軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-19 首都へ

「全て予定通りです」

「うむ、今回は楽しみな奴も参加するらしいな?」

「は。かの『 黒騎士(シュバルツリッター) 』、『タウロス』、それに『セレス』が参加すると聞き及んでおります」

「ふん、我々への協力を拒んだステアリーナとそのゴーレムか。それもまた一興」

「この作戦が成功すれば一気に強化できますな」

「すれば、ではない。させるのだ」

「はっ」

* * *

ブルウ公爵を初めとしたクズマ伯爵、ガラナ伯爵、ラインハルト一行は予定通りにブルーランドを出発していた。

1日目はバーベナ町泊まり。出発したのが昼過ぎだったので20キロくらいしか移動していない。

ガラナ伯爵も問題を起こさなかったので平和な夜であった。

翌日は雨であった。

向かうは地方都市ストリアル。この辺りまで来ると街道は土となり、ところどころ抉れたりした箇所があって、折からの雨でぬかるんでおり進みは遅い。

「ええい、もっと速く走れんのか!」

この日先頭を行くガラナ伯爵の馬車隊、その中にあって彼はのろのろとした進みに1人文句を付けていた。

「そんなに急がなくても十分明るいうちに着けるんだがな」

ラインハルトが苦笑混じりにそう呟く。今回、仁は礼子と共にラインハルトの馬車に同乗していた。

因みに、エルザの馬車に同乗しているのはビーナ。

2人とも、ガラナ伯爵が大嫌いということで意気投合したらしい。ラインハルトだけでなく、クズマ伯爵もこの2人をガラナ伯爵の目に触れさせないよう協力してくれていた。

午後、雨も上がり、ラインハルトの言葉通りにまだ日が高いうちにストリアルに到着。ブルーランドほどではないが、賑やかそうな街である。

一行のうちブルウ公爵は迎賓館的な役目も果たす領主館に泊まり、クズマ伯爵とラインハルト一行はストリアル貴族の家、ガラナ伯爵はストリアル最高級の宿に泊まる運びとなった。

「ようこそおいで下さいました、クズマ伯爵、ラインハルト殿。それにエルザ嬢ですね、歓迎いたします」

そう言って出迎えたのはストリアル在住の貴族、グリエリ子爵。明るい茶色の髪をした好青年と言った印象だ。

体格はがっしりしており、ひょろっとしたラインハルトと並ぶと頼もしくさえ見える。

「君が 魔法工作士(マギクラフトマン) のジンかな? そしてそちらは?」

最後の言葉はビーナに向けてである。そのビーナは慌てて、

「あ、く、クズマ伯爵のお世話になっております 魔法工作士(マギクラフトマン) でビーナといいます」

「ほうほう、君も 魔法工作士(マギクラフトマン) か。それはそれは。まあ立ち話もなんだ、どうぞ中へ入ってくれたまえ」

仁とビーナの案内は執事に任せ、クズマ伯爵とラインハルトには、

「どうぞ、こちらでおくつろぎ下さい」

と自らが案内役を務めていった。

「まあ、普通の貴族っぽいな」

とは仁の言葉。

「普通ってよくわからないんだけど」

とビーナ。

2人は大部屋一つに案内されていた。

「ところでこの部屋を2人で使うのかしら?」

見渡せば10畳くらいある部屋に大きなベッドが1つだけ。

「そうらしいな。まあ、有名でない 魔法工作士(マギクラフトマン) なんてこんな扱いなんだろ」

そう言いながら仁は、

「礼子」

と、自らが作り出した 自動人形(オートマタ) を呼んだ。

「はい、お父さま」

「きゃっ!」

いつの間にそこにいたのか、仁のすぐ横に礼子が現れたのでビーナはびっくりした。

「ああ、驚かせたか、悪い悪い。面倒になるのがいやなんで、礼子には 消身(ステルス) を発動させてもらっていたんだ」

『 消身(ステルス) 』。それは先日遭遇した賊が使っていたアミュレットの機能を仁が解析した結果誕生したより高位の魔法機能。

気配だけでなく、姿も消す事が出来る。原理は光魔法の応用で身体の周囲の光を屈折・屈曲させ、背後の物体を見せるというもの。

当然中にいる者の目には光が届かないので暗闇となるが、そこは仁の知識、可視光以外の波長は屈折・屈曲させないとすることで対応した。

つまり赤外線領域を使って礼子はモノを見ているのである。

「……いきなり背中を刺されるまでわからないわね」

物騒な感想を漏らすビーナ。確かに隠密機動にはもってこいだ。

暇が出来たら忍者部隊とか作ろうか、と考える仁であった。

「覗いちゃ駄目よ」

食事後、ビーナが寝間着に着替えると言うので仁は部屋の外に出ていた。因みに仁とビーナは別室での簡素な食事であった。

あとはもう寝るだけ、と寝間着になろうとした2人なのである。

そこに通りかかるエルザ。というか仁達の部屋へやって来たのだろう。

「ジン君、なにやってるの?」

当然の質問。

「ああ、今ビーナが着替えしているからさ」

そう答えると、

「え? 2人いっしょの部屋、なの?」

と少し焦ったような声が返ってきた。

「ジン、もういいわよー。……あれ、エルザ?」

ドアが開き、ビーナが顔を出すと、そこにエルザがいたので驚いたようだ。

「……ビーナ、私といっしょに来て」

「え、あの、ちょっと」

エルザはほんの少し怒ったような顔でビーナを自分たちの部屋へと引きずるように連れていった。

「お嬢様、彼女と一緒にご自分のベッドでお休みになるとおっしゃるのですか?」

「そう。私のベッドは広いから」

エルザのベッドはダブル、いやキングサイズである。小柄なエルザなら3人は楽に寝られそうだ。

乳母のミーネは渋い顔。いくら同性の友人でも、庶民が一緒に寝るということに引っかかりがあるようだ。

その渋い顔を眺めていたエルザは妥協案を出す。

「……わかった。ミーネ、私と一緒に寝て。で、ビーナはミーネのベッドで寝ればいい」

「お、お嬢様!? ご一緒させていただけるんですか?」

それを聞いてミーネの渋面が一気に喜色で輝く。

「ん」

「わかりました、ビーナさん、でしたね。あなたはこちらにあるベッドでお休み下さい」

「は、はあ」

エルザとミーネの勢いに付いていけず、流されるままそこで寝ることになったビーナである。

一方こちらは仁。

「ビーナ、遅いな」

「お父さま、ビーナさんが戻ってきたらお起こししますから、もうお休み下さい」

「うーん、そうするか。眠いし」

そう言って仁はベッドのやや端に横になる。礼子はそんな仁を守るように足元に静かに立ち、あたりの気配を探る。

しかしビーナも戻らず、他に人の気配もせず。

その夜はそうして更けていった。

* * *

そんなごたごたもあったものの、ストリアル領主ブラウン侯爵を加えた一行がルルス町を経て首都アスントに到着したのは予定通り、ゴーレム 園遊会(パーティー) を2日後に控える午前のことであった。