軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35-13 魔族領と・・・

「シオン、久しぶり」

「ほんとよ。たまには遊びに来なさいよ」

仁たちは『コンロン3』を出て、『森羅』氏族の集落へと向かっている。

「そうしたいのは山々だけど、色々忙しくてさ」

仁がそう言うと、シオンが反応した。

「あっ! そうそう、この前の流星雨だけど、地表に落下しないようにジンが迎撃したんですってね! ありがとう!」

「ああ、いや、なに」

「なによ、煮え切らないわね」

そんな会話をしているうちに集落に着いた。なんだか賑わっている。

「賑やかだな。お祭りかい?」

「違うわよ。……ジンが来たから歓迎しているんじゃない」

「ええ!?」

「もう。ジンは『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』なんだから、来ればいつでも歓迎されるわよ」

それに、とシオンは続ける。

「今年の秋は豊作だったわ。自給自足も軌道に乗ったし、これで安心して冬が越せる」

シオンがそう説明した矢先、シオンの母ロロナと、 魔法工作士(マギクラフトマン) マリッカが仁を出迎えた。

「ジン様、いらっしゃいませ」

「ジン様、ようこそ!」

* * *

その日は、収穫直後だったこともあって、昼から大宴会になってしまった。

「ジン様のおかげで、今年の冬は余裕で越せそうです。他の氏族も同じですよ」

透明なキュービックジルコニアを使った温室もこれから威力を発揮するだろう。

「冬でも作物が収穫できるのは嬉しいですわ」

ロロナがにこにこしながら仁に頭を下げた。

「それに、『アグリー』たちがすっごく頑張ってくれちゃってましゅ!」

噛みながらマリッカが言う。

仁も、自分のアドバイスや作品が人の役に立っているのは嬉しかった。

「そういえば、イスタリスは?」

ふと、見知った顔の1人が欠けていることに気が付いた仁。

「ああ、姉さまはね……うふっ」

「?」

意味深に笑うシオンに、仁は首を傾げざるを得ない。

「イスタリスはですね、『傀儡』のベリアルスさんとお付き合いしているんですよ」

2人の母、ロロナが仁にそっと耳打ちした。

「え、そうだったんですか」

ちょっとだけ意外な組合わせであった。が、妹アルシェルが見つかったため、ベリアルスも肩の荷が下り、こうした付き合いができるようになったのだろうと仁は考えた。

「ところで、グースさんて、物知りな方ですね」

言われてグースの方を見ると、族長バルディウスと、シオンの父ラデオゥスらと談笑していた。

切れ切れに聞こえてくる会話を聞いていると、氏族に伝わる伝承をいろいろ聞いているらしい。

同様にヴィヴィアンも、年配の氏族員たちにいろいろ話を聞いているようだった。

「ジン兄」

そこへ、エルザがやってくる。

『森羅』氏族の小さな子に懐かれているようだ。

サキも、大勢に取り巻かれて、すっかりここに馴染んでいるように見える。

頃合いを見て、仁は族長バルディウスに、今回訪問した目的を打ち明けた。

「友好への第2ステップとして、何名かを俺の領地に招待したいんですよ」

「おお、それは嬉しいですな。……で、誰を?」

仁はその人物と、選んだ理由を一応考えており、それを口にする。

「一番先に出会った、という意味でシオン。それに、 魔法工作士(マギクラフトマン) としていろいろ覚えてもらいたいからマリッカを」

「おお、なるほど。わかりましたぞ」

本来ならイスタリスも、と思っていたのだが、また次の機会にしよう、と仁は考えた。

「え? またジンの領地へ行けるの? 楽しみね」

横で話を聞いていたシオンは嬉しそうに微笑んだ。

マリッカも、族長に呼び出されてその話を聞き、やや戸惑いながらも光栄でしゅ、と噛みながら答えたのであった。

その後仁一行は、『 諧謔(かいぎゃく) 』、『 傀儡(くぐつ) 』、『福音』等々、他の氏族へも顔出しをしていった。

エルザとの結婚を知らされていただけだった彼等は、こぞって仁たちを祝福した。

そして3日後、仁たちはまた『森羅』の氏族のところへ戻って来ていた。

* * *

「ふむ、いささか歪な技術レベルが見受けられますね……」

一方、ショウロ皇国には、少し周囲から浮いた格好をした旅人の姿が見られた。

「300年ほど前に起きた 自由魔力素(エーテル) 減少を境に、文化・文明が退化したというのは知ってはいましたが……これほどとは」

他人には聞こえない程度の独り言を呟きつつ、町中を徘徊している。

ここはショウロ皇国の地方都市、トロナム。首都ロイザートの西にあり、交差する街道を持つため、そこそこ賑わっていた。

「魔導具も低劣。流通している素材も2級品。どう考えても、脅威になるとは思えず」

半日歩き回ったその旅人は、1つの結論を導き出す。

「あの『ランド』というゴーレムが、明らかに異質であると結論せざるを得ないですね」

まるで誰かに話し掛けているような口調である。

「だとすると、その異質の元となる『誰か』がいるはずです」

ゆっくり歩き出す旅人。

「……首都ロイザートに行けばわかりそうですね」

その足取りは確かで、暮れ始めた空にもかかわらず、町の外へと向かっていた。

その後ろから、もう一体の人影が隠れるようにして付いていったことに気付いたのか、どうか。

2人はそのまま夜の闇に消えていったのである。

* * *

「それじゃあ、お世話になりました」

「いえいえ、なんのお構いもできず」

「ジン様、シオンとマリッカをよろしくお願いします」

「もちろんです」

「シオン、ちゃんと礼節は守りなさいよ?」

「わかってるわ。行ってきます」

「マリッカ、ジン様にご迷惑お掛けするんじゃないですよ?」

「ひゃい!」

「サキさん、またおいでなさいね」

「はい、ありがとうございます」

「グース殿、また語り合おう」

「そのときはよろしく」

「ヴィヴィアンさん、いつでも歓迎するわ」

「ありがとうございました」

そんなやり取りのあと、シオン、マリッカを加えた仁たち一行は『コンロン3』に乗り込み、一路南を目指したのであった。