軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35-01 素材確保

「うーん、ミスリル銀の在庫が心許ないのか」

仁は蓬莱島で、素材の在庫状況について、老君からの報告を受けていた。

『はい、 御主人様(マイロード) 。その他の素材、金、銀、銅、鉄鋼、錫、亜鉛、鉛、ニッケル、クロム、マンガン、コバルト、バナジウム、ベリリウム、モリブデン、軽銀、アダマンタイトなどは『破片』騒動前とほとんど変わらない量まで回復しましたが、ミスリル銀だけは補充できませんでした』

「うーん……」

『破片』を資源として、宇宙船や大型 力場発生器(フォースジェネレーター) 、転送砲などのために使い込んだ資材を補充してきたのだが、どういうわけかミスリル銀だけは見つからなかったのだ。

『各種 魔結晶(マギクリスタル) やユニバシウムなども手に入ったのですが』

「そうなると、ミスリル銀自体、埋蔵量が少ない金属なのかな?」

『そう結論せざるを得ません』

「残念だな」

『あと未調査なのは『長周期惑星』、つまり『モデヌ』だけです』

「そうか。軌道はどうなっている?」

『はい、セラン太陽系の公転軌道に対し、40度ほどの角度で『斜め上』へと向かっています。セランの重力に引かれても、このままもう宇宙の彼方に消えていきそうです』

「なら、最後に調査してみたいな」

『そうですね』

「『アドリアナ』を向かわせようか」

『はい、よろしいかと思います。ではさっそく』

「うん、頼む」

こうして、ミスリル銀を求めて『アドリアナ』は再度宇宙へと発進したのである。

* * *

「さて、次の課題は、と」

仁は、再び『オノゴロ島』について考え始めた。

「我々の住むこのアルスを、わけのわからない存在が管理しているというのは気持ち悪いな」

『そうですね』

『ヘレンテ』という『代弁者』ゴーレムも、友好的ではなかった。

このアルスに住む人類を守る存在とは思えないのだ。

「そもそも、 自由魔力素(エーテル) を集めて何をしているかも不明だしな」

『やはり惑星ヘールと未だに関わりがあるのでしょうか』

「かもしれないな。だとすると、どんなことが考えられるかな?」

『まず考えられることは、700672号が言っていたように 自由魔力素(エーテル) をここからヘールへ送っている、ということですね』

「だが、何のために?」

『それは情報が少なすぎてわかりません』

「だろうな。だが、 自由魔力素(エーテル) が必要なら、わざわざこのアルスから送らなくてもいいんじゃないか?」

『アルスからだけとは限りませんよ?』

「……ああ、そうか。確かにな」

他にも、そうした施設があってもおかしくはないわけだ。

「だが、そうなるとどうやって 自由魔力素(エーテル) を送っているのかだな」

『そうですね』

空間を超えて 自由魔力素(エーテル) を送り込むという技術は、仁が持たないものである。

「研究してみたいな」

それが出来るなら、『 魔力貯蔵器(マナボンベ) 』なしに、 自由魔力素(エーテル) 濃度の低い場所で稼働できるゴーレムや 魔導機(マギマシン) を作ることができるだろう。

「 転移門(ワープゲート) かな」

『あまり研究しておりませんが転移魔法陣もありますね』

「そうだな」

いずれにしても転移技術の応用だろうと仁は考えていた。

そのあたりも今後の課題である。

「ジン兄、とりあえず補充するなら『 魔導式物質抽出装置(マテリアルエクストラクター) 』を使ってみたら?」

食事の仕度をしていたらしいエルザが、司令室に顔をだすなり、そんな意見を口にした。

「ああ、その手があったか」

『 魔導式物質抽出装置(マテリアルエクストラクター) 』はかつてアドリアナが素材を緊急に必要とした際、海水から抽出するために作り上げた魔導具である。

通常は鉱石などの地下資源から入手する方が効率がいいので、仁はこれまでに使ったことがなかったが。

「そうだな。俺は使ったことがなかったけど、いい機会だから作ってみようか」

というわけで、仁は『 魔導式物質抽出装置(マテリアルエクストラクター) 』を製作し始めた。

先代『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』、アドリアナ・バルボラ・ツェツィが若き日に作った魔導具。仁としてもちょっと興味はあった。

とはいえ、仁がそのまま作るはずはない。自分なりにアレンジも加えている。

「ここをこうして、と」

「ジン兄、そこはどうしてそうするの?」

「ああ、ここは本来、目的の物質についての情報を蓄える 魔導回路(マギサーキット) なんだが、あまり融通が利かないみたいなんだ。だから……」

「ん、納得。……でも、そろそろお昼だから」

「あ、そうか。わかったよ」

本当はお昼ご飯の仕度ができたと呼びに来たエルザであったが、仁が変わったモノを作っているのでつい引き込まれてしまったようだ。だんだん亭主に似てくる妻の図である。

「お父さま、この部分だけでしたら 職人(スミス) にも完成させられるはずです」

「じゃあ、頼むとするか」

職人(スミス) に指示を出し、仁はエルザ、礼子と共に食堂へ移動し、昼食を摂ったのであった。

* * *

「……で、さっきの続き」

「あ、ああ。ええと、目的の物質についての情報を蓄える 魔導回路(マギサーキット) だったな。ここに改良を加えたんだ。比較と判断をする 魔導回路(マギサーキット) に変えて、サンプルと同じものを抽出するようにしてみた」

「と、いうこと、は、そこに金を入れれば金が、アダマンタイトを入れればアダマンタイトが抽出される、ということ?」

「そういうこと」

「すごい。さすがジン兄」

「お父さまはすごいです!」

アドリアナ・バルボラ・ツェツィが若き日に作ったものは、特定の物質に調整するのがなかなか面倒だったが、この改良型は誰でも使えるところが売りだ。

「ゴーレムたちにも任せられますね」

マーメイド部隊に、深海中で使ってもらったら効果的かもしれない、と思う仁であった。

「まずは10基作って試してみようか」

うち3基は蓬莱島の西と東、北で試してみる。南はタツミ湾(正確には南東だが)なので、万が一億が一、生け簀の魚に悪影響があってはいけないという配慮である。

製作自体は問題なく、1時間で10基が完成。それを蓬莱島の東西北へと設置するのは5色ゴーレムメイドのアメズ20、21、22。管理も彼女たちだ。

この3基はミスリル銀の抽出にセットされている。

残り7基は、うち4基をミスリル銀にセットし、あとの3基はアダマンタイトにセットして、マーメイド部隊によって深海で試してもらうことにした。

「これで、よし」

夕暮れ迫る蓬莱島で、仁は一仕事終えた充実感に浸っていた。

「さて、明日はマルシアの誕生日パーティーだな」

「ん、先延ばしにしてしまったし」

その上、ファミリーメンバーの幾人かは、地元で要職に就いているため、破片騒動の事後処理に追われていたりして、数日を要してしまったのだ。

「でも、ある意味いい気分転換にもなると思う」

「だな」

それは仁も同じ。

事後処理で毎日いろいろとやっていた分、友人たちと過ごす一時は格別である。

「楽しみだな」

「ん」

夕焼け空を見上げて、仁とエルザは微笑みあったのである。