軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34-20 騒動のあとに

『アドリアナ』は破片を回り、『コスモス』隊と大型 力場発生器(フォースジェネレーター) を回収していった。

破片はその速度により、かなり相互間距離が開いているので、全部を回るには時間が掛かる。

が、それに見合う利益もあった。

『この破片はほとんどが 魔結晶(マギクリスタル) なのですね』

などということもあったし、

『ほほう、質量が大きいと思ったら、まるまるアダマンタイト鉱石でしたか』

ということもあった。

石質隕石の5分の1ほどは酸化チタン、つまり軽銀の鉱石であったし、金や銀の鉱石も僅かながら見つかっていた。

『ですがやはり一番の収穫はこれですか』

1トン近い重さの『ミティアナイト』……『ユニバシウム』の鉱石であった。

『 御主人様(マイロード) が喜ばれますね』

蓬莱島の全ゴーレムと 魔導機(マギマシン) に『 整波器(コヒーレンサー) 』を取り付けても余る程の量である。

仁のモノ作り魂が刺激されること請け合いだ。

『さて、こちらの資源も回収しないといけませんね』

『コスモス』隊と大型 力場発生器(フォースジェネレーター) の回収を終えた『アドリアナ』は、第5惑星と第4惑星の間に集められた『中』『小』の破片へと向かった。

数は多いが、今度は『コスモス』500体が揃っている。分別の効率は桁違いによい。

『宝石の原石ですか。エルザ様が喜ばれそうですね』

『鉄、ニッケル系が見つかりましたか。これは嬉しい』

『銅鉱石ですね。これも役に立ちますね』

だが、ほとんど全ての金属素材もしくはその鉱石が見つかったというのに、一つだけ見つからない金属があった。

それはミスリル銀である。

他の金属と混ぜ合わせて『マギ』系合金を作ったり、ゴーレムや 自動人形(オートマタ) の魔導神経に使ったりと、魔法工学にはなくてはならない金属である。

そのミスリル銀だけがまだ見つかっていないのであった。

『まあ、見つからないのは仕方ないですね。今は、使った資材を補充することに務めましょう。『大聖』、頼みますよ』

『了解です、『老君』』

こうして、『大聖』と『老君』は協力して、消費した資材の充填に励むのであった。

* * *

「ジン兄、どう?」

仁は蓬莱島の研究所で、『ペガサス1』の整備を行っていた。

「うん、問題ないな。次は『コンロン3』だ」

宇宙空間で長時間酷使したが、何処にも異常は出ていなかったので、仁はほっとしている。

『 御主人様(マイロード) 、お一人で大丈夫ですか?』

仁は、今回参加したスカイ隊と航空機のチェックを一人で行っていたのだ。

「ああ、大丈夫だ。今回はみんなに無理をさせたからな。せめて診察だけは俺の手で行わないと」

仁の能力なら、ゴーレムを10体まとめて『 分析(アナライズ) 』できるとはいえ、大変な作業であることに変わりはない。

それを指摘しても、

「いいんだ、俺がやりたいんだから」

で済ませてしまう仁であった。

仁は仁なりに、今回の騒動で、蓬莱島勢に助けられたことを実感していたのである。

* * *

「そうか、実質被害はなし、か」

「はい、領主様」

ラインハルトの領地、カルツ村では、被害も怪我人も出なかったことに、ラインハルトは安堵していた。

「あなた、よかったですわね」

「ああ、ジンのおかげかな」

「いえ、それもですけど、領地を守ったのはあなたですわ」

「ベル……」

その時、赤ん坊の泣き声が聞こえた。

「あらあら、ユリちゃん、目を覚ましたんですのね」

お乳をやりにベルチェは小走りに部屋を出ていった。

残されたラインハルトは苦笑混じりに小さく溜め息をついたのであった。

* * *

「あっ、エルザおねーちゃん!」

「こんにちは、ハンナちゃん」

エルザは、仁の代理でカイナ村に来ていた。

「おにーちゃんは?」

「まだ手が放せなくて。私が一足先に、来た」

「ふうん、大変なんだね」

ちょっと残念そうなハンナであるが、仁の立場についての理解もあるので、それ以上愚痴ったりはしなかった。

「で、村はどうだった?」

「うん、なんともなかったよ!」

「よかった」

もっとも、カイナ村は『 庚申(こうしん) 』が安全を管理しており、いざとなればレーザー砲と 魔力砲(マギカノン) を駆使して破壊することもできたのであるが。

報告では聞いていたが、やはり自分の目で見て確かめたかったのである。

もちろん、仁もそうしたくて仕方がないのだが、どうにも手が放せないので、エルザがやって来たというわけだ。

「ジン兄は、多分、夕方になる」

「ふうん、ならいいか。おねーちゃん、見て! もう向こうの山に雪が降ったの。初雪だよ」

「あ、ほんと。綺麗」

彼方に見える高山……は1年中雪に覆われているので、ハンナが言うのはその手前の山々のことだ。

「今年は冬が早いのかな」

毎年の傾向を見ていれば、山に降る雪や、雪の溶け具合で気候の予想がつくようになる。

「でも、温泉があるもんね!」

冬は凍てつく寒さのカイナ村であったが、仁が温泉を掘ってからは、冬越しが随分と楽になっていたのだ。

「おや、エルザ。いらっしゃい」

マーサ宅の前でハンナと話し込んでいると、サリィが通り掛かった。

「あ、サリィ先生、こんにちは」

「往診ですか?」

養女のルウが鞄を手にしてお伴をし、村を回っているようなのでエルザはそう推測してみたが、正解だったようだ。

「まあね。この村はめったに病人は出ないけどね」

「そうですね」

「環境と食生活は大事だな。つくづくそう思うよ。治癒師は万能じゃない。患者が持つ治癒力を少し手助けしてやれるだけだ、とね」

名治癒師であるサリィにしては、少々卑下しすぎだとは思うエルザ。

「でも先生は……」

口を開きかけたエルザをサリィは制する。

「ああ、いいんだ。別に疲れているとか、そんなんじゃないから。ただな……」

「?」

「昨夜の星降りを眺めていたら、人間なんてちっぽけな存在だなあ、と思っただけだよ。だが、そんなちっぽけな人間が、私は好きなんだなあ」

今度は明るく笑ったサリィ。

「私も、そう思います。人は人。他のものにはなれません」

「うん、そうだね。……さて、それじゃあまた。ルウ、行こう」

無口なルウは無言でぺこりとお辞儀をして、歩き出したサリィのあとを足早に追いかけていった。

「ルウちゃんも、サリィ先生と村長さんの養女になって、毎日楽しそう」

2人の後ろ姿を見送りながらハンナが言った。

「わかるの?」

「うん、いつも笑顔だから」

「そう」

そろそろ日が傾き、風が冷たくなってきた。

「おーい、ハンナ、エルザ」

「あ、ジン兄」

二堂城の方から仁がやって来た。

「おにーちゃん!」

ハンナは仁の方へ向かって駆け出した。

そんなカイナ村の夕暮れ。

空は夕焼け、茜雲がたなびいていた。