作品タイトル不明
06-18 閑話3 ある日の蓬莱島
この世界には 自由魔力素(エーテル) が充満している。
そして大地を構成する、マントル、 核(コア) も地球とは異なる。
マントルは 魔石(マギストーン) や 魔結晶(マギクリスタル) を含む岩石、 核(コア) はミスリルやアダマンタイトを含む金属元素。
地磁気と同様、魔力線も発生しており、磁極と魔極は一致している。
北の魔極には 自由魔力素(エーテル) が引き寄せられているので、北極(北魔極=北磁極)に近づくほど空中魔力濃度は高くなっている。
また、反対に南へ行くほど 自由魔力素(エーテル) は薄くなる。
ゆえに魔力を糧とする魔物は必然的に北極近くに集まることとなった。
ところで 自由魔力素(エーテル) は南極には引き寄せられていない。
南極には魔極が無かったからである。これはこの世界の大いなる謎の1つであった。
このため、北極周辺は魔物の土地、それ以外は人間の土地として棲み分けがなされている。
が、時として例外はあるもので、1頭の 海竜(シードラゴン) がその住処を離れ、南へと泳いでいた。
海竜(シードラゴン) は途中で見つけた 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の群れを捕食。100匹ほどの群れの半数近くをその腹中に収めてしまっていた。
残った 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) は 海竜(シードラゴン) から逃げるように南下。
魔力は薄いが敵のいない海を我が物顔で泳ぎ、魔力を持たない脆弱な海棲生物を見つけ次第喰らっていた。
だが、その50匹ほどの 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の群れも、とある無人島の近くで強大な敵にやられ、全滅の憂き目に遭う。
その魔力の大半は飛び散り、空中や海中へと拡散していった。
自然には有り得ない濃度の魔力を溶かし込んだ海水は、海流に乗り北へ流れていく。
そしてそれは、はぐれ 海竜(シードラゴン) の知るところとなった。
はぐれ 海竜(シードラゴン) は流れてきた魔力に惹かれ、南への旅を再開した。それが自らの破滅に繋がるとも知らずに。
* * *
蓬莱島周辺には暖流が流れている。それは赤道付近から始まり、エリアス王国のある半島付近をかすめ、崑崙島と蓬莱島のある海域を北へと流れていた。
この暖流に乗って、たくさんの魚が回遊してくる。
今、蓬莱島の 海軍(ネイビー) ゴーレム、マリン67は三胴船『ハイドロ23』に乗り込み、同じくメイドゴーレムのアクア67と共に漁に出ていた。
(マリン67、たくさん取れましたね)
(うむ、これらは冷凍と干物にするんだったな?)
(そうです。御主人様はお魚がお好きですから)
その時。
(マリン67、気付きましたか?)
(ああ。強大な魔力だ。急いで戻ろう)
魔法型水流推進機関(マギウォータージェット) を全開にして、大急ぎでタツミ湾へと戻るハイドロ23。
タツミ湾の生け簀を避けて桟橋へ付けると、マリン67は報告のため、 転移門(ワープゲート) で研究所へ。アクア67は捕れた魚をまとめてから 転移門(ワープゲート) を使った。
仁が留守の間蓬莱島を管理する魔導頭脳『老子』は報告を受けると即座に対応を開始する。
( 空軍(エアフォース) 緊急出動。スカイ1に命じる。スカイ2から10は研究所上空を守れ。11から50は報告のあった地点上空を第2警戒態勢で哨戒せよ。残りは待機)
(スカイ1了解)
( 海軍(ネイビー) 緊急出動。マリン1はマリン2から80までを蓬莱島北部海域へ回せ。残りはタツミ湾の警備に当たらせるように)
(マリン1了解)
( 陸軍(アーミー) は第1警戒態勢。ランド1はランド2から10までを研究所と館の警備に。残りは北部から東部の海岸線に配備せよ)
(ランド1了解)
(ソレイユ、ルーナはプラネ、サテラ及び100番ゴーレム達と共に崑崙島の守備)
(了解)
『老子』が次々に指示を出していく。今一つ軍隊調でないのは元となった仁の知識が中途半端なためである。
* * *
2時間後、スカイ45が北から南へと向かう航跡を発見。付近にいた33、37と共に降下、それが巨大な竜のような魔物であることを確認した。
(スカイ45報告。巨大な竜発見。魔力の主と思われる。竜は肉食。付近の魚類を捕食するのを確認)
先頃全員に行き渡った『 魔素通信機(マナカム) 』で報告を入れる。
(蓬莱島了解。映像も送れ。対象は引き続き観察を続けよ)
(スカイ45了解)
更にスカイ25、48、49、50がやって来た。これで万が一にも見逃すことはない。
スカイ45は地図作製などのために搭載している『 魔導監視眼(マジックアイ) 』で映像を『老子』に送った。
スカイ45から送られてきた画像を解析、『老子』は対処を考察する。
*対象は魔物である。
*このまま放置すれば、蓬莱島周辺の魚類を根こそぎ食べてしまう可能性が大。
*魔物で肉食。
結論。蓬莱島の管理海域に入り次第駆除。
補足。主人である仁のため、素材を確保すべし。
* * *
海竜(シードラゴン) は時速40キロほどで南下を続けていた。その最中、魔力が集中している場所を見つける。
そこは陸地のようだが、信じられないくらいに大きな 魔力素(マナ) を感じる。
それは蓬莱島に蓄えられた 魔結晶(マギクリスタル) から漏れる 魔力素(マナ) であった。
僅かに進路を曲げ、その 魔力素(マナ) の源目指し、 海竜(シードラゴン) は泳ぐ速度を上げた。
魔力のある場所に大分近づいた頃、 海竜(シードラゴン) は海の上に小さな魔力が点在しているのに気が付いた。
目指す魔力ほどではないが、これも腹に収めようと浮上する。その時、真上から細い光が降ってきた。
それは 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の牙でも傷付かない、 海竜(シードラゴン) の右後ろ脚を易々と貫いた。
* * *
蓬莱島に50キロの海域まで 海竜(シードラゴン) は接近、その目指すところが蓬莱島であることは間違いない。
『老子』は攻撃を命じた。
まず、真上を飛ぶスカイ25が『 光束(レーザー) 』を1条だけ発射。それは 海竜(シードラゴン) の右後肢を貫いた。
(スカイ25報告。『 光束(レーザー) 』は敵に有効)
(蓬莱島了解。現場にいる 空軍(エアフォース) は『 光束(レーザー) 』を用いて攻撃せよ。但し狙うのは極力、急所と思われる頭部と胸部に限る)
(スカイ25、29、41、45、46、47、48、49、50了解)
そして9機の『アルバトロス』は対地兵器である『 光束(レーザー) 』を各機2門同時発射した。
針のように細く収束した光学兵器は、あわてて海中に逃れようとした 海竜(シードラゴン) を直撃。
頭部には11条、胸部に4条、尾部に1条の『 光束(レーザー) 』が命中。
海竜(シードラゴン) は何が起きたのかわからぬままに絶命した。血も流れ出していない。
(スカイ45報告。対象の無力化に成功。こちらの被害は無し)
(蓬莱島了解。対象の解体および素材の確保は現場海域にいる 海軍(ネイビー) に任せ、 空軍(エアフォース) はスカイ41から50を除き帰島せよ。スカイ41から50は他に異常がないか500キロ海域まで偵察せよ)
(了解)
( 陸軍(アーミー) は第1警戒態勢解除、帰還せよ)
(了解)
海竜(シードラゴン) は素材の宝庫だった。角、牙、爪、鱗、骨は魔力を持つ加工品に、肉は強壮剤の材料に。革は 疑似竜(シャムドラゴン) のそれを上回る耐久性を誇った。
(血液は魔力が豊富ですね、冷凍保存しておけば何かに使えるかも知れません)
ほとんど流れ出さなかった血液も保存することにする老子。
身体の大きさの割に小さな背中の翼膜はこの後、礼子に使われ、更に彼女の性能を上げることになる。
また、保存血液は将来重要な役割を果たすことになるがそれはまだずっと未来の話。
『老子』は自らの対処を自己採点して満足した。
(御主人様も満足して下さるでしょう)
こうして、蓬莱島管理魔導頭脳『老子』最初のミッションは終了した。