作品タイトル不明
29-26 ハンナの発見
「うーん、探し方が悪いのかなあ……」
時刻は現地時間で午前11時半。
少し早いが、気分転換のためにも昼食にすることにした。
もちろん、ランド隊たちはそのまま探索を続けることになる。
用意した昼食はサンドイッチだ。
玉子サラダ、トポポサラダ、ハム、ベーコンなどを挟んである。
飲み物は微炭酸のシトランジュース。後口がさっぱりする。
「ごちそうさまー」
食べ終わったハンナは、沖の方を見つめている。
「どうかしたのか、ハンナ?」
その様子が気になった仁は、ハンナに尋ねた。
「うん。……ねえ、おにーちゃん、あそこに見えるのって、島かな?」
「え?」
ハンナが指差す方を見ると、水平線の上にぽつりと島らしいものが見えた。
「礼子、どうだ?」
一行の中で最も目のいい礼子に仁は尋ねてみる。
「はい、お父さま。あれは、島ですね」
「そうか……」
アルスの曲率は地球より大きいので、水平線ギリギリに見えるということは10キロも離れていないということになる。
「スカイ、確認してきてくれ」
「わかりました」
そばにいたスカイ33がラプター3に乗り込み、飛び立った。
そして2分後、礼子を通じて報告が入る。
「お父さま、ごく小さいですがやはり島だそうです」
「そうか……」
それを聞いたハンナが仁に言った。
「ねえ、おにーちゃんたちが探している場所って、もしかしたらあの島じゃない?」
「何だって!?」
「だって、あの島、さっきの記念碑から見て真っ正面にあるんだよ?」
「え……」
仁はハンナの言葉を聞いて、改めて記念碑の所へ行ってみた。
「確かに……」
よくよく見ると、記念碑は真っ直ぐ海に向いているのではないようだ。
10度くらい北に向いており、その方向に先程見つけた島がある。
「なるほど、ハンナの言うとおりだ。あの島にシュウキ・ツェツィの記録が残されている可能性はあるな」
「ジン、行ってみるかい?」
サキが少し興奮気味に言う。どうやらサキも行ってみたいらしい。
「そうだな。『コンロン3』が着陸できる広い場所があるかどうかわからないから、『ファルコン』で行こう」
『ファルコン』は 垂直離着陸機(VTOL) である。最高速度時速300キロで10人乗り。こういう場面には滑走路のいらない小型 垂直離着陸機(VTOL) が向いている。
スカイ41が操縦する『ファルコン4』に、エドガーも含め、一行は乗り込んだ。『コンロン3』は一時的にスカイ隊が管理することになる。
『ファルコン4』をサポートするように、『ファルコン3』と『ファルコン5』も飛び立った。
数分で目的の島に到着。
予想どおり、平らな場所はほとんどなく、辛うじて島の北東側に着陸できそうな平地を見つけた。
慎重に降下する『ファルコン4』。
スカイ41の腕は確かで、『 力場発生器(フォースジェネレーター) 』も使わずに、衝撃もほとんどない完璧な着陸を行った。
「お父さま、まだ下りるのはお待ち下さい」
礼子が仁たちを止める。
「危険はないと思いますが、油断はできませんから」
「そうですとも。まずは私たちが様子を見てまいります」
そう言って、エドガーとアアルが『ファルコン4』を下りたのである。
上空から見た限りでは、動物類はいない。植物も、高い木は生えておらず、灌木と草だけである。
エドガーとアアルは、それぞれ右回りと左回りで島を回り込みながら確認を行っていく。
島の形はいびつな円形、1周3キロほどの小さな島である。
幻影結界の影響もあって、蓬莱島謹製の地図にも載っていなかった小島である。
エドガーとアアルが出会ったのは、島の西南西。エドガーの方が少し早かったようだ。
そこも海側は少し開けた平地となっている。ローレン大陸がよく見えた。
おそらくこのあたりは、海を挟んで、記念碑のある岬と相対している地点であろう。
「アアルさん、こちらには何もなかったのですが、そちらは?」
「はい、こちらにも何もありませんでした」
その時。
島側、つまり岩山奥から、2体の『 自動人形(オートマタ) 』が現れたのである。
「君たちは何者だ?」
1体は黒目黒髪の成人男性型。それが口を開いた。
「あなたたちは?」
「質問をしてるのはこちらです」
これはもう1体の、暗めの金髪をした成人女性型の言葉。
「私はエドガー」
「私はアアル」
「ほう、名前を持っているのですか。それは興味深い」
「それで、エドガーさんとアアルさんは何をしに来たのです?」
女性型が更なる質問をしてきた。
「我々はこの島に、『 賢者(マグス) 』の手掛かりがないかとやって来たのです」
「ふむ。岬の記念碑に気が付いたようだな。だが、興味本位でこの島を荒らすことは許せない。立ち去って貰いたい」
「え、でも……」
男性型 自動人形(オートマタ) はけんもほろろに2人を拒絶した。
「立ち去りなさい」
女性型 自動人形(オートマタ) も、とりつく島もない。
「……わかりました」
「エドガーさん!?」
「アアルさん、ここは引きましょう」
そう言ってエドガーはアアルが来た方向へと、つまり右回りに駆け出した。
そちらの方が仁たちのいる地点により近いからである。
「あ、待って下さい」
一拍遅れて、アアルもエドガーの後を追った。
* * *
「……と、いうわけです」
数分後、エドガーとアアルは仁に報告していた。
「ふうん、やっぱりこの島に『 賢者(マグス) 』の手掛かりがあるのは間違いなさそうだな」
「はい。争うのはまずいと思い、引き上げてきました」
「うん、それでいい。……それじゃあ、我々全員で行ってみようか」
礼子がそれをやんわりと押し止める。
「お父さま、危険ではないでしょうか?」
「ああ、だから必要以上には近付かないし、みんな『仲間の腕輪』を持っているから『 障壁(バリア) 』も張れる」
「でも……」
「それに、『 賢者(マグス) 』に関係ある 自動人形(オートマタ) なら、人間相手にそうそう過激なことはしないだろう。礼子もいるしな」
『 分身人形(ドッペル) 』を使うことも考えたのだが、『興味本位で』はないことを証明するためにも、自ら行かないと相手にして貰えないのでは、という考えがあった。
そして、それが先代の作った 自動人形(オートマタ) であるならなおのことだ。
「ですが……」
まだ礼子は納得しないようだ。
「わかったよ。それじゃあ、老君に言って、ランド隊10体くらいここへ回して貰おう」
「はい、それでしたら」
仁がどうしても『 賢者(マグス) 』の手掛かりを知りたいというのを知り、礼子も折れたのであった。