軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33-16 解析、尋問

「これがそのゴーレムか」

仁は赤い目のゴーレム、『ソード』を見下ろしていた。

「+*&%・・<$=〜?>(!」

「何を言っているのかわからないな。一旦停止させるにも『 魔鍵語(キーワード) 』がわからないし……となると」

仁は礼子を顧みた。

「礼子、『 魔法無効器(マジックキャンセラー) 』を使ってみてくれ」

「はい、お父さま」

この魔導具は、 魔力素(マナ) を強制的に 自由魔力素(エーテル) に戻してしまうもの。その小型版が礼子の腕輪に仕込んであるのだ。

魔法無効器(マジックキャンセラー) には指向性がある。礼子は 魔法無効器(マジックキャンセラー) を『ソード』に向けて放った。

『ソード』の赤い目に灯っていた魔力の明かりが消える。それは礼子が 魔法無効器(マジックキャンセラー) を停止させても戻ることはなかった。

「よし、こいつも使っているのは 魔力貯蔵庫(マナタンク) だったようだな」

魔法無効器(マジックキャンセラー) により、 魔力貯蔵庫(マナタンク) 内の 魔力素(マナ) が 自由魔力素(エーテル) に戻ってしまえば、エネルギー切れで動作は停止する。

仁はゆっくりとゴーレムを調べることができるわけだ。

「ふうん、面白い構造だな。先代に似たところもあるが、全然違う箇所もある。エレナと似た部分もあるし……」

仁は『ソード』の外装を取り外しながら解析していった。

「お父さま、明かりはこれでよろしいですか?」

「ああ、大丈夫だ」

小さめの『 光の玉(ライトボール) 』が3つ、仁の手元を照らしている。

礼子は、分解・解析で手が放せない仁に代わり、明かりを確保しようと尋ねたのだ。

「それより、ここを抑えていてくれ」

「はい、お父さま」

「エルザ、ここをごらん」

そして仁はエルザを呼ぶ。

「これって……」

「珍しいな」

胸部の構造。

『シールド構造』になっていないのは当然として。

「肺にあたる部分に 魔力貯蔵庫(マナタンク) 、心臓にあたる部分に 魔力炉(マナドライバー) か……」

「可能な限り、人間に近く作った、ということ?」

「そうなるな」

脾臓や膵臓など、ゴーレムに無関係な臓器はないが、肝臓にあたる部分に非常用の 魔力貯蔵庫(マナタンク) があったり、腎臓にあたる部分に用途不明な 魔結晶(マギクリスタル) があったりと、拘りが感じられた。

「当然、 制御核(コントロールコア) は頭部だろうな」

頭蓋は前後に分割できるようになっていたので、開けて確認してみれば、予想どおりであった。

「よし、 制御核(コントロールコア) に 読み取り(デコンパイル) を掛けてみよう。礼子、読み取り結果を老君に転送しておいてくれ」

「わかりました」

「よし、やるぞ。……『 読み取り(デコンパイル) 』」

『 読み取り(デコンパイル) 』は、アドリアナ・バルボラ・ツェツィが若い頃に開発した工学魔法で、ゴーレムなどの 制御核(コントロールコア) に与えられた指示を「 魔導式(マギフォーミュラ) 」として読み取るものだ。

「ふんふん」

『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』である仁は、超高速で表示され、スクロールしていくそれを眺め、必要な情報を一瞬で読み取っていった。

「やっぱりジン兄は、すごい」

「慣れだよ。どうでもいい情報は見ずに、必要な情報だけを見ればいいんだ」

「それが、難しい」

とはいうものの、エルザもかなりの熟練度を見せており、最低限知りたかったことは読み取っていたのである。

「後は老君に纏めておいてもらおう」

読み取り(デコンパイル) が終わると、仁はもう1体のゴーレム、『グラー』の解析へと取りかかった。

「こっちも基本構造は同じか」

手早く情報の解析を終えた仁は、次の段階に取りかかる。

すなわち、製作者に関する調査である。

それに関しては 制御核(コントロールコア) からは読み取れなかったのだ。

手掛かりとしては、まず構造。

「ふうん……初めて見るな……かなりオリジナル性溢れる構造だ」

ボディを前後に分けると、背中側が硬く、腹側が比較的軟らかい構造となっている。

アドリアナ系の内骨格ではない。かといって、外骨格でもない。悪く言えば中途半端、よく言えばいいとこ取り。

「ジン兄、これって、どういうこと?」

「……多分だが、『作り易い』からじゃないか?」

「作り易い?」

「そうだ。この構造からすると、まず外骨格系の胴体背中側を作る。そこを基準に腕、脚、頭を取り付けていったんじゃないかな?」

「あっ……そうかも」

「腕も、内側は装甲がなく、外側だけある。『半外骨格』とでもいうのかな」

「要するに、背中側は硬く、お腹側は軟らかいということ?」

「だな。で、鎧を使って腹側を守っている」

「面白い」

これはこれで、理にかなった造りだと仁は思った。

余りよい例えではないが、自動車などで、基本フレームの上にエンジンやミッション、座席やハンドルなどを設置していき、最後にボディを載せるやり方と言えば少しはイメージが伝わるだろうか。

「だが、こんな作り方をする製作者は知らないな」

「お父さま、老君のデータベースにもないそうです」

「やはりな……と、すると、隠れ住んでいた技術者とか……か?」

先日の『流体金属』を用いたゴーレムを作るような技術を持つ技術者がいたくらいだから、他にいてもおかしくはない。

「盗賊が何か知っているかな?」

「なら、聞いてみよう」

そんな2人と1体を、モーリッツは少し離れて見つめている。

一方フリッツは盗賊の尋問を続けていた。

魔法を詠唱しようとしたら、いつでも掻き切れるよう、ナイフを喉にかざしながら。

「どうしても喋る気はないのか?」

「……」

「痛い目に合いたいんだな?」

「……」

「こいつ、強情な奴だな」

そこへ、仁とエルザ、礼子がやって来た。

「兄さま、ちょっとだけ任せて欲しい」

「うん? 何か手があるのか?」

「ある。でも……」

エルザはちらと仁の方を見てから再度口を開いた。

「ジン兄が、聞いてみたいことがあるって」

「わかった」

フリッツは少し横にずれ、仁を盗賊に向き合わせた。

同時に礼子が『 魔力妨害機(マギジャマー) 』を照射し、魔法の行使を妨害する。

「あのゴーレムはどこから盗んできた?」

この質問に、盗賊はわずかながら身体をびくっとさせた。

「反応はするようだな……ちょっと脅かしてやるか」

とある方法を思いついた仁は、礼子をちらっと見たあと、その役を 第5列(クインタ) のジュミに振ることにした。

「ジュミ、ちょっと」

「はい、チーフ」

「これをだな……」

仁は小声で何ごとか説明した。

「わかりました」

ジュミは仁の横に並んで立った。

「さて、もう一度聞く。素直に話した方がいいぞ」

そう諭す仁の横で、ジュミはこれ見よがしに盗賊が使っていたナイフの刃をくにゃり、と曲げて見せていた。

「!?」

二つ折りにした刃をもう一度二つ折りに。ジュミは笑いながらそれを行っている。

そしてもう一度、そのナイフを手で握ると、最早元の形がどうであったかわからない屑鉄がそこにはあった。

そんなジュミが、屑鉄となったナイフを捨て、盗賊の顔へと『笑いながら』手を伸ばす。

「ま、待て」

捕らえてから初めて、盗賊が口を開いた。