軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30-02 旧友

「ジン兄、何か話があるって聞いたけど」

蓬莱島の司令室にエルザが顔を出した。

「ああ、わざわざ呼び出してすまないな。でも大事な話だからさ。まあ、座ってくれ」

「ん」

仁の横に腰掛けるエルザ。そもそも仁の正面は老君が制御している 魔導投影窓(マジックスクリーン) であるから仕方ない。

エルザが座ったタイミングを見計らい、仁は一気に言葉を口にした。

「話っていうのは結婚式についてだ」

「!?」

エルザは驚いたのだろう、声を出さずに口を開けたまま固まってしまった。

仁は構わず一気に畳み掛けるように話を続けた。

「俺の考えでは、ここ蓬莱島で『仁ファミリー』を呼んで式を挙げて、その後披露宴的な意味で各国を回ればいいんじゃないかと思っている」

「……」

エルザは、口は閉じたものの、今度は真っ赤になって俯いていた。

「……エルザ?」

「う、うん」

「もしかして、嫌、なのか?」

その問いに、エルザはふるふると首を横に振った。

「嫌、じゃない。……ただ、ちょっと、びっくり、しただけ」

「そ、そうか。それならよかったよ」

仁も、一気にまくし立ててから照れが襲ってきていた。

「……で、ど、どう思う?」

「……ん、いいと、思う」

「後は日取りなんだが、一応、ラインハルトに聞いてみてはあるんだ」

「ライ兄に?」

「ああ。日程を決めたら、1ヵ月以上の余裕を持って、各国に通知しろと言われた」

本来なら半年くらいの余裕を持ってもいいくらいの内容だとラインハルトは言っていた、と仁は苦笑しつつ話した。

「それは、そう。貴族はそういうもの」

エルザもそれには同意する。

ラインハルトの結婚式も、日程はともかく、挙式を行う話は外交官として旅に出る前には決まっていたはずだとも。

「急な話に見えても、ライ兄のお父さま方はあちらこちらに知らせてあった、と思う」

「なるほどな。まあ、わかるよ」

現代日本でも、結婚式の招待状を出すのは数ヵ月から半年くらい前である。

「ジン兄は型破りだから、まあ仕方ない、と思ってもらえるとは思う、けど」

「……そうか」

少しがっくりする仁であった。

「でも、婚約発表自体は半年前だから、最低限の体裁はとれている……と、思う」

本当に最低限ではあるが。

「……」

だが、エルザは仁に身を寄せてきた。

「でも……嬉しい」

* * *

「ここが、私の友人が住んでいる小屋だ」

緩やかな坂を、話ながら歩いて上っていくヴィヴィアンとルコール。手伝いの2人は別の場所へ行かせたので、2人だけだ。

「30年来の友人だが、人嫌いでな。片田舎に住んでばかりいるのだ」

ニカライの町から山の方へ15分ほど歩いたところに開けた平地があり、そこに小屋を建てて研究をしているという。

「その方は何と仰るのですか?」

「ああ、話していなかったか。ジダン・ケーシー。それが友人の名前だ」

「で、その方は何を研究しているのですか?」

「『ゴーレム』や『 自動人形(オートマタ) 』をだよ」

ルコールは考古学を、ジダンは魔法工学を学んだという。

「当時、セルロア王国の王都には学校があってね。いや、まだあるのかな? とにかく、そこで学んだ同期生20余名の中で一番仲がよかったというか、気が合ったのがジダン・ケーシーだった」

「はあ、でもいいですねえ、そういうのって」

ヴィヴィアンにも、幼馴染みで友人なら、ステアリーナがいる。なんとなく、ルコールの気持ちが分かる気がした。

「ほら、あそこだ」

指差す方を見ると、坂の上に1軒の小屋が見えた。いや、小屋というには少々立派である。普通の一軒家に近い小屋、といえばいいだろうか。

小屋が見えてから3分。2人はドアの前に立っていた。

呼び出しのノッカーを鳴らすと、1分ほどして顔を出したのは 自動人形(オートマタ) 。

中性的な顔立ちだ。体型も華奢である。

「どちらさまですか?」

「ルコールというものだが……」

「しょうしょうおまちください」

ルコールが名乗ると、 自動人形(オートマタ) は一旦引っ込んだ。

「あの 自動人形(オートマタ) はジダンの作だろうな」

待っている間、ルコールはヴィヴィアンに聞こえるように呟いた。

「そこそこ出来はよさそうだが……」

「ですねえ」

仁作の 自動人形(オートマタ) やゴーレムを見てきた身からすれば、まだ稚拙と評される出来だが、世間一般の標準に照らせば、十分上位に入るであろうレベルであった。

「あいつが目指していた 自動人形(オートマタ) はあんなものではないはずだが……そう、エレナのような……」

「エレナ?」

「あ……いや、エレナ、というのは昔見た 自動人形(オートマタ) だ。人間そっくりの、本当に素晴らしい 自動人形(オートマタ) だった」

ヴィヴィアン自身は『エレナ』……かつての『黄金の破壊姫』を見てはいないが、仁たちから話には聞いていた。

魔導大戦の少し前に作られた 自動人形(オートマタ) で、アドリアナ・バルボラ・ツェツィに対抗意識を燃やした製作者の遺志を受け継ぎ、アドリアナ系の 自動人形(オートマタ) を破壊し続けていた。

近年、『 統一党(ユニファイラー) 』を組織し、世界を牛耳ろうとしていたという 自動人形(オートマタ) である。

ルコールは、一時期そのエレナもしくは配下に洗脳され、 統一党(ユニファイラー) の手先になっていたのであった。

「ごしゅじんさまがおあいになるそうです。どうぞ。そちらのかたも」

先程の 自動人形(オートマタ) が戻って来て、2人を招き入れた。

さほど広くない小屋内だが、幾つかの部屋に区切られており、一番奥の部屋に2人は案内される。

「どうぞ」

促されて入った部屋の中にはベッドがあり、初老の男が1人横たわっていた。

「ルコールか。久しいな」

「ジダン、いったいどうしたというのだ、この有様は?」

ジダンは両脚を怪我しているようで、ベッドに寝たきりであった。

「……話せば長くなる。まずは腰掛けるといい。……そちらのお嬢さんは、奥さんかい?」

「え」

「ああ、違う違う。単なる仕事上の相棒だよ」

「……そうか。お前も変わらないようだな」

「当たり前だ。海の水が甘くならないのと同じように、な」

「違いない」

笑い合う2人を見て、本当に仲がいいのだな、と、蚊帳の外のヴィヴィアンは思った。

「……で、本当は何用なんだ?」

ひとしきり馬鹿話で盛り上がっていたが、目的は別にある。

ジダンに尋ねられたのを切っ掛けとして、ルコールは真面目な顔になった。

「今、我々は探し物をしている」

「探し物?」

「そうだ。魔導大戦前の記録だ。それがわかるような情報源を探している」

「ふむ、で、なぜここへ?」

その問いかけに、ルコールはヴィヴィアンの顔をちらりと見た。

ヴィヴィアンは自分から話せ、と言われているのだと察し、口を開く。

「はじめまして、私はヴィヴィアンといいます。語り部です」

自己紹介もしていなかったことに気付き、まずは挨拶を。

そして説明をしていく。

「ショウロ皇国に伝えられた伝承に、『南なる土地、そは山に囲まれ、東に大きなる町を持つ』という一節がありまして。それに該当する地形を当たってみて、ここではないかと思ったわけです」

その他にも、これまでのことや推測したことなども述べた。

「ふむ……」

少し考えてからジダンは口を開く。

その内容に2人は驚きを隠せなかった。

「確かに、この上の山に、過去の研究施設があったことは確かだ」