軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33-14 混迷

「く……くそっ!」

「おとなしくしろ」

組敷いた盗賊の腕を捻りあげたフリッツは、その腕をベルトで縛り上げ立たせると、モーリッツとエルザの所まで連れてくる。

「こいつを頼む」

使用人の1人がロープを持ってきて、盗賊を念入りに縛り上げ、猿轡も噛ませた。

フリッツは、

「これでまずはよし。次は向こうだな」

と呟いて、エドガーと『グラー』の戦闘に介入しようとした。

「待って、兄さま。……『 快復(ハイルング) 』」

エルザは、そんな兄に治癒魔法を掛ける。

先程までの戦闘で、フリッツは浅手ではあるものの、再度傷を負っていたのだ。

更に、

「フリッツ、これを使え」

モーリッツが、護身用に持っていたショートソードをフリッツに差し出した。

「兄貴、ありがたく借りておく」

やや細身ではあるが、短剣よりは攻撃力がある。

「兄さま、ちょっと待って。……『 強靱化(タフン) 』」

ショートソードを強靱化するエルザ。

「お、助かる」

「でも、エドガーの手助けするなら、魔法による補助の方がいいと、思う」

自動人形(オートマタ) とゴーレムの戦いは、人間の何倍もの反応速度を持つものだけに許された領域での戦いだ。

そこに生身の人間が介入する余地はない。

「……かもなあ」

そこでフリッツは、気絶させた盗賊たちを引っ 括(くく) ることにした。

使用人たちも手伝い、ロープで縛り上げ、魔法を使われないように猿轡も噛ませる。

エルザは、尋問の際には仁から『 魔力妨害機(マギジャマー) 』を借りてこよう、と密かに考えた。

一方、残る2組の戦いは熾烈さを増していた。

『ソード』と呼ばれる、赤い目のゴーレムと、それを抑えようとする青い目のゴーレム。

青い目のゴーレムは、今や満身創痍。

痛覚がないため、その点での行動阻害はないだろうが、身体機能はガタ落ちであろう。

右腕は既に肩から先が無くなっているし、左脚は脛の中央付近から曲がってしまっていた。

そしてついに、左脚が脛から折れてしまう。

「くっ、これまでか。残念だ」

地面に倒れ込む青い目のゴーレム。

『ソード』はそんなゴーレムを無視し、未だ戦いを繰り広げているエドガーと『グラー』の所へ向かった。

『グラー』は、片目の機能を喪失したことにより、エドガーの攻撃を半分以上その身に受けていた。

その結果、ちょうど青い目のゴーレムと同じようにその動作を鈍らせつつある。

『ソード』が参戦したのは、『グラー』の右肘にエドガーのナイフが刺さり、肘から先が動作不良を起こした、そんな瞬間だった。

「エドガー、気を付けて!」

だが、エルザの注意喚起も、ゴーレムの速度の前には遅きに失していた。

「うわっ!」

眼前の『グラー』に注意を集中していたエドガーは、『ソード』の回し蹴りで吹き飛ばされてしまう。

幸い、大きなダメージは負わなかったようだ。

「……2対1、ですか。これは、少々不利ですかね」

素早く立ち上がったエドガーは、エルザの方をちらりと見、製作者である彼女に危険が及ばない距離であることを確認すると、改めて2体のゴーレムに向き直った。

そんな2体の間に、『 落雷(サンダーボルト) 』が放たれた。

エルザからの要請でフリッツが放ったものだ。

「ありがとうございます」

その魔法により、2体は瞬時に距離を取った。1体は右へ、もう1体は左へと跳ぶ。

これで連係攻撃を仕掛けられる可能性が減った。

「まずは先に潰します!」

エドガーは2本目のナイフを抜き、動きの鈍っている『グラー』を相手取る。狙いは脚。膝関節だ。

そして、ナイフは見事に右膝の関節部に突き刺さる。金属の外装の隙間へ、見事に命中させたのである。

それにより、『グラー』の動きが目に見えて鈍くなる。これでエドガーは赤い目のゴーレム、『ソード』に集中できるわけだ。

観戦していたエルザも、ほっと胸を撫で下ろした。

が、更に事態は混沌の度合いを深めることになる。

「失礼致します、エルザ様」

「え、誰?」

不意に名前を呼ばれたエルザはきょろきょろと辺りを見回す。

と、その隣に1つの姿が現れる。

『 不可視化(インビジブル) 』を解いた、『蓬莱島 隠密機動部隊(SP) 』の『マロン』と『プラム』である。

今回、里帰りということで、エルザをずっと影ながら護衛していたのだ。

そしてその他の 自動人形(オートマタ) もいる。

第5列(クインタ) のデネブ22、通称ジュミである。そのジュミが代表として口を開いた。

「私はデネブ22、ジュミと申します。エルザ様のご意志を尊重し、できるだけ干渉しないようにとチーフから言われておりましたが、そろそろ状況が落ちついたようですので」

ジュミは一礼すると、これまでのことを簡潔に報告する。

「盗賊団を調査していたところ、謎のゴーレムと 自動人形(オートマタ) を発見、追跡してきたらこちらに辿り着きました」

「謎の 自動人形(オートマタ) ?」

今のところ、見かけたのはゴーレムだけである。

「はい、あれがそうです」

ジュミが指差したのは、動けなくなった青い目のゴーレムであった。

「『ランス』と言うようです。ゴーレムに見えるように擬装しています」

「……まだ状況がよく掴めない。この事態を収束させないと」

「わかりました。ここはエルザ様のご実家。速やかに収めます」

ジュミがそう言った直後、エドガーの横に3つの影が現れた。ランド783、784、785である。

「エドガー君」

「ランド隊、ですか!?」

「そうだ。エルザ様から、速やかに事態を収拾せよと仰せつかった。加勢する」

「ありがとうございます」

エドガー以上の能力を持つランド隊3体が加勢したのである。『ソード』も『グラー』も、あっという間に無力化された。

「気の毒ですが、話を聞かないので仕方ないですね」

2体とも両脚の膝から下を、両腕は肩から折られ、行動不能となったのである。

これでようやく、静けさが戻って来た。

事態をはっきりさせるため、盗賊、盗賊のゴーレム、そして『ランス』、と3つに分け、それぞれを尋問あるいは事情を聞くことにする。

「貴様等は最近ショウロ皇国内を荒らし回っている盗賊団だな?」

「……」

フリッツは盗賊たちの尋問を開始。

エルザは『ランス』という名らしいゴーレムにゆっくりと近付いていった。

エドガーとジュミが両脇を固め、 障壁(バリア) も張っている。

「貴方は『ランス』というの?」

「……そうだ」

「いったいこれはどういう事態なのか、説明して欲しい」

「話す必要はない」

『ランス』の返事はそっけない。

「それは違う。ここはランドル家の敷地。迷惑をかけられたからには、事情を聞く権利が、ある」

エルザが重ねて言うと、『ランス』はその言葉の意味を解したようだ。

「ふむ、一理ある。わかった。簡単に、でよければ説明しよう」

「お願い、する」

モーリッツは、こうした『 自動人形(オートマタ) 』との折衝など経験がないため、無言で妹を見守るだけであった。