軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34-18 その夜。2

『蓬莱島上空に3個の破片、接近』

『コンロン3』に乗るエドガーから連絡が入った。

蓬莱島は朝。破片の飛来方向は夜の側からである。

つまり、この破片はアルスの重力に囚われ、回り込んできたものだ。

『コンロン3』は宇宙船仕様。つまり、大気圏外での活動が可能。

今、『コンロン3』は10万メートルの上空で破片を迎撃していた。

『予想よりも少ないですね。これも、『偵察用宇宙船』が数を減らしてくれたおかげですね』

10隻の『偵察用宇宙船』は遙かな宇宙空間で破片『小』と『微小』を処理していたのだ。

『夜のエリアに入っている地域の方が蓬莱島よりも危険ですからね。スカイ隊には頑張ってもらわねば』

* * *

セルロア王国上空では、まばゆい火球が2つ、観測されていた。同時に、無数の流星も。

「おおお、火の玉だ!」

「星が降る、火の玉が降る。これでもこの世の終わりではないというのですか!」

「大丈夫だ。この程度は想定されている」

国王セザールは重臣達と空を見上げていた。

年配の者は恐れおののいているが、セザールは平然と立ち、空を見つめていた。

とはいえ、彼とて真に平然としていたわけではなく、心の中では恐れ、叫び出したくなるほどの感情を意志の力で抑え込んでいたのである。

(『崑崙君』、今はそなたに託すしかない……どうか、この世界を守ってくれ)

* * *

海上には3隻の戦艦と10隻の巡洋艦が展開している。

決して十分な数ではないが、地表……海に落下しそうな破片を狙い撃つにはなんとか間に合いそうである。

「『穂高』1番主砲、『転送砲モード』。仰角76度。発射!」

エリアス半島東200キロの海上に落下すると思われた破片が1つ、消えた。

「『妙高』1番主砲、『転送砲モード』。仰角82度。発射!」

蓬莱島と崑崙島の中間付近の海上で破片が1つ、消えた。

「『梓』主砲、『転送砲モード』。仰角89度。発射!」

エゲレア王国南方300キロの海上。破片が1つ、消えた。

「『淀』主砲、『転送砲モード』。仰角65度。発射!」

セルロア王国南方250キロの海上。破片がまた1つ、消えた。

「『浅間』1番主砲、『転送砲モード』。仰角45度。発射!」

パズデクスト大地峡東400キロの海上。破片が1つ、消えた。

「『桂』主砲、『転送砲モード』。仰角59度。発射!」

オノゴロ島南方180キロの海上。破片が1つ、消えた。

『順調ですね。放射能を帯びている可能性もあります。そういったものは太陽セランへ送り込んでしまいましょう』

一旦は蓬莱島北側の海岸に集積しているが、同時に強力な物理結界の中で選別もしている。

危険な微生物がいないか、また危険な放射線を発していないか。

もし見つかったら、蓬莱島の転送機で太陽セランへと送り込んでしまう予定だ。

幸い、これまではそういったものは見つかっていない。

『あと、3時間。今がピークですね』

* * *

「あれが破片ね。もの凄いスピードだわ」

月(ユニー) では、ミロウィーナが 魔導投影窓(マジックスクリーン) に映る破片を見つめていた。

「そしてあっちがジン君の『アドリアナ』ね」

月(ユニー) に向かってくるような破片はない。

あったとしてもそれらは『ジャック』が捕捉し、資材として確保するだろう。

「あと、2時間半……」

『アドリアナ』と破片『特大』が、アルスの軌道を横切っていった、その時。

「ああっ!?」

破片が分裂した。いや、『割れた』のである。

細長い形の石質隕石、それを強引に大型 力場発生器(フォースジェネレーター) で駆動していたのである。無理が祟ったものと思われる。

アルスの軌道を過ぎ、本体そのものの軌道に大きな影響はない。もう大型 力場発生器(フォースジェネレーター) は停止し、慣性で動いているだけだからだ。だが。

「細かい欠片が……」

割れた際に飛び散った欠片は、それぞれの固有速度を保っていた。

4分の1はほぼ元の軌道で飛び続けている。

だが、4分の3の欠片は、アルスを目指していた。

* * *

「『アドリアナ』で防ぐぞ!」

仁Dが指示を飛ばし、『大聖』は即座に反応した。

こういう時のために『 魔導防御盾(アイギス) 』を展開し、破片近くを飛んでいるのだ。

そしてその目論見どおり、欠片の大部分は 魔導防御盾(アイギス) で防ぐことができた。

だが、数個の欠片は防ぎきれずにアルスの方へと飛んでいく。

「老君、コースの割り出しを頼む!」

『はい、 御主人様(マイロード) 』

老君は即座に反応した。

『アドリアナ』からの映像で、欠片のコースをおおまかに算出。幸いなことに、その大半は住民がいないラシール大陸に落ちる。

が、危険な欠片が3個。

1つはミツホを目指し、1つはショウロ皇国西部へ。そしてもう1つは魔族領を目指していた。

『航空機はスカイラーク隊がラシール大陸方面を、ラプター隊が魔族領を処理しなさい。『コンロン3』はミツホへ、『ペガサス1』はショウロ皇国西部へ転送します』

一旦蓬莱島へ帰還させた『コンロン3』と『ペガサス1』を、老君は転送機でそれぞれの土地上空へと送った。

* * *

「『コンロン3』、これより迎え撃ちます」

操縦士のエドガーは、大気の断熱圧縮により赤く光りだした欠片を成層圏上空で迎え撃った。

「転送砲……発射!」

仁が作り、調整した照準機は今度も期待どおりに危険な欠片を宇宙へと送り帰したのである。

* * *

大気圏に突入して光り始めた欠片は、地上からは大火球となって見えた。

「あ、あれは!?」

「もう1つ月が生まれたみたい」

「だ、大丈夫なのか!? ……あっ」

「き、消えた!?」

「『ペガサス1』、欠片発見。転送砲、発射」

礼子の反応速度と『ペガサス1』の飛行速度、そして照準精度と転送砲の効果範囲の広さ。

これらのおかげで、ショウロ皇国西部に落下するはずの欠片は、成層圏内で捕捉され、転送処理されたのである。

* * *

「こちらスカイ101。欠片発見。スカイ102と共に転送砲で迎撃」

魔族領の上空、成層圏。 力場発生器(フォースジェネレーター) があるので、希薄な大気でも十分な運動性能を発揮できる。

欠片のそばにいたのはラプター51と52だった。2機はほぼ同時に転送砲を発射。

ラプター51の転送砲は外れたが、52の転送砲が命中し、欠片は消滅。

こうして危険は去ったのである。