軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-30 後始末

「しかし王、この場はなんとか収まったようですが、まだ王城内にはゴーレムが暴れていると思います。それらを掃討しないことにはこの騒動は収まりませぬ」

そう言ったのは宰相のガルエリ。

「うむ、そなたの申すこともっともである。ならば以後の指揮はそなたと防衛相に任せよう」

「はっ」

一礼したガルエリ宰相は、折れた腕の添え木が痛々しい防衛相、ジュードルに向かい、

「ジュードル、負傷したとはいえそなたもこの国の防衛相だ。行くだろうな?」

「もちろんですとも」

そう言って立ち上がる。

近衛騎士隊隊長のケリーは、

「そこの4人、護衛に付いていけ」

と比較的軽傷な4人を護衛として付けたのである。

「 黒騎士(シュバルツリッター) 、お前も付いていけ。送り届けたら戻って来いよ」

「 はい(ヤー) 」

ラインハルトも、念のため 黒騎士(シュバルツリッター) を付けてやったのである。

「うーん、腕は、と」

仁は礼子に守られながら、『ロッテ』の部品を捜していた。

「お、あったあった」

失った右腕が見つかる。肘から先と肩から肘までの2つ。

「指はさすがに無理か」

ということで、出来るだけ良質な青銅ゴーレムの破片を探し、代用として拾ってきた。

「よし、ロッテ、そこに横になれ」

「はい、お父さま」

作業台など無いので、無事だったテーブルを並べてそこにロッテを横たわらせ、

「 停止(スタンドスティル) 」

一旦停止させる。そしてまず右腕を繋いでいく。

ロッテは鋼鉄の内骨格に 魔法筋肉(マジカルマッスル) を持つ。そして外装は青銅。

魔法筋肉(マジカルマッスル) がかなり損傷していたので、通常動作は何とか出来る程度の処置しかできない。

「へえ、ロッテってそんな構造していたんだ」

アーネスト王子が横からのぞき込みながら感心したように言う。

「殿下、ゴーレムの構造に興味ありますか?」

と仁が尋ねると、

「うん、あるよ! 僕ももう少し大きくなったら自分でゴーレム作るんだ!」

無邪気にそう答えたのである。

表面の凹みと傷は工学魔法で修復できた。

魔力貯蔵庫(マナタンク) の 魔力(マナ) がかなり減っていたので補充しておく。

これで応急処置は終わりである。指が何本か無いが、今は仕方がない。

「ジン、これってロッテの指じゃない?」

そこへ、ビーナがロッテの指らしき物を見つけて持ってきた。

「き、君は……」

「?」

そんなビーナを見たアーネスト王子は絶句、硬直した。

「殿下?」

不審に思った仁が声をかけると、いきなり王子はビーナの手を取ると、

「君! 名前は?」

「ビ、ビーナです」

何が何だかわからずに面食らいながらも名前を名乗るビーナ。王子はそんなビーナの手を取ったまま、

「ビーナか! いい名前だね! ねえビーナ、僕のお嫁さんになってくれない?」

「ええええええええ!!」

いきなりとんでもないことを言い出した。

「一目見て気に入ったんだよ! 君はロッテにそっくりだし!」

これも吊り橋効果とでも言えばいいのか、危機から守ってくれたロッテを気に入った王子は、そのモデルとなったビーナに一目惚れしたらしい。

とはいえまだやっと13歳、どこまでわかって言っているか定かではない。

「駄目です殿下!」

そこに割って入った者が一人。誰あろう、クズマ伯爵である。

「彼女、ビーナには私がプロポーズする予定なのです!」

「え……?」

「あ……」

勢いで言ってしまった伯爵の言葉をすぐそばで聞いたビーナ。

「えええええええええ!?」

真っ赤になるとそこから走って離れて行ってしまった。とはいえ広間から出ることはなく、単にエルザが怪我人の治療をしている所へ行っただけであるが。

「……」

「…………」

「………………」

残された王子と伯爵、それに仁。なんとなく気まずい空気が流れる。

「え、えーと、おっ、これはロッテの中指だな」

わざとらしく仁は声を出しながら、ビーナが見つけてきたそれを使ってロッテを修復していった。

* * *

そんな空気の広間とは異なり、王宮内では掃討戦が始まろうとしていた。

「よし、これで準備は出来た」

防衛相ジュードル秘蔵の近衛騎士ゴーレム。普段は起動してないどころか、 魔導装置(マギデバイス) は取り外し、不活性化してあったため、無事であった。

それを魔法相ケリヒドーレが点検後活性化し、起動していく。

5体の近衛騎士ゴーレムが立ち上がった。

「よし、お前達、我々に従わないゴーレムを倒すのだ、いいな?」

「イエス、サー」

5体の近衛騎士ゴーレムは左手に盾、右手に剣を持つと、防衛省地下室を後にしたのである。

「まずはこれでよし、と」

「では、次ですな」

次に、非常用のゴーレム10体を起動。これらは万能型で、城内の怪我人を集め、保護する命を与えた。

更に10体の警備ゴーレム予備を起動。城内警備に当たらせる。

そんな時、鳥の羽音が聞こえた。ジュードルが窓から外を見やると、夕暮れの空を背景に鳩らしき鳥が飛んでいくのが見えた。

「鳩、か。羨ましいことだ」

そう呟いた防衛相ジュードルは仕事へと頭を切り換え、魔法相ケリヒドーレとの話し合いを再開したのである。

さすがに隷属魔法攻撃の範囲は城中ではなく広間を中心とした区画だったと見え、王宮2階、3階のゴーレムは無事であった。

すなわち、王妃や第2王子、そして第1王子らは無事だったのだ。

「仮称、『隷属書き換え魔法』の範囲はおおよそ半径20メートルから30メートル、最も効果が高いのは半径10メートル程度と推測できるな」

ケリヒドーレは暴走したゴーレムの様子から、効果範囲を推測。今後の対策に役立てるべく、記録していった。

* * *

残ったゴーレムは30体あまりで、近衛騎士ゴーレムの前にあっさりと無力化された。

こうして、城内の暴走ゴーレムは一掃され、夜が来る頃には怪我人の治療も終わり、城内の秩序も回復したのである。

園遊会の参加者で怪我の酷い者は医務室へ送られ、軽い者は手当を受けた後それぞれに宛がわれた部屋へと戻った。

破壊されたゴーレムは使える部品すなわち 魔導装置(マギデバイス) 等を回収した後、一旦素材に戻し、再利用するとのことだ。

これには無事だった 魔法工作士(マギクラフトマン) も随時協力して欲しい、ということである。

* * *

「今回はそなた達の活躍があったからこそ被害を最小限に食い止めることが出来た、感謝する」

執務室でエゲレア国王、ハロルド・ルアン・オートクレースは仁とラインハルトにそう言って感謝の意を表した。

「特にジン、そなたには感謝してもしきれぬ。我と息子を救ってくれたのは正しくそなたが造ったゴーレム、ロッテだったのだからな」

そう言って王は、

「本来なら貴族に封じた上、 王国魔法工作士(ロイヤルマギクラフトマン) となってもらいたいところであるが、既にショウロ皇国に行くことが決まっているという。残念だが致し方ない」

『行く』事には間違いない。その意味を勝手に解釈したのはエゲレア国王である。仁は内心胸を撫で下ろすと共にラインハルトに感謝していた。

「だが、」

王の言葉はまだ続く。

「あの隷属魔法攻撃、それを防ぐ方法を是非教えてもらいたい。もちろん只でとは言わぬ。先に望みを言うが良い。可能な限りかなえよう」

そう告げる王様に、仁は何を頼もうかと考えるのであった。