軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33-15 仁、出動

「私は『ランス』と呼ばれている」

ランスはそう言いながら頭の後ろを、残った左腕で触る。

と、被っていたフルフェイスマスクが外れて落ちた。

「やはり『 自動人形(オートマタ) 』だったのですね」

マスクの下からは人間そっくりな顔が現れたのである。

「私は、私同様に『 製作主(クリエイター) 』に作られた仲間を取り返しに来たのだ」

「取り返しに……ってことは、奪われた、ってこと?」

「そのとおり。貴公らが『盗賊』と呼ぶあいつらの頭目に奪われた」

これで少し、背景がはっきりした。

「その盗賊って、いったい何者?」

「……今は話したくない」

どうやら、思考はエルザが思っていたより人間ぽいらしい。

「それで、これからどうするつもり?」

「何も出来ん。なにしろこの有様だからな」

左腕以外、まともに動かなくなっている状態では、確かにどうしようもないだろう。

「もし、動けたら?」

「そのような仮定に意味はないと思うが」

「それでも、聞かせて欲しい」

再度エルザに乞われ、ランスは不満そうに語り出した。

「当然、『ソード』と『グラー』を 製作主(クリエイター) の元へ持ち帰る」

その答えを聞いたエルザはしばし考え込んだ。

「エルザ?」

その様子を見たモーリッツは心配そうに尋ねる。

「……大丈夫、兄さま」

エルザは兄モーリッツを安心させるようにそう言うと、改めてランスに向き直った。

「もう少し情報を貰えるなら、貴方を直してもいい、と言ったらどうする?」

「ふむ、私を直してくれるというのか。……欲しい情報とは何だ?」

「貴方を作った人のことを教えてほしい」

「それは駄目だ。 製作主(クリエイター) の不利になるような情報は教えるわけにはいかない」

「……」

この点では、かなり頭が固いようである。それだけ忠誠度が高いとも言える。

エルザは、別の角度から話を持っていくことにした。

「向こうに、貴方が奪還しようとしたゴーレムがある。あれを解析すれば、貴方を作った人のことはわかる」

「う、確かにそうだ。だが、私がばらすのと、貴公らが情報を抜き出すのでは意味合いが異なる」

「……」

頭が固いのではなく、そうした情報を漏らすことが出来ないような命令がプログラムされているのかもしれない、とエルザは考えた。

「仕方がない。そうさせてもらう」

「できるなら、だがな」

少々不敵さを滲ませ、ランスはそう言うと、口を噤んだのである。

「ジュミ、ランド。しばらくの間、彼等を見張っていてもらえる?」

エルザは兄たちと相談をしたかったのだ。

「かしこまりました。お任せください」

ジュミが請け合ってくれたので、エルザはモーリッツとフリッツの袖を引き、一旦家の中へと戻った。

「どうした、エルザ?」

「兄さま、盗賊は何か喋った?」

「いや、何も喋らん。少々痛め付けなくてはならないかと考え始めていたところだ」

「そう」

「何か考えがあるのか?」

「うん。ええと……」

エルザは、ゴーレムの『 制御核(コントロールコア) 』を解析すれば、いろいろなことがわかるはず、と説明する。

「なるほど。それ、お前に出来るのか?」

「ん」

「そうか。それじゃあ頼むとするか」

「そうなると……」

エルザは一旦部屋に戻り、服を着替える。時刻は午前0時を少し回ったところ。

「もうジン兄、起きてる頃」

ここから先は、1人で処理しきれない内容になるだろうと、エルザは仁に連絡することにした。

何より、未知のゴーレムを解析する、という面白いことを連絡しなかったら、あとで恨まれてしまいそうだ。

『エルザ? 何かあったのか?』

早朝から連絡してきたエルザを、ちょっと心配する様な声。

「ん、実は……」

エルザは簡単に事情を説明した。

『わかった。すぐに行く』

仁の返事が帰って来て連絡が切れた。

* * *

「老君の言ったとおりだったな」

『恐れ入ります、 御主人様(マイロード) 』

実は、仁は既に起きていて、エルザの様子をハラハラしながら見守っていたのである。

「明け方に起こされたから何ごとがあったのかと思ったら、こういうことになっていたのか」

『報告が遅れましたこと、申し訳ございません』

「いや、それはいいんだ。エルザ自身が、どれだけ自分で出来るかやってみたいと思って行動していたんだろう? 老君はその意を汲んでやっただけだからな」

『ありがとうございます』

「でもさすがにこれ以上は……か」

仁は既に老君から一連の騒動について報告を受けていたのだった。

その上で、実家にいるエルザの意志を尊重し、出来るだけやりたいようにやらせてやろうと思っていたのだ。

併せて仁は、『 第5列(クインタ) 』からの報告も受けていたので、『ランス』についての背景も、わずかではあるがエルザより知っている。

「ラインハルトの所を経由して行くのは申し訳ないな」

まだショウロ皇国は真夜中である。

「『コンロン3』ごとショウロ皇国へ転移させて、ちょうど調査で近くにいたことにするか」

『あるいはロイザートにいたことにするか、ですね』

「そうだな。……礼子、行こう」

「はいっ!」

こうして仁は、『コンロン3』でショウロ皇国へと向かった。

* * *

「な、何だ!?」

夜空に浮かぶ飛行船を見て、モーリッツが驚いて声を上げた。

「兄貴、驚くことはない。あれは『崑崙君』の飛行船だ」

何度か目にする機会があったフリッツは、モーリッツほどには驚いていない。

「こんなに早く来るところを見ると、ロイザートにいたのかもな」

「なるほど」

そうこうするうちに『コンロン3』はランドル邸横の空き地に着陸した。

「ジン兄!」

到着を知ったエルザが駆け出して仁と礼子を出迎えた。

「エルザ、久しぶり」

「ん、会いたかった」

「『崑崙君』、ようこそ。夜中にお呼びだてして申し訳ない」

モーリッツが仁に挨拶をする。

「義兄上、気にしないで下さい」

「ジン殿、一別以来だ。よろしく頼む」

フリッツも仁に簡単な挨拶をした。

「ええ。……エルザ、早速だけど、そのゴーレムはどこだ?」

「こっち」

そこには 第5列(クインタ) の『ジュミ』はじめ、ランド783、784、785もいる。

「ご苦労さん」

仁は彼等を一言労うと、謎のゴーレムに歩み寄ったのだった。