軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34-03 発進!

翌10月5日。

ぐっすりと休んだ仁は、情報を整理することから始めた。

「老君、『ジャック』が『長周期惑星』……『モデヌ』に着陸させていた無人偵察機、だっけか? あれってどうなっている?」

衝突後は無事であるとは思えないが、直前までの情報を聞けたなら、何か役に立つのではと思ったのだ。

『はい、 御主人様(マイロード) 。ガス体の中での衝突でしたから、非常に不鮮明であやふやな情報しか得られておりません。それでもよろしいでしょうか?』

蓋然性が50パーセントそこそこなので、老君はあえて報告しなかった、と言った。

「ああ、それでもいい。聞かせてくれ」

『わかりました。……第5惑星ペンゴルタのガス体の中は、かなり特殊な構造だったようです』

「それは?」

『核が1つではないらしいのです』

「なんだって……」

『といいますか、中心に核があり、その周りを『衛星』が幾つか回っており、その周囲にガス体がある、そんな構造『らしい』のです』

「ううむ……」

『で、『モデヌ』は、その衛星の1つと衝突しました。衛星は砕け散り、自身の公転速度に『モデヌ』の速度を加えられて、ガス体から飛び出したのです』

「それが今回、アルスに向かってくる破片だというのか?」

『はい。ある意味、そうでなければ、破片の速度や軌道について説明が付きません』

仁はなるほど、と老君の推論に感心した。

「じゃあ、『モデヌ』が斜め上に飛んでいったのは?」

『もう一度、別の衛星と衝突したのではないかと思われます。そちらの衛星は砕けなかったか、砕けたまま変わらず核の周りを回っている、ということになります』

「なるほど……」

しかし、これが事実だとしても、仁がやろうとすることに変更はない。

『ですから、蓋然性が低いこともありまして、報告せずにいました。申し訳ございません』

「いや、それはいい。ご苦労さん」

仁は老君を労った。

「次は、各国への説明だな」

方針が決まった今、どのような副次効果が起こるか、ある程度は想像がつくようになったのでできることだ。

「『特大』『大』『中』までは何とか処理できても、『小』の一部と『極小』はわからない」

数が多すぎるのだ。

「そうなったら、どうなるか」

おそらく、昼間でも『流星』や『火球』が見られるのではないか。

仁は、2001年の『獅子座流星群』の夜のことを思い出した。

郊外の施設で、大勢の子供たちと一緒に、庭に敷いた毛布の上で寝転がって空を見上げたこと。

年少の子供たちは日付が変わる前には眠ってしまい、部屋に運んだが、年長の子供たちと仁は、一晩中空を見上げていた。

「あれは凄かったな……」

おそらく、あの時の何倍もの流星雨、いや『流星嵐』になるだろう。

そうなった場合、住民がパニックにならないよう、なんとかしなくてはならない。

それを、各国指導層に頼みたいのである。

「ラインハルトに頼んで陛下に説明して、それから各国に通達してもらうとするかな」

説明の仕方はラインハルトに任せよう、と仁は考えた。

その内容まで考えている時間はないからだ。

『わかった、任せておいてくれ』

魔素通信機(マナカム) によるやり取りの後、ラインハルトは快諾してくれた。

「ありがとう、ラインハルト。もし資料が必要なら、老君に相談してくれ」

『わかった、ジン。こんな形でも、役に立てて嬉しいよ』

* * *

そして、改めて仁はフル稼働に入った。

「転送銃をそのまま大きくするだけじゃなくて、 魔力素(マナ) の運用効率を上げるんだ」

『長周期惑星』改め『モデヌ』の破片対策である。

仁に最早迷いはなく、また、迷っている時間もない。

『できることを精一杯やる』という想いが、今の仁をつき動かしている。

『 御主人様(マイロード) 。大型 力場発生器(フォースジェネレーター) が完成しました。チェックお願いします』

「わかった」

* * *

前日、老君に指示を出していた大型 力場発生器(フォースジェネレーター) 。

物としては、宇宙船『アドリアナ』の推進装置と同じである。

『アドリアナ』はこれを200基装備している。

質量約1000万トンの『アドリアナ』を20G以上の加速度で飛ばせるエンジン。

直径1メートル、全長2メートル。重さは約500キロ、最大推力は、推定で100万重量トン。

現代日本の国産ロケット、『HーⅡB』の1万倍近い推力を持つ。

仁は、自分の持てる知識で計算してみようとした。

ニュートンの運動方程式、F=maに当てはめてみる。

仮に100基を据え付けたとして、推力は100万×100=1億重量トン。

力Fは1億重量トン=1×10の11乗重量キログラム=9.81×10の11乗 N(ニュートン) 。

「ええと、『特大』の破片の重さはどのくらいになるかな……」

破片『特大』の質量mは、1辺が10キロメートルの立方体で近似すると、比重を3として3×10の12乗トン=3×10の15乗キログラム。

よって加速度aはF/m=3.27×10のマイナス4乗メートル毎秒毎秒、となる。

これだけの加速度が5日間、120時間=43万2000秒間加わり続けるとどうなるか。

変位y=1/2at^2 なので、およそ3万キロメートル、となった。

「微妙だ……」

3万キロは、 月(ユニー) とアルスの距離、38万キロに比べたら、かなり近い。

そんな距離を巨大な質量が掠めたら、どんな天変地異が起きるか、想像も付かない。

少なくとも、 月(ユニー) と同程度の距離を確保したいところだ。

これは、破片『大』にもいえることである。

『大』の影響は『特大』よりは小さいと思われる。

そこで、『大』の質量mを『特大』の10分の1とするなら、大型 力場発生器(フォースジェネレーター) 20基は据え付けたいところである。

もっとも、それだけ大きい破片は2個くらいで、残りはもっと小さいため、数量は全部で300基はほしい、と仁は算出した。

* * *

そして、老君によって完成した1基目の大型 力場発生器(フォースジェネレーター) 。

「うん、問題ない」

礼子と共にチェックを終えた仁は、満足そうに頷いた。

「とりあえずこれを最低でも300基用意するんだ」

『わかりました』

老君と 職人(スミス) 部隊の全力を挙げて生産させようと仁は思っていた。

ここへきて、仁が一切手を抜かずに蓬莱島の生産力を強化したことが生きてくる。

老君と 職人(スミス) 部隊は、なんとか300基の大型 力場発生器(フォースジェネレーター) を完成させるのである。