軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-02 崑崙とブルーランド

崑崙島に飛んで、まず最初にしたことと言えば、 転移門(ワープゲート) の設置である。

「よし、あとはブルーランドにも対になる 転移門(ワープゲート) を設置だな」

「お父さま、それは私が」

仁がよし、と言うか言わないうちに、礼子は 転移門(ワープゲート) に飛び込み、一旦蓬莱へ戻る。

そして資材を持って蓬莱からブルーランドへ飛び、そこに崑崙と対になる 転移門(ワープゲート) を設置し、それを使って戻ってきた。

ここまでおよそ15分。礼子ならではの手際の良さだった。

移動準備が整ったので、仁はようやくこの崑崙島をゆっくり見て回ることが出来る。

案内はソレイユとルーナ。この2体が崑崙島の開発責任者であった。

「まずこの 転移門(ワープゲート) があるのは『館』の地下です」

石造りの地下室はそれなりに古びて見え、 古代遺物(アーティファクト) があってもおかしくない雰囲気を醸し出していた。

「扉を開けて階段を登ると1階、玄関ホールです」

青銅の扉は重く、緑青まで付けてあって、いかにも秘密の部屋の扉っぽい。この辺りは仁の知識と先代の知識の融合だろう。

玄関ホールは10メートル四方くらいの広さでやはり石造り。壁には壁画や難しそうな式が刻まれている。

よく見ると、5色ゴーレムの絵だったり、無難な 魔導式(マギフォーミュラ) だったりしているが、

「なんだ、これ」

そこには日本語で、とある詩が書かれていた。正確には歌詞。仁の頭の片隅に残っていた、5年ほど前に流行ったPOPSである。

「まあ、読める奴はいないからいいか」

深く考えず、次へ進む仁。

「奥の部屋が工房です。それなりに見えるようにしてみたのですがどうでしょう」

鉄床(かなとこ) 、 火床(ほど) 、ハンマーなどの 冶金(やきん) 道具。

ノコギリ、ノミ、カンナ、小刀などの木工道具。

部屋中央には大きくて重そうな作業台が。

いずれも年季が入っている(ように見える)。

棚には少々の 魔結晶(マギクリスタル) と色とりどりの 魔石(マギストーン) 。

別の棚には 地底蜘蛛(グランドスパイダー) の糸少々。

隣接した倉庫には銅、青銅、白銅、ニッケル、鉄、錫。そして 軽銀(ライトシルバー) 、ミスリル、少量のアダマンタイト。

蓬莱島の工房を模して、規模を小さくした様な感じである。

「うーん、これなら十分だな、ソレイユ、ルーナ、ご苦労さん」

そこで仁は、以前褒美にと作っておいた 守護指輪(ガードリング) を2人に与えた。

「ありがとうございます。大事にいたします」

2人とも喜んで受け取った。

1階には他に食堂、トイレ、浴室があり、これは最近作り直したという雰囲気に仕上がっている。因みにトイレは洋式。

排泄物は魔法を使って元素に分解してしまうので臭いもなく清潔だ。

風呂はなんと温泉。地下50メートルから汲み上げているという。風呂好きの仁にとっては嬉しい話だ。

余談だが、蓬莱島にもこの先温泉が掘削される。

食堂は広め。10人くらいは入れる大きさで、台所には仁作製のコンロが4基置いてある。もちろん冷蔵庫も。

水はポンプで汲み上げる。

「まあ、これで問題無さそうだな」

2階が生活空間になっているようだ。

「居住施設はこうなっております」

部屋は10畳間くらいのものが8部屋。うち2部屋には畳もどきが敷いてあり、仁と今は亡き師匠の部屋ということになっているそうだ。

正確には仁の部屋には押し入れが付いているので2畳分取られ、8畳である。

仁と 師匠(ダミー) の部屋は隣り合っていて、廊下を挟んで反対側の2部屋は書斎と納戸。

残る4部屋は洋間、床は板敷き、壁は石材。窓には白雲母がはめてある。ベッドとテーブル、椅子、作り付けのクローゼットがあり、どれも時代を感じさせるデザインだ。

というより、先代の時代に流行ったデザインなので、間違いなくアンティーク(もどき)と言えよう。

そのうち3部屋が客室で、最後の一部屋がゴーレムメイドの控え室となっている。客室側にはトイレもあった。

3階は屋根裏にあたり、倉庫となっている。

先代の時代には一般的だった魔導書の写しが数十冊置いてあったり、古めかしく見せたいかにも魔法使いというデザインのローブとかも置いてある。

極めつけは、蓬莱島から持ってきた、壊れた魔導具の部品。最早何に使われていたのかもわからないような物だけをチョイスしたようだ。

「うーん、俺が見てもいかにも昔から魔導士が暮らしていた家だな」

仁も感心した。

「それでは外です。一応の概略図は壁画として書いておきました」

先ほどの玄関ホールにあったらしいが仁は気が付いていなかった。

「どれどれ、ああ、これか」

仁の感覚では、崑崙島は伊豆七島の大島の半分くらいか。人が暮らすには十分である。だいたい円形をしている。

中心が崑崙山、この『館』は南山麓にある。

「島の東側と北側は森林です。西側は草原と荒れ地で、南側は草原と疎林、湿地ですね」

「そうすると西で資源とかの採掘出来そうか?」

「はい。ランド80から100に手伝わせて、採掘坑をいくつか掘り、実際に鉱物資源を掘り出しておきました」

なかなか手回しがいい。

「よし、お客の案内とかは2人に任せるから、その時は頼むぞ」

「了解しました」

* * *

「3ヵ月ぶりかな?」

今、ラインハルトとエルザは、ブルーランドにおける友人宅に来ていた。

「ああ、そのくらいになるかな、エリアス王国へ向けてここを発ったのは昨年末だったからな」

「ちょっと見ない間にエルザ嬢もますます綺麗になったな」

「お世辞はいい」

「いや、お世辞じゃないさ。なんとなく雰囲気が大人っぽくなったというか、深みが出たというか」

「褒めても何も出ない」

友人とはクズマ伯爵である。

どちらも砕けた口調で話している。2人は、同じ伯爵家であり歳も近かったので、2年前にラインハルトが外交官として初めてブルーランドを訪れて以来の友人であった。

「今度はゆっくり出来るのかい?」

「まあな。もう公務は全部終わったから、あとはのんびり祖国へ戻るだけさ」

そこへ侍女が果物を持ってやって来た。

「おお、来た来た。まあ、これでも食べてみてくれ」

そう言って伯爵は皿に載ったペルシカを勧める。

ラインハルトとエルザはそれを一口食べ驚く。

「冷たくて美味いな!」

「おいしい」

するとクズマ伯爵は得意そうに、

「だろう? 『冷蔵庫』で適度に冷やしたフルーツは格別さ」

と言った。ラインハルトはその『冷蔵庫』という単語に反応する。

「何? 『冷蔵庫』だって?」

「そうさ、君がここを発ってから手に入れた魔導具でね。やっとこのブルーランドに普及したばかりなんだ」

「この前、ボルジアで1台だけ見たよ」

「ほう、そうかね。目端の利く商人がいたのかな」

そこでクズマ伯爵は悪戯っぽく笑うと、

「実は、その『冷蔵庫』を作った 魔法工作士(マギクラフトマン) がいるんだよ」

ラインハルトは驚いた。エリアス王国の首都ボルジアの魔導具店で冷蔵庫を見つけた時、仁は自分が作ったと言っていたから。それで、

「ほう、会ってみたいものだな」

「そう言うだろうと思ったよ。君も 魔法工作士(マギクラフトマン) だからな。おい、呼んできてくれ」

そう言って伯爵は、そばにいた侍女に命じて 魔法工作士(マギクラフトマン) を呼びに行かせた。

ラインハルトは内心、どんな奴が来るのか楽しみであった。

仁と知り合ってからまだ1ヵ月も経っていないが、その人となりや才能はかなり理解したつもりである。

その仁が、自分が作った、と言ったその言葉を信じるなら、まもなくやってくる 魔法工作士(マギクラフトマン) はイカサマ師ということになる。

仁の名誉のためにもそいつの化けの皮を剥いでやろう、と心中密かに思うラインハルトであった。