軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31-05 親代わり

日が傾くまでエルメ川で遊んだ仁は、温泉で疲れを流し、改めて村長の家を訪れた。

因みにハンナは夕食を作るお手伝いということで同行していない。

つまりお伴は礼子だけだ。

その礼子は、本当に久々な『仁との2人きり』ということで上機嫌のようである。

あたりがまだ夕闇に包まれる前には、仁と礼子は村長宅前に到着していた。

ノックをするとすぐにギーベックが出てくる。

「おお、ジン。ようこそ」

昔と変わらず『ジン』と呼んでくれるギーベック。だからこそこの村は肩が凝らない、と仁は思う。

「昼間は留守にしていて済まなかったね」

「いえ、それはいいんです」

招き入れられた仁は、もうすぐ夕食時でもあるので、手短に要件を告げることにした。

「先日来話していました……その、エルザとの…………結婚披露宴、を、8月12日夜に行う予定と決めましたので知らせに」

それを聞いてギーベックの顔が綻んだ。

「おお、ついにか! これはめでたい!」

「ジン君、おめでとう」

「ありがとうございます」

奥から顔を出したサリィにもおめでとうを言われた仁は少し照れながら頭を下げた。

「ということで、夕方の5時から二堂城で宴会を行います」

「わかった。できるだけ全員顔を出せるように伝えよう」

「お願いします」

その時、サリィが何か思いついたようだ。

「そうだジン君、パレードはやらないのかい?」

「パレード……ですか?」

サリィは頷いた。

「そう。パレードさ。馬車か何かに乗って、村をゆっくり一周するんだよ」

「えええー! 恥ずかしいですよ!」

だがサリィは笑って仁に苦言を呈した。

「恥ずかしいなどと言ってはいかん。仮にも領主なのだから、こういう時にこそ領民に顔を見せて回らねばな」

「……そういうものですか?」

「そうとも」

この会話は礼子を通じて老君に伝わり、その老君は仁の知らない間に蓬莱島にある自動車を飾り付けてウエディング仕様に改造していくのである。

それはさておき、仁は頭を掻きながらもそれを諒承した。

「……でしたら夕方4時に二堂城を出て村をゆっくり回って戻るようにしますよ。で、5時から宴会でどうでしょう?」

「うんうん、いいと思うよ」

こうして、カイナ村における結婚披露宴の予定が決まったのであった。

* * *

「……そうかい、12日だね?」

「おにーちゃん、おめでとうございます!」

仁はマーサ宅でも報告を行っていた。

ハンナもマーサも祝福してくれる。

「それでなハンナ、そのあと俺は各国を回って挨拶してくるんだけど、それが全部済んだら『新婚旅行』に行くんだ」

「どこへ行くの?」

「大きな船で、南の島へ」

「うわあ、いいなあ! 行ってみたいなあ!」

仁はそう言うと思った、という顔でハンナに頷きかける。

「ああ、だからハンナも一緒に行こう」

「え? いいの?」

「ジン、いいのかい? エルザちゃんと水入らずの旅行の方がいいんじゃないかい?」

だが仁は笑ってそれを否定する。

「いえ、船も2隻出しますし、昼間は賑やかな方がいいですしね」

マーサはそれを聞いて納得した。

「そうかい、ジンがそう言うならいいけどね」

「マーサさんも来ますか?」

「え?」

「今は農閑期だし、帰るならいつでも帰れますから」

「ジン……まあ、ジンのいうことだからねえ……」

否定も肯定もしないマーサ。

仁は更に言葉を続ける。

「それじゃあその日が近付いたら迎えを寄越しますから。マーサさんは俺の……」

そこで一旦言葉を切った仁は、照れくさそうにその先を続ける。

「……親代わり、みたいな人ですから」

だが、それを聞いたマーサは怒り出した。

「ジン! ふざけちゃいけないよ!」

「は、はい。ごめんなさい」

「『みたいな』って何だい? 『みたいな』って? ……あたしじゃあんたの親にはなれないかもしれないけど、『親代わり』にはなれると思っているよ?」

「……」

「だからね、何も気にしなくていいよ。気を使ってくれなくていいんだよ? 子供が幸せになってくれるのを喜ばない親なんていないんだからね?」

マーサはそう言うと、立ち上がって仁の頭を撫でた。

「……はい、ありがとうございます」

仁は俯き、そっと涙をこぼした。頭に置かれたマーサの手は温かだった。

* * *

翌日の朝。

仁はトカ村を訪れようと思っていた。

そこで、『コンロン3』を呼んである。

午前9時、東の空に『コンロン3』が見えてきた。

村人は慣れっこになっており、『またジンの乗り物が飛んできた』くらいの反応ぶりだ。

空を見上げて一瞥すると、また仕事に戻る。

そんな住民を見ていると、やはりカイナ村は特別な村だ、と思わざるを得ない仁であった。

「ジン兄」

二堂城前に着陸した『コンロン3』からエルザが出てきた。

昨日、エルザはエルザで、ショウロ皇国の実家に披露宴の予定を伝えに行っていたのである。

「やあ、エルザ」

「……私の方は打ち合わせ通り。ジン兄は?」

「ああ、それがな……」

仁は、パレードをしろとサリィに言われたことをエルザに話した。

「……そう」

エルザは顔を赤らめたものの、仁ほど嫌そうにしてはいない。

そのあたりは、多少仁との差異があるのだろう。女性の感性というものもあるし、と仁は己を納得させた。

「あと、老君が用意してくれた参考書が中に積んである」

「おお、早いな」

昨夜連絡しておいた参考書。老君はすぐに用意してくれたようだ。

「よし、じゃあ行こうか」

「ん」

こうして、仁とエルザは『コンロン3』に乗り、トカ村を目指したのである。