軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-20 王城

エゲレア王国の首都アスントは城塞都市である。城壁は10メートルの高さに聳え、魔法で硬化、強化されており、さらに表面に彫られている 魔導式(マギフォーミュラ) により魔法耐性も有している。

内部の構成はブルーランドとは異なり、碁盤の目のように整然と区分けがなされており、どちらかというと平安京もしくは古代中国の都のよう。

南から延びる中央通り、その先に建つのが王城であった。

「すごい都市だな」

窓から外を眺めていた仁が感心したようにそう言うと、

「うむ。ここは魔導大戦後に整備された都市だからな。理にかなった建て方をしたと聞いている」

とラインハルト。

理にかなった、というのが何かと聞くと、まず区画割りを行っており、その区画毎に番地を設け、住所というものを台帳で管理しているという。

これにより住民の管理が的確に出来、人口の把握、不審者の割り出しなどにも効果があるそうだ。今の戸籍もしくは住民票の簡単なものといえばいいだろうか。

「ふうん、なかなか進んだ国なんだな」

仁も感心する。

馬車は中央通りを進み、王城手前で一旦停止。そこには門があり、衛兵が詰めている。

ブルウ公爵、ブラウン侯爵、クズマ伯爵、ガラナ伯爵がそれぞれの身分を証明し、各馬車の乗員がチェックされる。

ラインハルトはショウロ皇国からの外交官であり客人、仁とビーナは 魔法工作士(マギクラフトマン) としての登録証を提示した。

面倒なので礼子には 消身(ステルス) で消えていてもらおうかとも思ったが、後々面倒になるのを避け、最初から仁の 自動人形(オートマタ) であることを明かした。

魔法の素養がある者ならよく調べれば礼子が 自動人形(オートマタ) であることがわかるので、すんなりと受け入れられ、一行は城内へ入ることを許されたのである。

門をくぐったそこは王城内でも外宮と呼ばれる区域である。

整備された石畳の広場を抜け、正面に建つ王宮ではなく、左方に建つ迎賓館へと向かう。

今までの速度の半分、いや三分の一ほどのゆっくりとした速度で。

そして馬車は所定の位置へと到着し、外側から馬車の扉が開かれる。

そこに立つのは近衛騎士が4人。王国でも指折りの戦士である。王城内に不審な人物を入れるまいと、ブルウ公爵一行の挙動を監視しているのだ。

そして迎えに出た王城内に勤める侍女達。彼女達は下級貴族の子女であったり、有力商人の娘だったりし、行儀見習いを兼ねてここに勤めているのである。

共通するのは身元が確かなこと。ここ王城では、2日後に控えた第3王子の誕生会に招かれる者達に紛れて他国のスパイや暗殺者が入り込むことを警戒していた。

「武器の類は全て預からせていただきます」

そう言われ、礼子の『桃花』を初め、ラインハルトの護衛達の武器、エルザの護衛ヘルマンの剣も預けることとなる。さすがに執事アドバーグの杖は預けずに済んだ。

「こちらへどうぞ」

ブルウ公爵一行には10人の侍女と10人の従僕が、ブラウン侯爵一行には7人の侍女と7人の従僕が付いた。

クズマ・ガラナ両伯爵にはそれぞれ5人ずつの侍女と従僕が付き、ラインハルトにも同数の侍女と従僕が付けられたのである。

「この棟をお使い下さい」

ラインハルト、エルザ、仁、ビーナが案内されたのは一続きになった建物。何となく仁は平屋建てのアパートを連想してしまう。

部屋割りは一行の長であるラインハルトに一任された。

「それじゃあ、僕、エルザ、ジン、ビーナはそれぞれ一部屋使おうか。あとは男女別に適当に部屋を割り振ってくれ」

最後の言葉は自身の執事に宛てたもの。使用人達の部屋の割り振りはその執事が行う事となった。

因みに 園遊会(パーティー) に参加するゴーレムは全て動作を停止させて所定の倉庫に運ばれていた。これも破壊工作などを防ぐための処置である。

「さてそれじゃあ部屋に荷物を置いて寛ぐとしようか。エルザ、ジン、ビーナ、後で僕の部屋で一緒にお茶でも飲もう」

「ん」

「わかった」

「はい」

それで各自割り当てられた部屋へと向かう。と、仁の後に侍女が1人付いてきた。

「えーと、君は?」

仁と一緒に部屋に入ろうとしたので、疑問に思った仁がそう尋ねると、

「あ、わ、わたしは、お客様の御用を承ることになります侍女でございます!」

と若干焦り気味に答えた。よく見ると、年の頃は15、6歳くらいか。エルザやビーナと同年代に見える。

髪は栗色でボブカットにしており、頭にはホワイトブリムを乗せ、黒いワンピースと白いエプロンドレスを着ているので一目で侍女だとわかる。

茶色い眼がくるくるとよく動く、丸顔が愛嬌ある少女であった。

「それには及びません。お父さまのお世話は私が致します」

その少女の前に礼子が立ちはだかった。

身長130センチの礼子が155センチくらいの少女に対して胸を張って対峙している姿は可愛らしくもあり滑稽でもある。

「あ、あの、わたしでは駄目なんでしょうか? もっとベテランの方がよろしいのでしょうか?」

断った理由を自分が未熟だからと受け取ったのか、その侍女が焦って聞いてきた。

「いえ。誰であろうと必要ありません」

ぴしゃりと言い切る礼子だったが、

「いや、礼子、俺たちはこの国の事やこの城のことよく知らないし、少しは役に立ってもらえると思うぞ?」

と仁に言われて、

「……はい、お父さま」

礼子も渋々承知したのである。

部屋に荷物を置き、窓を見る。外に見えるのは樹木だけである。

「眺めは悪いな」

仁がそう呟くと、

「あ、あの、すっ、すみません! 外から見えないように目隠しの意味で木が植えてあるんです」

そう聞いて、なるほどと仁は納得する。

「じゃあ、ラインハルトの部屋へ行こうか」

そう言って部屋を出ると、礼子だけでなく侍女も付いて来た。

ちょうどエルザもやって来るところ、見るとミーネの他にもう1人侍女がくっついている。

エルザより少し上くらいに見えるほっそりした外見。栗色の髪で菫色の目をした女の子である。

「やあエルザ。そちらは?」

と尋ねると、

「……私担当の侍女さん。ジン君も?」

「ああ、そうらしい」

そしてビーナも部屋から出て来た。

「あ、ジン」

「やあ、ビーナ」

そのビーナにも赤毛の侍女が1人付いていた。

そして3人はラインハルトの部屋へ。

そこにはやはりというか、2人の侍女が付いていた。

1人は20代半ばくらい、ブロンドで青い眼のグラマラスな美人。もう1人は10代後半、珍しく黒い髪をポニーテールにし、鳶色の目をしたこれも美人である。

「なんかこの城の侍女さんって美人揃いだなあ」

と仁が言うと、

「あら、お客様、お上手ですわね」

とラインハルトの斜め後ろにいたグラマー侍女が言った。仁の侍女は頬を染め、エルザはそんな仁を少しだけ睨んだ。

* * *

ラインハルト付きの侍女が淹れてくれたお茶は本物の紅茶の味がした。

「ん? このお茶、美味いな」

そう仁が言うと、

「ありがとうございます。テエエと言いまして、我が国特産のお茶なんですよ」

「へえ」

お茶は、緑茶、ウーロン茶、紅茶、全てツバキ科チャノキの葉から作られる。

若葉を摘んで乾燥させていくのだが、珍しいことにお茶の葉は放っておくと発酵して紅茶になっていくのである。

緑茶は蒸してこの発酵を止め、紅茶は発酵させて作る。

で、ここで飲んだお茶は紅茶に間違いなかった。

「ジンも気に入ったかい。僕も帰りに買って帰るつもりなんだ」

「私も」

ラインハルトとエルザも気に入っているようだ。ビーナはお茶の味はよくわからないらしい。

「さて、」

ラインハルトが口を開く。顔つきが外交官モードになっている。

「侍女だと言っている君達、僕らの監視が目的だね?」