軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-01 蓬莱島と崑崙島

仁と礼子は、ショウロ皇国貴族ラインハルトに招待されて共に馬車で旅を続けていた。

そして今、一行を乗せた馬車は城塞都市ブルーランドを間近に望むところまで来ている。

ここで仁がある提案をした。

「とりあえず家へ帰って、ラインハルト達を迎える準備をしてきたいんだが」

というわけである。

仁の家へ招待、という単語には、ラインハルトもエルザも乗り気で、二つ返事で承知した。

「それじゃあ、明日の朝、門の所へ迎えに行くよ。でも多分、2人しか一緒に来られないぞ」

執事のアドバーグや乳母のミーネ、護衛のヘルマンまで来られたら収拾が付かなくなりそうなので釘を刺しておくのは忘れない。

「ああ、かまわないさ、それじゃあ明日を楽しみにしてるぞ!」

「ジン君、またあした」

そんな軽い感じで仁と礼子はラインハルト一行と別れ、1時間ほど歩いてブルーランド郊外、森奥の洞窟に隠した 転移門(ワープゲート) へとやって来たのである。

「傷んでもいないし、誰かに侵入された形跡も無さそうだな」

隠蔽の結界と、仁の魔力パターン以外では解除できない結界の2つを張ってあるため小動物はもちろん偶然このあたりへやって来た人間にもばれることはない。

仁と礼子は難なく洞窟へと入り、 転移門(ワープゲート) へと足を運んだ。

* * *

一瞬で蓬莱島へ移動。懐かしい空気が仁を包む。

「お帰りなさいませ、お父さま、お姉さま」

「お帰りなさいませ、御主人様、お嬢様」

ソレイユとルーナ、そして5色ゴーレムメイド達が出迎えてくれていた。

仁がまずしたことと言えば、風呂に入ることだった。

馬車での移動に少し飽きていたし、何より、2日続けて風呂に入れなかったのである。

「あー、あったまる」

「お父さま、お疲れですか?」

礼子も一緒に浸かっていた。

「いや、疲れてはいないけど、やっぱり家はいいなあ」

「御主人様、報告させていただいてよろしいですか?」

時間節約のため、5色ゴーレムも浴室に呼び、報告を聞くことにしたのである。

蓬莱島の開発は順調。

道路整備、港の整備。果樹園やゴムの木の栽培、生け簀での魚の養殖。

石材の切り出しと保存、鉱物資源の採掘と分類、貯蔵。

そして 空軍(エアフォース) 、 海軍(ネイビー) 、 陸軍(アーミー) の報告。

スカイ達は、順調に地図を作っているようだ。

マリン達は、島の周囲に常時偵察艇を配備し、警戒している。

まあ、今のところ、羅針盤やコンパスが無いため、この世界の船は外洋には出て来ないのであるが。

そしてランド達は、蓬莱島と崑崙島の警備をしつつ、開発も手伝っていた。

「あー、こうなってくると、俺の居ない間の 頭脳(ブレーン) が欲しいなあ」

ソレイユやルーナでは今一つ心許ない。

そこで仁は、風呂から上がると、早速その考えを実行に移すことにした。

「 魔結晶(マギクリスタル) は全種類集めて、っと」

土、水、火、風、雷、光、闇、そして全属性と、8個の 魔結晶(マギクリスタル) を用意。

魔導基板(プレート) の中心に全属性の 魔結晶(マギクリスタル) を、そしてその周囲に残りの 魔結晶(マギクリスタル) を配置。

それぞれが全属性の 魔結晶(マギクリスタル) を介して、魔力を相互に循環できるような 魔導装置(マギデバイス) を組み上げた。

「よし、これを頭脳とする。エネルギー源として 魔素変換器(エーテルコンバーター) 、 魔力炉(マナドライバー) 、そして予備の 魔力貯蔵庫(マナタンク) 」

通常考えられるトラブルでは停止しないよう、安全策を施した。

「筐体はアダマンタイトとミスリルだ」

全体的に半球状のドーム構造にしてみた。大きさは半径50センチくらいだ。

SFで良くある、コンピューターの反乱みたいなことにならないよう、何重にも安全の 魔導式(マギフォーミュラ) を書き込む。

仁の魔力パターンを感知し、仁にのみ従うようにする。そして、仁だけが起動できる破壊装置も仕込んでおいた。

基本、この頭脳は他のゴーレム全ての上に立つ。

唯一の例外は礼子だけ。礼子とこの頭脳は同格とし、互いに暴走しないよう監視し合う。

力は礼子、知能はこの頭脳が上だ。

最後に、仁の持つ知識のほとんど、ソレイユとルーナ、プラネとサテラ、5色ゴーレムメイド、スカイ、マリン、ランド等、ゴーレム達の知識の全てを転写して、蓬莱島を管理するブレーン、名付けて『老子』が完成した。礼子の知識を転写しなかったのは先に書いた監視のためである。

「お父さま、『ローシ』というのはどういう意味ですか?」

「ああ、俺の元いた世界で、蓬莱とか崑崙に住むと言われた仙人の長だよ」

間違っている部分もあるが、まあ問題はそこではないから良しとしよう。

「『老子』起動」

仁が蓬莱の管理責任者として作った『老子』を起動した。

「 御主人様(マイロード) 、よろしくお願いいたします」

「よし、老子、不具合はないか?」

「はい、まったくありません」

「お前がこれからなすべき事はわかっているな?」

「はい、問題なく」

「よし、それならいい。定期的に報告をまとめておくように」

「了解しました」

こうして、仁に代わって蓬莱島と崑崙島の面倒を見る頭脳が誕生したのである。

「これで、留守にしていても安心だ。何かあったら『老子』にまず相談するように。そして俺には定期的に報告しろ」

「わかりました」

ゴーレム達が一斉に返事をした。

* * *

「お父さま、お願いがあります」

珍しく、礼子が仁に頼み事をしてきた。

「ん、何だ?」

「先日の『アルバス』騒動、あんなゴーレムに絶対負けないようにして下さい。そして、お父さまを絶対に攻撃できないようになりたいです」

「礼子……」

工学魔法により 制御核(コントロールコア) を書き換えられることを恐れて、自分が『アルバス』と直接対決出来なかったことを気にしているらしい。

「わかった、こっちへ来い」

それで仁は、研究所内の工房へ礼子を誘い、作業台に横たえた。

「よし、それじゃあ一旦止めるぞ」

「はい」

実は仁も、あの事件の時から対策を考えてはいたのである。

方法としては、まず第1に魔力シールド。

礼子を停止させた仁は、 制御核(コントロールコア) を外部からの魔力から守るため最高品質のミスリル銀でシールドすることにした。

シールド表面には 魔導式(マギフォーミュラ) を刻み込み、外部からの魔法を 自由魔力素(エーテル) に変換してしまえるようになっている。

第2に、魔力パターンによるプロテクト。

仁の魔力パターンでなければ書き換え出来ないように 魔導式(マギフォーミュラ) 、そして 魔導回路(マギサーキット) を構成し直す。これがなかなか大変であった。

「予備の 制御核(コントロールコア) も持たせようか」

第3として、メインが脱落してもバックアップした 制御核(コントロールコア) が引き継げるように改造する。メインの 制御核(コントロールコア) は今まで通り胸部に、予備は腹部に、と場所を変えておく。

「もう一つ安全装置を組み込むか」

それは一種のブレーカーのようなもの。仁の魔力パターンを持つ相手に対しての攻撃をしようとした場合に動作のための魔力を瞬時に切断する、ただそれだけの 魔導装置(マギデバイス) 。

『老子』にも似たようなものは組み込んである。ただしこれらは、『魔力を切断すること』が『仁の不利益になる場合』は『除く』という条件が付く。つまり、『魔力を切ってしまうと仁に何らかの不利益が生じると思われる時は切断しない』ということだ。

「さて、せっかくだから全体のメンテナンスしておくか」

礼子の体のチェックを行い、わずかでも傷んでいたり摩耗している箇所は修理、強化しておく。

更に 魔素変換器(エーテルコンバーター) と 魔力炉(マナドライバー) を再度調整。これにより効率が上がり、出力が1割アップした。

ついでに、ステルス機能とも言える 隠身(ハイド) 機能を追加する。気配遮断と魔力遮断、消音も組み合わせ、かの賊が使っていたものより数段高機能になっている。

名付けて 消身(ステルス) 機能。そのまんまである。

「よし、礼子、『起動』」

起き上がった礼子に、

「どうだ、調子は?」

「はい、いつもより身体が軽いくらいです。ありがとうございました、お父さま」

「そ、そうか、それは良かった」

実際には、追加した予備の 制御核(コントロールコア) や 魔導装置(マギデバイス) 、シールド用のミスリル銀等の分、体重が3キロほど重くなってしまったが、誤差範囲だろう。出力も増えてるし。

と、思って黙っていることにした仁であった。追加機能については説明したが。

* * *

礼子の改造も終え、

「さーて、崑崙はどうなっているかな?」

ソレイユの作った昼食を食べたあと、いよいよ客を迎えるための準備をしに崑崙島へ行くことにした。

「お父さま、 転移門(ワープゲート) の設定はどうしましょうか?」

ルーナが聞いてきた。今のままだと、ブルーランドから直接崑崙島へは飛べない。一旦研究所内に出ることとなる。それは望ましくない。

「そうだなあ……いっそ、ブルーランドにもう一基 転移門(ワープゲート) を設置して、そっちは直接崑崙島へ出るようにしておくか」

「そうですね。それがいいかと思います」

『老子』も賛成したので、必要な資材を持って崑崙島へ飛んだ。もちろん資材は礼子が抱えて。