軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30-05 変形動力

「仮に……」

エルザが口を開いた。

「ん?」

「仮に、ジン兄だったら、どんなものを試してみる?」

「俺だったら? ……それは、生体由来の素材を使わずに、ということでか?」

「うん」

「そうだなあ……」

しばし、沈思黙考する仁。エルザは邪魔しないよう口を閉ざし、自分も考えてみた。

「やっぱり、『 変形動力(フォームドライブ) 』かなあ」

「私も、そう思う」

魔法を使うことが大前提にあるので、その結論は順当である。

「でも、ジン兄、1つ、気になってることがある」

「何だい?」

「『 変形動力(フォームドライブ) 』のこと。あれって、確かジン兄が魔族領で……敵のゴーレムを動かしている方式に名付けた、でいい?」

「ああ、そうだったな」

「でも、先代は、『森羅』氏族のところで『 変形動力(フォームドライブ) 』と名付けよう、といっていた」

「あ」

そう、先代は1000年前に、『 変形動力(フォームドライブ) 』を『森羅』氏族のところで発見していたのである。

「確かに、記録にはそう書かれていたな……」

「でも、それって、ジン兄が『 変形動力(フォームドライブ) 』と名付けた方式と同一とは限らない、かも」

「なるほど……」

1000年という時間を挟んで、初代と2代目とが同じ名前『 変形動力(フォームドライブ) 』を付けたとはいうものの、内容が同じであるとは限らない。

エルザはそう言っているのである。

「それは、確かに……」

仁は考えてみる。地下で資源を採掘しているゴーレム、あれは仁が言う『 変形動力(フォームドライブ) 』ではなく、工学魔法『 変形(フォーミング) 』の延長線上にあるものだ。

メンテナンスフリーで、 自由魔力素(エーテル) がある限り動き続ける。

一方、仁が名付けた『 変形動力(フォームドライブ) 』は、『 変形(フォーミング) 』をベースにしながらも、動作に特化した魔法技術だった。

「……ああ、そうか」

仁は突然理解した。

「先代が『 変形動力(フォームドライブ) 』と名付けたそれは、地下で動いているゴーレムと同じものなんだ」

おそらくは、先代がそれを使って採掘用のゴーレムを作り上げたのだろうから。

「ステアリーナがクリスタルゴーレムに使っているのも先代が名付けた『 変形動力(フォームドライブ) 』だな」

「と、すると?」

「俺が名付けたものは、先代が名付けたものとは似て非なるもの、ということさ」

そう考えればすっきりする。

仁には、おそらくそれが最も真実に近いのだろう、という確信めいたものがあった。

「……ん、わかった」

エルザも納得してくれたようだ。

「でも、ジン兄。最初の質問の答えは、出てない」

「ああ、そうだな」

『 変形動力(フォームドライブ) 』を突き詰め、生体素材よりも優秀な結果を出せるか、という疑問。

仁はもう一度考えてみた。

「……まず、整理するため概念をはっきりさせよう」

『 変形動力(フォームドライブ) 』という名称は、先代に敬意を表し、蓬莱島の採掘用ゴーレムやステアリーナのクリスタルゴーレムを駆動している方式をそう呼ぶことと決める。

「じゃあ、『ゴルグ』が使っていた方式は?」

「……うーん、『 流体変形式動力(フルードフォームドライブ) 』かな……」

「流体変形式?」

「ああ。つまり、金属を固体ではなく仮想液状化してから『 変形(フォーミング) 』しているみたいだから、そう呼ぼうかと思ってさ」

そしてこれを切っ掛けに、仁も『 流体変形式動力(フルードフォームドライブ) 』に興味を持ったのであった。

* * *

エゲレア王国中南部の町、ホホド。

ここは、北にラアホ鉱山、東にブルーランドを望む、小さな町である。

鉱山が近いのでそれなりに賑わってはいるが、大きく発展するには至っていない。

それは、鉱山一帯を管理しているガラナ伯爵のせいである。

一言で言うと、かなりの搾取を行っているために人々の生活に潤いがないのだ。

それゆえ、町の雰囲気もかなり 荒(すさ) んでおり、ガラの悪い者も多く、中には犯罪者さえ紛れていた。

そんな中、『 懐古党(ノスタルギア) 』から派遣されてきた警備隊が、町中を見回るようになり、随分と治安はよくなっていた。

とはいえ、警備隊の全員が 懐古党(ノスタルギア) 党員というわけではない。

人数にも限りがあるため、最低1名が 懐古党(ノスタルギア) 党員で、残りは雇った者、という構成が多かった。

ここホホドでは、警備隊責任者が 懐古党(ノスタルギア) 党員で、6名が別の町で雇った者。

他に、警備用に3体の汎用ゴーレムが派遣されていた。

「今朝連絡が入った。ミダトーナ、ジーダゾ、ルブの町で、連続して荒くれ者が襲われ、重傷を負っているらしい。犯人は不明。気を付けるように」

早朝のミーティングで、責任者がメンバーを前にそう伝えた。

「町の位置を考えると、こちらへ近付いて来ていると考えられるからな」

「わかりました」

メンバーは、元兵士や兵士の経験者であり、それなりに腕は立つ。ミーティング後、担当部署に分かれ、2名一組で町へ。

1日3交代制、2人一組、1体の警備ゴーレムを帯同。これが彼等のスタイルであった。

「襲われたのが荒くれなら、あまり気にする必要もないんじゃないかなあ」

「まったくだ。だが、狙いがわからん以上、油断できないと思ったんだろうさ」

そんな会話をしながら、町を巡回する警備隊。

朝、昼……ホホドの町は平和だった。

そして夜が来た。

午後9時から午前5時までが夜担当の割り当て時間である。

「それじゃあ行ってくる」

「おう、行って来い」

これまで通りの夜が過ぎる……はずだった。

深夜、午前0時。月……ユニーは南中する。

「ん?」

町の入口に警備員を遮るようにして立つ2つの影。

1つは人間の、そしてもう1つはどう見てもゴーレムのものだ。

「……何か用か?」

朝のミーティングで聞いた話を思い出し、警戒する2人。

「人間に用はない。あるのはそっちのゴーレムだ」

「何? どういう意味だ?」

意味が分からず、聞き返す警備員だったが、その答えは予想外のものだった。

「こういうことさ。……かかれ!」

いきなり、男の連れたゴーレムが襲いかかってきたのである。

「何!?……ぐあっ!」

「げふっ!」

ゴーレムは警備隊2人を殴り飛ばし、警備隊のゴーレムに殴りかかっていった。

「な……何を……」

殴られたとはいえ、さほど力を込めてはいなかったようで、2人とも無事のようだ。

しかし、その衝撃はかなりのもので、意識ははっきりしているものの、しばらくは立ち上がれそうになく、警備ゴーレムと謎のゴーレムの戦いを見ていることしかできなかった。

警備隊員2人が危害を受けたため、警備ゴーレムは相手を敵性認定し、迎え撃つ。

謎のゴーレムは身長1.8メートルほどで、兵士が着るような 重鎧(じゅうよろい) を 纏(まと) っていた。

対して警備ゴーレムは身長2メートル。汎用とはいえ、ベースは 統一党(ユニファイラー) のゴーレムであるから、人間の5倍以上の力を持っていた。

だが。

「……なに!?」

驚愕の光景がそこに展開されたのである。