だったが、何人かはそれが誰の仕業か見当が付き、別の意味で脅威を覚えたらしい。

迎賓館の広間に集まったのは王都以外から来た貴族達と招待客。そこであらためて内務卿は頭を下げた。

「謝って済む問題ではありませんが、それでも王国を代表して謝らせていただきたいと思います」

そう前置きをして、

「まもなくこちらに夕餉の仕度がなされますので、どうぞゆっくりとお楽しみ下さい」

上座下座などの整備は間に合わなかったので、非常時ということで無礼講に近い夕食会となったのである。

参加者達の中には今回の事件に対して不満を持つ者もいたにはいたが、とにかく皆精神的に疲れていたのでそう言った事は明日にしよう、といった空気が流れていた。

内務卿としては入浴してもらう事も考えたが、昼食の途中で襲われたことやもう夕暮れだったことを考え、食事を優先したのである。

ただ、急な仕度のためテーブルや椅子が足りず、またもや立食形式だ。大怪我をしたものは医務室へ送られたので、エルザやビーナはガラナ伯爵と顔を合わせずに済んでほっとしている。

「あー、そういえば腹減ったな」

「あたしも。遅いお昼食べ始めたと思ったらあの騒ぎですものね」

仁の傍にはビーナがくっついていた。クズマ伯爵はそれをやや遠くからじっと眺めている。

その視線を感じて仁は、

「ビーナ、伯爵の気持ち、どう受け取ったんだ?」

と聞いてみる。聞かれたビーナは危うく口の中のものを噴き出しそうになったが、

「や、やめてよ! あたし、まだよくわからないわよ!」

ようやくそれだけ答える。

そこにエルザもやってきた。手に持った皿にはシトランが山盛りになっている。

「ジン君、あらためて……ありがとう」

それ以上身体を曲げると皿からシトランがこぼれ落ちそうだということもあって会釈をした。

「いいさ、気にするなよ。でも無事でよかった」

「ん。あのときは本当に怖かった」

いくらバリアで防げてはいても、目の前30センチにゴーレムがひしめいていたらそりゃあ怖いに違いない。

「ジン君と……レーコちゃんには感謝」

そう言って辺りを見回し、

「そういえばレーコちゃんは?」

そう尋ねた。ジンは笑って、

「ここにいるよ。……礼子!」

「はい、お父さま」

「!!」

礼子が『 消身(ステルス) 』を解除していきなり現れたのでエルザだけでなくビーナも驚いた。何度経験してもそうそう慣れるものではない。

「ほら、峠下で賊が『 隠身(ハイド) 』使っていただろ? あれを研究してより効果的なものにしたんだ。……もういいぞ、礼子」

仁がそう言うと、礼子は再び姿を消した。

「なるほど。やっぱりジン君はすごい」

「え、『 隠身(ハイド) 』? なにそれ?」

エルザとビーナはそれぞれ違う反応を見せた。

「前、襲ってきた賊が使ってたアイテムに込められていた魔法」

エルザが説明する。それを聞いたビーナは、

「そう。……エルザはジンと旅しているんだものね、いろいろ経験とか共有しているわよね」

「……?」

急に意気消沈したように見えるビーナを訝しく思ったエルザ、

「ビーナ、おなかいたいの?」

「え? い、いいえ。大丈夫」

「そう? ならいいけど。……あ、ライ兄」

エルザの視線の先を見ると、ラインハルトがいた。そしてその隣には、金髪を腰まで伸ばした美女が。

「あれは……確か、ドミニクさん?」

その女性は確かにセルロア王国特使のドミニクであった。出るところは出、引っ込むところは引っ込んでおり、ラインハルトの好みそうなタイプである。

「でもラインハルトって浮いた話聞かないよな」

仁がそう言うとエルザは、

「浮いた話? ライ兄は、空飛べない。それとも、泳ぎの話?」

などと天然めいた発言をしたので仁が浮いた話というのは女性関係の話だ、とエルザに説明した。すると驚いたことに、

「ライ兄には国に婚約者がいる」

と言う発言が飛び出してきた。

「へ……へえ、ラインハルトにね」

エルザは、貴族の男子なら20歳過ぎればいつ結婚してもおかしくない、と説明。早ければ18くらいで結婚する人もいる、と言った。

「ふうん、なら女性は?」

そう聞くとエルザはびっくりしたような顔をしたあとすぐいつもの表情に戻って、

「女の子は早ければ13歳くらいで嫁ぐ人もいる。普通は15歳から19歳くらいが多い」

と答えた。

「そうなのか」

やはりこの世界は結婚年齢が低いんだな、と実感する仁であった。

「ジン君、いくつ? 私は16」

とエルザが仁の顔をのぞき込むようにして尋ねてきた。聞かれもしない自分の歳まで口にして。

「俺? 20だけど。あー、もうすぐ21か」

仁がそう答えると、

「えええええ?」

隣で話を聞いていたビーナが素っ頓狂な声を上げた。

「おい、場所を考えろ」

仁が注意するが当のビーナは興奮気味に、

「じじじ、ジンってば20歳だったの!? てっきりあたしと同じかせいぜい1つか2つ上だと思ってた」

「私も」

エルザにも同意され、少しだけ仁は落ち込む。

「……俺ってそんなに子供っぽいか?」

ぼそりとそう言うとビーナは慌て気味に、

「そ、そうじゃないわよ。なんていうか、その……」

「若く見える」

エルザがそう助け船を出すが、言われてもあまり嬉しくはない。

確かに、西洋人に比べて日本人は若く見えると言う話はある。

しかし、昔通っていた定時制高校の同級生に、『二堂君って、なんかおじいさんみたい』などと言われ、ショックを受けたことのある仁が、

「見かけは子供、中身はジジイかよ」

と自嘲気味に呟いたのも無理はない。

「ジン君、ってよぶの失礼?」

4つも年上だとは思わないでジン君、と呼んでいたエルザがそう聞いてきたが、仁は今更別の呼び方されるのもおかしいし、何よりエルザの方が身分が上なのだから今まで通りでいい、と言った。

「お話中失礼するわ、ジン殿、ですわよね?」

そんな時に声を掛けてきたのは、セルロア王国屈指の 魔法工作士(マギクラフトマン) で、クリスタルゴーレムの『セレス』を造ったステアリーナであった。