軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30-03 研究施設

過去の研究施設があった。

それこそ、ヴィヴィアンたちが探しているものである。

「……が?」

ルコールは、言葉を言い淀んだジダンに、先を促した。

「我々が見たときは、大半が散逸してしまっていたぞ……」

「なんと、そうだったのか……」

少し肩を落とすルコール。

考えてみれば当たり前かもしれない。人が訪れることのできる場所にあるのだから、保存されてる方がおかしいというものである。

「で、でも、何か残っているものはないのですか?」

食い下がるヴィヴィアン。ジダンは目を瞑り、思い出すように何ごとかを考えていたが、やがて口を開く。

「あるといえばあるが……」

「まずこの目で見てみたいです。因みに、その場所は?」

最も気になることである。

「この山を登っていった、その中腹だ。踏み跡が付いているからすぐわかる」

「ありがとうございます」

ヴィヴィアンは心浮き立つ思いであった。長い捜索の旅の果てにようやく情報を得られたのだから。

「ところで、その怪我はいったいどうしたのだ?」

ルコールは友人ゆえの質問をした。

「……」

ジダンは言い淀んでいたが、再三ルコールに尋ねられ、重い口を開いた。

「……恥ずかしながら、助手に裏切られたのだ」

「何?」

「2年前に雇った助手でな。ガンノ・アッシャーという、若い男だ。そいつに、研究の成果を盗まれてしまったのだ」

1度話し始めてしまえば、あとは堰を切ったように言葉が出てきた。

「なかなか有能な男だった。錬金術と魔法工学に詳しく、役に立ったのだが、未完成のゴーレムを盗んでいったのだ」

「ふむ、因みに、その未完成のゴーレムというのは?」

「今までにない型式だと自負している。特殊な構造なのだ。詳細は……話したくはない、な……」

いくら友人でも、 魔法工作士(マギクラフトマン) としての命ともいえる新機軸まで打ち明ける気はないらしい。

「わかった。いろいろ済まなかったな」

ここでヴィヴィアンは、荷物の中に仁からもらった非常用の『回復薬』が入っていることを思い出した。

これは、元々の効果を少し落としたもので、一般に見られても構わないレベルのもの。

これ以上の回復薬が必要なときは『仲間の腕輪』で連絡を入れれば、何らかのサポートが入ることになっている。

「お礼といっては何ですけど、薬を持っていますので、飲んでみて下さい」

手持ち3本のうち1本を差し出すヴィヴィアン。

「これは、済まないな」

ジダンは受け取ると早速飲んだ。疑うことを知らないのか、とヴィヴィアンは思ったが、渡した本人が言うのも何なので黙っていた。

「おお?」

飲むと、早速効き目が現れる。

効果を落としてあるとはいっても、上級『 全快(フェリーゲネーゼン) 』が中級『 快復(ハイルング) 』になっているだけ。

そして『 快復(ハイルング) 』は、骨折などの治癒に効果があるのだ。

さすがに、治癒魔法を直接患部にかけた時のような即効性はないが、今のジダンにとっては十分なものであった。

「……随分と楽になった気がする」

骨折特有の、じくじくした痛みが消えたのである。

脚の筋肉が衰えているので、すぐに歩き出すには無理があるが、それでもベッドから降りることはできそうなくらいまでは回復した。

介助用の 自動人形(オートマタ) がいるので、その点は心配なさそうだ。

「お嬢さん、ヴィヴィアンさんといわれたか、感謝する! ここら辺にはいい治癒師がいなくて困っていたところだ。1度治癒師を呼んだのだが、完治させることもできずに高い金を取ったしな」

「治ってよかったですよ」

「高価な薬だったのではないのか? もしそうであれば、費用は出してもいい」

ジダンの感激ぶりは相当なもので、それほどまでに劇的な効果があったようだ。

「旅に出るとき知り合いからもらったものなので、どういうものかはわかりません」

だが、ヴィヴィアンは無難な断り方を選んだ。それでジダンも引き下がってくれた。

「そうか、それは少し残念だ。入手先がわかれば、と思ったのだが」

確かに、こうした僻地住まいだと、薬は備えておきたくなるだろう。とはいえ、やたらとばらまいていい薬でもないことをヴィヴィアンも自覚している。

「済みません」

「いや、謝ってもらうほどのことではない」

ジダンは手を振って拘ってはいない、と言った。

「さて、それではその過去の施設とやらへ行ってみるか」

「そうですね」

本来の目的を遂行するため、ルコールとヴィヴィアンはジダンの小屋を辞することにした。

「2人とも気を付けてな。できれば帰りにも立ち寄ってくれ」

「ああ、そうさせてもらう」

ルコールはジダンに約束した。ヴィヴィアンも異存はない。

戻って来なかった場合、なにかあったと思ってもらえるというのはある意味心強いのである。

2人は山道を登っていった。

ジダンやその助手が通ったのであろう踏み跡がかすかに付いていて、迷う心配はない。

急な場所や岩場にはロープが張られていて、それを手掛かりに登ることができた。

そして2時間。

2人は崩れかけた廃墟の前に辿り着いたのである。

「ここが研究施設か」

「そうみたいですね」

半分は岩山をくり抜き、もう半分は石材を組んで作られたようだ。

その石材部分が崩れかけているが、丸太で簡単な補強がなされていた。ジダンたちが施したのであろう。

「これなら中に入っても大丈夫そうだな」

早速中を調査し始める2人。

確かに、中にはほとんど何も残っていない状態だったが、2人は技術者ではないから、ジダンとは着眼点が異なる。

例えば、何かが置いてあった跡を見ても、何らかの説は立てられるのだ。

「ふむふむ、この施設はおおよそ500年くらい前のものらしいな」

ルコールは、僅かに残された資料から、年代を推定した。

「500年前ですか! やはり謎の時代ですね」

「そうだな。来た甲斐があったというものだ」

さらに2人は調査を進めていく。

「……ここは何をしていた所か、わかりますか?」

ヴィヴィアンがルコールに質問をした。

「うむ、研究所、といったところだろうな」

「それには同意見です。しかも、個人所有だったのではと思います」

「ほう、なぜそう思うのかね?」

「ええ、これ、それにこれ、それからあちらに残った……」

このようにして、2人は断片的な情報を集め、パズルのように組み上げていったのである。

* * *

エゲレア王国南部の町、ジーダゾ。

鉱山のあるガラット山南の山裾にあってそれなりに賑わっている。

その分、ガラの悪い者も多く、治安も乱れている。

そんなジーダゾの町にやって来た2つの影があった。

「さて、この町なら目的に叶うだろう」

影の1つはそんな呟きを漏らすと、特に治安の悪い一角へと歩を進めていったのである。