軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

05-19 崑崙島の状況報告と旅立ち

その夜、自室に戻った仁は、 魔素通信機(マナカム) を取り出して、蓬莱島にいるソレイユとルーナに連絡を取った。

出たのはルーナ。

「はい、こちら蓬莱島のルーナです」

「お、ルーナか、俺だ」

「はい、お父さま」

「どうだ、変わりはないか?」

「はい、全て順調です」

それを聞いて安心した仁は、崑崙島の様子を報告するように言った。

「はい、崑崙島ですが……」

ルーナによれば、崑崙島の状況は、

ダミーとしての『館』は完成。居住空間、工房、食堂、上下水も完備。それらしく古く見せかける加工も施した。

素材もいくらか運び込み、不自然でないようにしてある。

常駐しているのは5色ゴーレムの配下、トパズ100、アメズ100、ルビー100、アクア100、ペリド100の5体。

転移門(ワープゲート) も蓬莱への物が予備を含めて3系統設置済。

食料備蓄もそれなりに整えつつある。

元々あった果樹の利用も順調で、シトラン、アプルルはかなりの量が、ペルシカは少ないものの収穫可能。

鉱物資源も若干掘り出し、擬装済み。

「この短期間でよくやった」

仁はルーナ達を褒めた。

これなら、近いうちにラインハルト達を招くことになっても何とか誤魔化せるだろう。

「よし、あとは、そこに 古代遺物(アーティファクト) があってもおかしくないような擬装を施せるか?」

「はい、出来ると思います」

仁の知識を限定的とは言え転写してあるし、礼子の知識もいくらか転写してあるルーナとソレイユ、何とか曖昧な指示でもやってくれそうである。

「よし、頼んだぞ。俺も、可能なら近いうちに一度帰るから」

そう言って通信を切った。

ブルーランドへ立ち寄れば、隠してある 転移門(ワープゲート) を利用できる。

「これでなんとかなりそうだな」

一応懸案事項が片付き、安心した仁であった。

* * *

翌朝。

「それではエルザ嬢、お元気で。ジン殿、いろいろとありがとう。また会えるといいわね」

朝食後、フィレンツィアーノ侯爵に見送られ、仁とエルザは侯爵邸を発った。

向かうは北、エゲレア王国との国境である。

「ライ兄も来た」

エルザの声に外を見ると、ラインハルトの乗った馬車も合流してきた。

ラインハルトは外交官なので、王城内で挨拶してきたからである。

ラインハルトの護衛と使用人達を乗せた馬車が先頭、次がラインハルトの馬車、エルザと仁の馬車、エルザの護衛と使用人の馬車、一行の荷物を積んだ馬車、そして一行の食料を積んだ馬車、といった順で進んでいく。

「あー、またダンパーを作れなかった」

仁がぼやいた。

「ふふ、ジン君も意外とわすれんぼ」

くすり、と対面に座ったエルザが微笑んでそう言った。礼子はそんな仁にぴったりくっつき、

「おまかせ下さい、お父さま。もう2度とお父さまを不快な気分にさせたりしませんから」

と平常運転。

一行はゆっくりと国境へ向けて進んでいった。

* * *

首都ボルジアがあるのは標高300メートルほどの台地、そこからわずかに登り、デルフト峠を越えればあとは緩やかな下り道が続く。

そのデルフト峠を越えた所にあるメタロフ町で一泊した一行。

特に何事も無く一夜を過ごし、翌日は大半が下りとなる楽な行程。

北へ向かっているがその分標高も下がっているので、気候はあまり変わっていない。

「もうすぐ国境」

窓の外を見ながらエルザが言った。

その言葉通り、一行は半日で国境に辿り着く。

国境には魔導大戦時からの砦が建っており、その威容を誇らしげに聳え立たせている。

……とはいかない。

300年という歳月は、風化を石材にもたらし、風雨は苔を生じさせ、日射しは蔓をはびこらせた。

「なんというか、……遺跡だな」

仁の漏らした感想通り、砦は『遺跡』と呼ぶに相応しい佇まいを見せていた。

「でも、中は昔のまま」

エルザが補足した。

砦は国境守備隊に守られており、その隊長が直々に通行証を確認し、

「申し訳無いが、これも仕事なんでね」

そう言いながら、馬車の扉を開け、乗客も確認していった。

バレンティノ等、指名手配されている者が国境を抜けないかの警備も兼ねているからだ。

荷物まで確認した後、一行に問題なしと判断した隊長は部下に命じ、砦の扉を開けさせた。

重い音を立てて扉が開く。

厚さ50センチはある鉄の扉。表面には古い 魔導式(マギフォーミュラ) が描かれており、魔法耐性を有することがわかる。

「確かに、古くなっているのは見た目だけだ」

そんな感想を抱いた仁。

馬車は開いた扉を抜け、砦を通過していく。トンネル状の壁にも 魔導式(マギフォーミュラ) が刻まれていた。

「ふうん、かなり古い形式だが、効率は良さそうだ」

馬車の窓から眺めた仁がそう呟くと、

「ジン君、この壁の文字がわかるの?」

驚いた顔でエルザが聞いてきた。

仁がわかる、というと、エルザはさらに驚き、

「ここの壁の文字、ライ兄にも半分くらいしか読めなかったのに」

「ああ、そうかもな。古い形式だから。この形式からすると、多分1000年くらい前のものだ」

「え……」

絶句するエルザに仁は、

「ほら、俺の所には 古代遺物(アーティファクト) があったから。そういうことに詳しくもなるさ」

そう説明する。なんとかそれで納得したエルザは、

「やっぱりジン君はふしぎ。もっともっとあなたのこと知りたくなった」

そう言って仁を見つめたのである。

仁は気が付かなかったが、仁の隣にいる礼子は、そんなエルザを不機嫌そうな顔で睨んでいた。