作品タイトル不明
30-27 付いた決着
『 古き戦士(アルトクリーガー) 』が奥の手を出せば、『ファントム』もまた、妙技を見せた。
〈おおっと! 双方、さらに加速しましたあ!〉
〈素晴らしい戦いですね。まさに空前にして絶後です〉
司会と解説の声も上ずっている。
観客も拳を握り締め、手に汗を握り、声を限りに声援を送っていた。
「『ファントム』! そこだ! 行っけぇ!」
「『 古き戦士(アルトクリーガー) 』! 負けるな! やっちまえ!」
セルロア王国民の気質なのか、こうした戦闘シーンには血が騒ぐのだろう。
「陛下、まれに見る名勝負ですな」
セザール王の親衛隊隊長、カーク・アットも目を見張っている。
「うむ。引退したとはいえ、元『アルファ』のドナルドが作りしゴーレムと互角以上とは……」
「陛下、時代が変わりつつあるのでしょう」
「そうかも、知れぬな」
試合場では、その『 強靱化(タフン) 』を掛けた敷石をも粉砕する勢いで、2体の戦いが行われている。
『風』を纏って速度を上げている『ファントム』と、予備の 魔力貯蔵庫(マナタンク) を動員して出力を上げている『 古き戦士(アルトクリーガー) 』。
その戦いは互角に見えた。
が、戦いが長引けば長引くほど、『 古き戦士(アルトクリーガー) 』には不利である。
蓄えられた 魔力素(マナ) が尽きれば、その動きは鈍ってしまう。
一方、『ファントム』は、どのような動力源を持っているのか不明だが、まだまだそれは尽きる気配がなかった。
そして、均衡が崩れる。
予備の 魔力貯蔵庫(マナタンク) の備蓄が減ってきたのだろう、『 古き戦士(アルトクリーガー) 』は、わずかずつ動きが鈍くなってきた。
対する『ファントム』の動きは衰えない。
(うぬぬ、ジックスといったか、侮れない奴だ)
試合場脇で見つめるドナルド・カローの額に汗がにじんだ。
(在野にこのような技術者がまだ埋もれていたとは、世界は広いな……)
そんなドナルドの目の前で、ついに『 古き戦士(アルトクリーガー) 』の剣が弾かれ、がら空きになった胴に『ファントム』の一撃が炸裂した。
〈それまで! 41番『ファントム』の勝ち!!〉
耳を聾するほどの歓声が上がった。
〈激戦についに決着! 頂点に立ったのは41番『ファントム』でしたあっ!!〉
〈いやあ、これは歴史に残る名勝負でしたね!〉
司会と解説も、まだ興奮冷めやらぬ様子。
会場は万雷の拍手に包まれている。
* * *
「やっぱり『ファントム』が勝ったか……」
蓬莱島では、仁が独りごちていた。
「ドナルドの『 古き戦士(アルトクリーガー) 』もずば抜けた性能だったんだがなあ」
「それよりも上、ということは、『ファントム』、侮れない?」
「そうだな。……このあと、各賞を決めたりもするから、一旦『 分身人形(ドッペル) 』の操作をこっちでやるとするか」
『 御主人様(マイロード) 、わかりました』
* * *
優勝は41番『ファントム』。それは動かない。
これまでの総合得点は900点、ダントツの優勝だ。
2位『 古き戦士(アルトクリーガー) 』は740点、3位『ザーベラー』は500点となる。
それ以外にも、『努力賞』『技術賞』『敢闘賞』などがある。もちろん『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 賞』も。
それらの賞は、審査員や大会役員が相談して決めることになるのだ。
「自分としては、1番『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』に『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 賞』を贈りたく思います」
「ほう、『崑崙君』、それはなぜに?」
大会役員の1人が興味深そうに尋ねてきた。
「ええ。『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』は、限られたパワーソース……『 魔力貯蔵庫(マナタンク) 』の出力を、その都度瞬時に最適な配分に変更できるようですので、それを評価しました」
仁の説明を聞き、何人かが驚きを顔に表す。
「何と!」
「そんな機能が!」
「言われてみれば思い当たる節もあるが……見抜くとはさすが 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) ですなあ……」
こうして『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 賞』は1番『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』に与えられることとなった。
また、『努力賞』は35番『 鉄戦士(アイアンウォリアー) 』に、『技術賞』は2番『ザーベラー』に。
そして『敢闘賞』は16番『 蒼天の騎士(ブルーナイト) 』に贈られることになったのである。
* * *
「うーん、短かったが、見応えはあったな」
「ええ、有意義な一時でした」
観客席ではヴィヴィアンとルコールが話をしていた。
「それで、何かわかったことはあるかね?」
だが、ルコールの問いにヴィヴィアンは首を横に振った。
「いえ、私には何も。ですが、『語り部』としては、古の戦いに勝るとも劣らぬ試合を見ることができて満足です」
「そうか。それはよかった。ところで、聞いた話では優勝した41番だがな、飛び入り参加らしい」
「……とすると?」
少し声をひそめる2人。だが、周囲の歓声があるので、そこまでせずとも立ち聞きするような者はいないのだが。
(41番こそが、我々が追って来た 目的(ターゲット) ではないだろうか?)
(すると、ジックスがガンノ・アッシャーだと?)
(そうだ。……あるいはその協力者か)
(このあとどうします?)
(表彰式のあと、なんとか接触できないかと思っている)
(そうですね、そのタイミングしかないですねえ)
* * *
〈優勝、41番ジックス殿とそのゴーレム『ファントム』。おめでとう〉
「光栄です」
拍手の嵐の中、表彰式が行われた。
優勝者、準優勝者、入賞者の順である。
〈準優勝、40番ドナルド・カロー殿とそのゴーレム『 古き戦士(アルトクリーガー) 』。おめでとう〉
「ありがとうございます」
〈3位入賞、2番ヤルイダーレ殿とそのゴーレム、『ザーベラー』。惜しかったですね〉
「精進します」
〈 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 賞、1番エーリッヒ・ジフロ殿とそのゴーレム、『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』。お見事でした〉
「恐縮です」
〈努力賞……〉
〈技術賞……〉
〈敢闘賞……〉
一通りの表彰が終わると、セザール王からの祝辞が述べられた。
『……皆、優劣のつけがたい優秀なゴーレム揃いであった。この技術があれば我が国の将来は明るい。より一層の精進を望む』