作品タイトル不明
29-25 海を見下ろす地で
ミツホからフソーへの旅をした際ハンナは同行しており、『 賢者(マグス) 』のことは知っていた。
だが、ミロウィーナと共に第2の遺跡を調べに行った時は同行していなかった。
それで仁は、ハンナの知らない情報をかいつまんで説明する。
「『 賢者(マグス) 』は小群国を横断して、旧レナード王国へ行ったんだよ。それで……」
「……伝染病で滅んだ村に唯一の生き残りだった女の子を養女に……」
「その子にも工学魔法を教えて……」
「それまでのことを記録した遺跡が旧レナード王国にあったんだ」
「ふうん。こんどは、その続きを探しに行くの?」
「ああ、そういうことになるな」
「面白そうだね!」
乗り気のハンナ。
仁はエルザ、礼子、ハンナと共に二堂城へ向かった。
「やあ、ジン」
「お早う、サキ」
そこにはサキが待っていた。
事前に連絡しておいたので、 転移門(ワープゲート) でやってきたのだ。
「あ、サキおねーちゃんだ!」
「ハンナちゃん、久しぶりだね」
ラインハルトは執務の都合で今回は来られなかった。後で結果を教えてほしい、とのこと。
ステアリーナとトアは、共にミツホへ行く準備中とのことだ。
近々、正式な国交が結ばれると言うことで、宰相がミツホへ赴く予定で、その際の随行員として2人も選ばれたのである。
ヴィヴィアンはショウロ皇国の伝承を集めるため飛び回っており、忙しいらしい。
そしてミロウィーナは今、ユニーに帰ってのんびりしている。
ということで、今回のメンバーは、仁、エルザ、ハンナ、サキ、礼子、エドガー、アアルとなる。
一行は『コンロン3』に乗り込んだ。今回もエドガーが操縦士である。
助手として『ポトス』と『ヒース』が乗り込んでいた。
「わあ、下がよく見える!」
「あれ? ジン、改造したんだ」
サキも感心していた。
「これはいいね。窓から見るよりよく見える」
「まあ、遠くを見る時は横の窓からがいいんだけどな」
「目的に応じて、だね」
そんな会話をしているうちに、『コンロン3』は旧レナード王国に入った。
カイナ村とは隣同士なので近いのだ。
旧レナード王国を覆う幻影結界の効果が無くなるように、地表からの高度30メートルくらいを保つ。
「それで、どこなんだい?」
「海岸沿いだと言っていたな」
調査を行っていたのは、ランド隊ではなくスカイ隊であった。
ランド隊は『世界会議』の方でいろいろと忙しかったからだ。
「ダース川より更に北にある海岸らしい」
「ふうん」
仁の言葉に、興味深そうに頷いたサキは、食い入るように床窓から地表を見つめていた。
「お父さま、間もなくのようです」
礼子が言った。どうやら、現地にスカイ隊が駐留しているようだ。
ランド隊に比べれば非力ではあるが、それでも一般的な戦闘用ゴーレムの5倍以上の力はある。
加えて、航空戦力として『ラプター』や『ファルコン』があるので、周囲からの脅威はまず問題ない。
そして5分後、『コンロン3』は海に面した岬の上に着陸していた。
海側は崖であるが、陸地側、平らな部分の広さは野球のグラウンド並にあるのでまったく危なげなく着陸できる。
そしてすぐそばには『ラプター3』と『ファルコン5』も着陸していた。『 不可視化(インビジブル) 』を解いて姿を現したのだ。
「お待ちしておりました、ご主人様」
スカイ30と31の2体が出迎えてくれた。
「ご苦労だった。それで、『 賢者(マグス) 』の手掛かりというのは?」
「はい、こちらです」
スカイ30は、海を見下ろす岬の突端へと仁たちを案内する。
礼子は万が一のことを考え、いつでも『 力場発生器(フォースジェネレーター) 』を起動できるよう身構えつつ、仁に従って歩いて行った。
「こちらです」
スカイ30が指し示したのは、海を望む岬の上に立っている自然石。
「……『シュウキ・ツェ*ィ終焉の地 娘ア**アナ記す……2*58年6*29日』……」
いくらか風化して読めない文字もあったが、『 強靱化(タフン) 』が掛けられているのだろう、1000年経っても石碑はしっかりとしていた。
「日付はおそらく2358年6月29日、だな」
そっと石碑に手を触れながら仁は呟いた。
「シュウキは……ここから海を見て、何を思っていたんだろう」
故郷である土佐の海を思い出していたのか、それとも時空の彼方にある故郷、日本を思っていたのだろうか、と仁は遙かな過去に思いを馳せた。
「でもこれは記念碑であって、お墓じゃ、ない」
エルザが小声で囁くように言った。
「それはいえるな。もし、彼についての記録が残されているなら、この付近だろう」
仁は記念碑の周囲を見回してみた。が、特に目に付くものはなかった。
「もし、記録が残されている場所があるなら地下だろうな」
周囲には建物は見あたらないからだ。
「だから地下を探索してみよう」
「わかりました」
スカイ30は即座に行動に移した。
「お父さま、老君に連絡して、ランド隊も派遣させたらいかがでしょう?」
世界会議が終了したので、ランド隊も手空きになったのである。
「そうだな、そうしよう。礼子、老君にそう言ってくれ」
「わかりました」
そして待つこと3分、ランド隊50体が転送されてきた。
「よし、やることはわかっているな?」
「はい、ご主人様」
50体の隊長であるランド51が仁に答礼し、彼等は散開した。
一方、ハンナは岬の上から海を眺めている。
もちろん、スカイ31が万が一のことがないようにそばに付いている。
サキもそばに居た。サキにはアアルが付いている。
「サキおねーちゃん、海が綺麗だね」
「そうだね、ハンナちゃん」
蓬莱島や崑崙島では、波は比較的穏やかである。
が、ここの海は、荒々しい波が打ち寄せてきていた。
それが珍しいのであろう、ハンナもサキも飽きずに海を見つめていた。
「『 地下探索(グランドサーチ) 』」
一方、ランド隊は地下を探査している。
仁と礼子も加わっての、52人態勢である。
繰り返される『 地下探索(グランドサーチ) 』。
しかし、2時間ほど探し回っても、それらしい空間は見つからなかったのである。