作品タイトル不明
30-15 午前の結果
〈さあ、41番から、2度目の試技です〉
前回がさんざんだったので、観客もあまり期待はしていないようだった。だが、今度の動きは見違えるよう。
〈おおっ?〉
(おっ? ……やっぱりな)
司会者が驚いたような声を出し、観客も少しどよめいた。
仁は己の推測がほぼ的中していたことに満足を覚えている。
41番は見事なフォームで槍を投げ……。
〈すごい! 41番、60メートル先の的を通しました! 60点です!〉
(やっぱり、他のゴーレムたちの試技を見て学習したな)
もちろん、学習したことを実行に移せる身体能力を元々持っていることも前提になる。
その後、各ゴーレムは次々と槍を投げていく。
概ね、一回目よりもいい成績を上げている。
40番 古き戦士(アルトクリーガー) も60点を上げたし、35番 鉄戦士(アイアンウォリアー) も60点。
16番 蒼天の騎士(ブルーナイト) は40点だったが、2番ザーベラー、1番 鋼鉄騎士(シュタールリッター) は共に60点を上げた。
〈さあ、いよいよ最終試技となる3回目です!〉
〈41番が何を見せてくれるか、楽しみですね〉
41番はゆっくりと槍を構え、100メートル先の的を目掛けて槍を投げたのである。
〈これは! すごいすごいすごい! 飛んでいきます! 飛んで! 飛んで! 今! 入ったあっ! 100点です!〉
(うーん、やっぱり学習したな。こうしてみると、『学習能力』も飛び抜けているみたいだな)
例えば礼子がそうである。今まで使えなかった魔法も、一度近くで詠唱から発動まで観察できれば使えるようになるのだ。
これは、『 制御核(コントロールコア) 』の処理能力が相当高くないとできない芸当である。
(そう考えると、あの『ファントム』は今のゴーレムたちに比べて相当高い能力を持っていることになるな)
問題は、ジックスと名乗るあの男がそれをどうやって得たかだ、と仁は思っている。
自力でなのか、何か参考にしたのか、それとも……。
(あれが、ジダンとかいう研究者が盗まれたものという証拠はないんだよな)
ジダン自身が隠しているということもあって、一件は謎のままである。
仁がそんなことを考えている間にも競技は進んでいく。
〈40番も100点を取りました!〉
古き戦士(アルトクリーガー) も100メートルを狙い、見事に的を通した。
〈35番 鉄戦士(アイアンウォリアー) 、手堅く60点です!〉
手堅く得点を稼ぐもの、
〈26番、80メートルを狙い……残念、外しました!〉
高得点を狙い失敗するもの、と様々。
結局、
〈これで全ての試技が終了! 3回の試技のうち、より得点の高い2回を合計して順位を決めますので、結果は、40番ドナルド・カロー氏の 古き戦士(アルトクリーガー) と41番ジックス氏のファントムが共に160点で1位です!〉
となった。
〈3位は2番ヤルイダーレ氏のザーベラー、140点! 4位は1番エーリッヒ・ジフロ氏の 鋼鉄騎士(シュタールリッター) と35番ビルフォード氏の 鉄戦士(アイアンウォリアー) が同点の120点です〉
以下、29番タラブルバが100点、15番ロシニルが80点、16番タンバラン 蒼天の騎士(ブルーナイト) が60点と続く。
〈1位から5位までは入賞ポイントが加算されますので、順位が変動しますね〉
〈入賞することが重要だとわかりますね〉
ここまでの得点を累計すると、
1位は460点で41番ファントム。
2位は420点で40番 古き戦士(アルトクリーガー) 。
3位は320点で2番ザーベラー。
4位は240点で1番 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 。
5位は160点で35番 鉄戦士(アイアンウォリアー) 。
となる。
この時点で時刻は正午少し前、昼休みとなった。
午後の部開幕は13時半である。
* * *
「……と、いうわけだ」
『やはり目的がはっきりしませんね。推測の域を出ません』
仁は誰もいない控え室の隅で、老君と連絡を取っていた。
「あの鎧もだ。いったい何でできているのか……」
『サンプルがあればまた違うのでしょうけれど』
「そうなんだよな……」
だが、言っても仕方ないことである。
「それと、『ファントム』はおそらく、午後も引き続き動作データを集めるんだろうな」
『そうでしょうね。それをいつまで続けるつもりなのか、まだ見当がつきません』
「老君でもか……」
『はい。情報不足です。ただ、観客に危害が及ぶような行動をする可能性は低いです』
「そうか、少しは安心できるな」
『引き続き、監視を続けます』
「ああ。また連絡する」
そして仁は、人が来ないよう見張りをしてくれていた礼子とエルザを労い、3人で指定の食堂へ向かった。
そこは小さな応接室で、仁とエルザ、そして礼子だけでゆっくりと食事を摂ることができる部屋だった。
「セルロア王国の食事って、割合美味しいものが多い」
「だな」
ショウロ皇国と隣り合っているからか、味付けが口に合う、とエルザは言った。
その半面、フランツ王国やエゲレア王国とも国境を接しているため、多種多様な料理も出てくるのだ。
とはいえ、昼食なのでそれほど品数が多いわけではない。
「でも、このパンは美味しい」
「だな。水のせいかもしれないな」
口に合うことはいいことだ。
落ちついて食事のできる部屋だったこともあって、仁とエルザは出された昼食をきれいに平らげた。
「さて、午後の種目は何だっけな」
「確か、的当て」
「ああ、そうだったな」
「あの『ファントム』がどう出てくるか、楽しみでもあり、不気味でもある」
「かもな。……俺としては、あいつが着ている鎧の材質がわからないことが非常に気になるよ」
「……金属じゃない、のかも?」
「え? ……ああ、そうか。『 巨大百足(ギガントピーダー) 』みたいな生物の殻という可能性もあるのか。だがなあ……」
生体素材を使わない、という前提があるとしたならそれが崩れることになる、と仁は言った。
「……確かに……」
やはり、サンプルがないと結論は出せそうもなかった。
その後も仁たちは食後の お茶(テエエ) もゆっくりと楽しみ、午後の部開始の20分前に、ちょうど席に戻るセザール王と出会った。
「陛下、ちょっとお耳に入れておきたい話があります」
「ふむ、手短に頼む」
ちょうどそばに空いた部屋があったので、その中で話をすることにした。護衛のカーク・アット親衛隊隊長がドアの前に陣取る。
「『崑崙君』、何だね?」
「はい、実は……」
仁は、エゲレア王国で起きた、『警備ゴーレムを襲った謎のゴーレム事件』を話し、今回の『ファントム』がそれに酷似している、但し証拠はない、と結んだ。
それだけでセザール王は仁が言いたいことを察したようだ。
「わかった。今まで以上に気を付けよう。……カークも聞いていたな。手配を頼む」
「は、わかりました」
そして仁たちはそれぞれの席に戻ったのである。
時刻は13時30分、『 ゴーレム競技(ゴンペテイション) 』午後の部、開始である。