軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35-35 対話

《この先にある峠を越えれば、カイナ村とかいう辺境の村ですね。そこに『崑崙君』がいるか、いないのか》

トーゴ峠へ向かう山道を辿る影が一つ。

真夜中だというのに、その足取りは確かである。

《いなければ、村を破壊し、誘き出すだけ》

トーゴ峠に着いた時、まだ夜は明けておらず、夜明け前の 静寂(しじま) の中、カイナ村は眠っているように見えた。

* * *

人々は眠っていても、眠らない者たちがいる。

〈お館様、何者かが近付いて来ます〉

カイナ村監視用魔導頭脳『庚申』からの報告が行われた。

「うん、そのようだな」

トーゴ峠に近付くにつれ、その姿は鮮明になる。

「……待てよ? こいつは……『ヘレンテ』じゃないのか?」

『 御主人様(マイロード) 、間違いないでしょう。近付いてくるのは『ヘレンテ』です』

その外見を確認し、老君も断言した。

「『ヘレンテ』が出てくるとはな。目的は……俺か?」

『はい、 御主人様(マイロード) 。その可能性が大ですね。先日クライン王国で捕まえた間者も『崑崙君』についての情報を集めていたようですから』

その時、『庚申』から報告が入った。

〈『ヘレンテ』らしきゴーレム、トーゴ峠に到着しました。どうしますか? ご指示をお願いします〉

「そうだなあ……」

仁は、カイナ村の防衛手段を思い起こしてみるが、なかなか思い出せない。

最後に聞いたのが、鉱山からの犯罪奴隷が襲ってきた時であるから、去年の5月である、無理もない。

「よし、まずはランドWからZに出迎えさせよう。その後は適宜、網による捕縛やレーザーを使用すること」

〈わかりました〉

* * *

《ふむ、奇妙な建物……城でしょうか? こういった建築様式はデータにはないようですね》

エルメ川手前で二堂城を見上げたゴーレム。その前に4つの影が現れた。カイナ村を陰から守護するゴーレム、ランドW、X、Y、Zである。

「止まれ。何者だ? この村に何か用か?」

《む? お前はランドか?》

「そうだ。重ねて問う。何の用か?」

《私の、そちらが知る名は『ヘレンテ』。『崑崙君』に会いたい》

「会ってどうする?」

《話がしたい》

「具体的には?」

《……》

「答えられないのか?」

《いや、そうではない。一言で言い表せないだけだ。……ふむ、なぜ私は……う?》

『ヘレンテ』の様子がおかしいことに最初に気付いたのはランドZであった。0.5秒遅れてW、X、Yも気が付く。

「どうした、『ヘレンテ』?」

《『ヘレンテ』だと!? ……違う、吾は、吾は……!》

〈お館様、『ヘレンテ』の様子が変です〉

「そのようだな。よし、網を使って捕縛だ」

〈はい。防衛機構7、捕縛網レベル3〉

捕縛網は 地底蜘蛛(グランドスパイダー) の糸を使って編まれた網で、レベル1から3までのランクがあり、強度が違う。

レベル3はランドでも切れない最強の強度だ。

因みにレベル1は人間拘束用、レベル2は一般ゴーレム用である。

『転送機』で発射された網が『ヘレンテ』に覆い被さる。

《小癪な!》

気が付いた時には網を被せられており、4体のランドが協力して捕縛しているからには、『ヘレンテ』といえども抜け出せるものではない。

動きを封じられ、あえなく捕縛されてしまった。

《く……!》

「よし、話をしてみよう」

そう言いだした仁を、礼子が止める。

「お父さま、大丈夫ですか? おやめになった方が……」

「いや、直接話すわけじゃない。声だけだ」

『なるほど、 魔素通信機(マナカム) ですね?』

仁の考えを推測した老君が言う。

「そうだ。まずは声で。その次は 魔導投影窓(マジックスクリーン) 越しか、 分身人形(ドッペル) で、としよう」

「それなら安全ですね」

礼子も安心したようだ。

ランドZの口を借りて、仁は『ヘレンテ』と話をしてみることとした。

「『ヘレンテ』。俺は『崑崙君』ジン・ニドーだ」

《何!?》

捕縛されてなおももがいていた『ヘレンテ』が静かになった。

「音声だけで悪いが、そちらを100パーセント信用はできないのでね」

《それはわかる。本物だという証は?》

「ないな。そもそも証といっても、そちらは俺を知らないわけだから意味がない。ここは信用してもらうしかない」

《わかった。信用しよう。そもそも、この状況で私を騙しても意味はないからな》

今のところ『ヘレンテ』はおとなしくなっている。

先程、『吾』と言っていた時の『ヘレンテ』は異常だった、と仁は感じている。

「それで、何か用があるのか?」

《ある。先日、『モデヌ』の脅威を退けたその力を見込んで、だ》

「それはいったい?」

仁の問いに、『ヘレンテ』は僅かに間をおいて答えだした。

《……手を貸してもらいたいことがある》

「それは?」

《とある施設の整備だ》

仁は、それに心当たりがあった。それで、カマをかけてみる。

「オノゴロ島の地下にある施設か?」

《なぜそれを! ……いや、『崑崙君』だからこそ、か》

『ヘレンテ』は驚きはしたものの、仁がそのことを知っている事実をすぐに受け入れた。

「知っているとはいっても。それがあることだけだ。いったいあれは?」

《重要な基地、とだけ言っておこう。それ以上はまだ教えることはできない》

「そうか。まあそれはわかる」

《ところで、なぜ私は拘束されているのだろうか?》

「え? 覚えていないのか?」

仁は驚いて質問すると、さらに驚くべき答えが返ってきた。

《覚えていないもなにも、私はここへやって来たらランドが現れ、いきなり拘束したのではないか》

「……違うぞ」

仁は『ヘレンテ』に異常の臭いを嗅ぎつけた。