軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34-17 その夜。

『アドリアナ』の中央艦橋で仁の 分身人形(ドッペル) 、仁Dは目を開いた。

『 御主人様(マイロード) 、ようこそ』

「大聖、状況は?」

管理頭脳『大聖』は、仁に現状を説明する。

『はい、予定どおりです。あと1時間したら『 魔導防御盾(アイギス) 』を展開予定です』

「よし。『破片』は?」

『『大』『中』『小』は無力化できたことを再確認しました。何かあるとすれば『極小』です』

「だろうなあ」

どうしても見落としが出るだろうと、仁は考えていた。

「偵察用宇宙船を使って最後の瞬間まで見つけ出す努力は続けよう。あとはアルスにいる部隊に任せるしかない」

『わかりました』

そして、1時間はあっという間に過ぎる。

「よし、『 魔導防御盾(アイギス) 』展開」

『はい』

『アドリアナ』は『 魔導防御盾(アイギス) 』を破片『特大』に向けて展開した。その背後には惑星アルスが。

時に、蓬莱島時刻で10月15日午前4時。

アルスから13万キロ離れた地点を通過する予定。影響があると考えられるのはその前後なので、およそ15分が勝負だ。

それと前後して他の破片も通過していく。広がりを考えて、これから6時間が踏ん張りどころと仁は判断した。

* * *

「おお」

そんな声が、ショウロ皇国の夜空に響いた。 宮城(きゅうじょう) に務める天文官である。

「星が降る……『崑崙君』の言ったとおりだ」

その夜は、女皇帝はじめ、重鎮たちは皆、夜通し起きて空を睨んでいたのである。もちろん、魔法による結界を張って。

暗い夜空に光の線を引いて星が降ってくる。

一つ、二つ、三つ……。それはたちまちのうちに数え切れない光の奔流となった。

「こ……これは……!」

「正に、聞いていなければこの世の終わりと思ったでしょうね」

「禍々しいまでに美しい眺めですね」

空の星が全部落ちてしまうのではないかと思わせるような光景。

首都ロイザート内では騎士たちが巡回し、たまたまこの光景を目にした住民がパニックに陥っていないかどうか、目を光らせていた。

「これは……わかってはいたが、すごいな……!」

ラインハルトは、領主の館『 蔦の館(ランケンハオス) 』の前に立ち、夜空を眺めていた。

「領内、異常なし!」

巡回させている兵士から報告が入ってくる。

事前に、これは星そのものが降るのではなく、星のかけらが夜空を彩るだけだ、と説明しておいたことが功を奏したようだ。

この夜、ショウロ皇国での怪我人は3名。

いずれも、流れ星を見上げながら歩いていて、転んだり川に落ちたりした者だったという。

* * *

同じ眺めは各地で見られていた。

セルロア王国。

「危険がないとわかっておれば、見事な眺めだな」

「御意」

フランツ王国。

「おお、これは……」

「美しい、というより怖ろしい眺めだな」

「ほ、本当に、この世の終わりではないのですね!?」

王も大臣も、こぞって夜空を見上げ、ある者は感嘆の、またある者は畏怖の混じった言葉を発していた。

エゲレア王国、首都アスント。

「うーん、これが星のかけらが放つ光だって?」

「ジン様はそう言ってらっしゃるようですね、殿下」

「あの一つ一つが、ほんの爪の先程のかけらだっていうんだからねえ。驚きだよ」

エゲレア王国、ブルーランド。

「ジンから聞いていなかったら逃げ出してたかもしれないわね」

「確かにな。どこへ逃げようと無駄なのに」

「でも、怖ろしくもあり、美しくもあり、という眺めですわね」

「そうだな。住民も皆、落ちついているようで何よりだ」

エリアス王国、ポトロック。

「すごい眺めだなあ、マルシア」

「本当だね、父さん」

流星の光が海に映り、世界中が光の粒で満たされたようにも見える。

それは荘厳な光景であった。

クライン王国、王城。

「うーむ、これが星のかけらが作り上げた風景というのか」

「そういうことですね、父上」

「確かに、いきなりこれが起きたら、この世の終わりと思うだろうことは想像に難くないな」

「ですが、事前に通達し、今も近衛騎士をはじめとする騎士や兵士が町を巡回しております。住民に騒ぎは見られません」

「うむ。『崑崙君』に感謝だな」

首都アルバン。

「隊長、こちらは異常ありません」

「うむ、事前に知らせてあったから、慌てているものはいないな」

「はい。窓から空を見上げている家は多いですが」

「まあ、そのくらいは仕方なかろうよ」

トカ村。

「領主様、本当に大丈夫なんで?」

「ええ、安心してください。『崑崙君』が守ってくれています」

「それならいいのですが……」

「ふふ、きっとお隣の村では空を見上げてこの風景を楽しんでいますよ」

* * *

「おばあちゃん、すっごい眺めだよ!」

「ほんとだねえ」

「流星嵐、っていうみたい」

「これをジンがなんとかしようとしているなんてねえ」

「まあ、ジンだしなあ」

カイナ村では、村人は皆、万が一の事を考えて二堂城に集まり、三々五々、夜空を見上げていた。

「これはおにーちゃんが危険じゃないと判断した、小っちゃい星のかけらが見せてくれてる風景なんだって」

「爪の先くらいだっけ?」

「うん。もっと大きいと、大気圏で燃え尽きずに地表にまで達する可能性があるから。そうすると被害が出るしね!」

「ハンナは頭がいいねえ。ジンのおかげだね」

「うん、ご本読むの大好き。……あっ!」

「おおっ!」

「すげえ!」

その時、一際大きな、『火球』と呼ばれる流星が夜空を斬り裂いたのだ。

一瞬であったが、その明るさは西に沈みつつある 月(ユニー) をも凌いでいた。

* * *

「今のは少し大きかったですね」

カイナ村の上空10万メートルでは、礼子が乗る『ペガサス1』が、『微小』な破片に混じっている、少し大きな破片に対処しているところだった。

大気圏で燃え尽きそうもないほど大きな破片を『転送砲』で狙い撃っているのだ。

「あと、5時間ほどですか」

それだけの時間、緊張し続けることは人間では到底無理だが、 自動人形(オートマタ) である礼子には何ほどのこともない。

仁の指示であり、その仁の第二の故郷であるカイナ村を守り抜くつもりの礼子であった。