軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

29-27 辿り着いた場所

とはいうものの、仁自らが向かうことについては、礼子が強硬に反対したので、向かったのはエドガー・アアルとランド隊である。

話が付いたら連絡が入る予定だ。

仁たちの上空30メートルには2機のファルコンが浮かび、警戒している。

「そろそろランド隊は向こうに着いた頃かな」

「そうですね、彼等の速度ならそろそろでしょう」

待つだけというのは退屈である。

だが、退屈などと言っていられない事態が起きる。

「ここにいらっしゃいましたか」

仁、エルザ、ハンナ、サキ、礼子がいる場所に、2体の 自動人形(オートマタ) が現れたのである。

「おっ!?」

まさかこちらに現れると思っていなかった仁たちは不意を突かれた格好だ。

そして、この突然の出現は、どこかに 転移門(ワープゲート) か転移魔法陣があるのではないかと仁は推測した。

「……お父さまには指一本触れさせません」

礼子が仁たち、というより仁の前に立つ。上空のファルコン2機は、 光束(レーザー) 砲の照準を2体に合わせた。

が。

「……おお、やはり……!」

「……これは……!」

いきなり2体が仁たちの前に 跪(ひざまづ) いたのである。

「!?」

わけがわからない仁。しかし、その理由はすぐに判明する。

「アドリアナ様……」

「アドリアナ様……」

2体の 自動人形(オートマタ) は、仁の魔力パターンを感知した結果、アドリアナ・バルボラ・ツェツィと同じだったため、こうして『主人』として認めているのだろう、と仁は思った。

しかし、男性型 自動人形(オートマタ) は、微妙に仁とは違う方向を向いている。

それは、ハンナの方。

「ああ、やっぱり……」

そんな言葉を発したのは礼子であった。

「お父さま、ハンナちゃんは、お母さまのお若い頃にそっくりなのです」

それは前にも聞いていたが、旧レナード王国民のことを知った後では、また思うこともある。

もしかしたら、ハンナと先代の先祖は同じなのではないか、と。

そして、礼子はまた、2体の 自動人形(オートマタ) に歩み寄り、言葉を掛けていた。

「あなた方お2人は私のお兄さまとお姉さまですね」

礼子には、2体を作ったのがアドリアナ・バルボラ・ツェツィだとわかったのである。

「あなたは? ……あなたも……そうなのね」

女性型の 自動人形(オートマタ) が礼子の方を向いた。

「はい。わたくしは、アドリアナお母さま最後の作です。そして、お父さまに改良していただいて、今ここにいます」

「アドリアナ様最後の……そうだったのですか」

一方で、男性型 自動人形(オートマタ) は、ハンナと仁の前に 跪(ひざまづ) いたまま、顔だけを上げた。

「その魔力、アドリアナ様と同じ。そのお姿、アドリアナ様にそっくり。何も仰らずとも、それだけで十分です」

仁とハンナを交互に見て、そう告げた後、彼は立ち上がった。

「アドリアナ様、そして御尊父であらせられるシュウキ・ツェツィ様の遺されたものを引き継がれる資格があることは疑いようもないこと。この日を迎えることができて幸いでした」

「さあ、こちらへ」

「さあ、こちらへ」

2体の 自動人形(オートマタ) は、一行を手招きした。

ランド隊やエドガーたちは戻って来ていないが、礼子が一緒なのでそのまま付いていく仁たち。

既に仁にも、この2体が間違いなく先代の製作した 自動人形(オートマタ) であることはわかっている。

つまり、魔力パターンが同じである仁には、この2体を停止させることが可能なのだ。

ゆえに危険はないとわかっている。

現に、あの礼子が何も言わずに付き従っているのを見てもそれはわかろうというもの。

2体は、一行を島の岩陰へと案内した。

「おお……」

そこには見慣れた 魔導機(マギマシン) …… 転移門(ワープゲート) があったのである。

「ここから奥の間に行けます」

おそらく、先代の魔力パターンがあれば問題なく使えるもの。

『仲間の腕輪』があれば大丈夫だとは思うが、念のため仁はエルザとハンナの手を取った。

「サキ、悪いが礼子の手を取ってくれ。礼子、サキを頼む」

「わかりました」

「くふ、こんな時は独り身が恨めしいね」

そして 転移門(ワープゲート) を通過する一行。

「ふうむ……」

出たところは小広いホールだった。そこから、小さな通路が延びている。

「どうぞ、こちらです」

付いてくることが当たり前、という態度で、男性型 自動人形(オートマタ) は一行の先頭に立ち、通路へと向かった。

「そういえば、君たちの名前は?」

「私ども 自動人形(オートマタ) には、本来の意味での名前はありません。私は識別名M−012改めM−036」

「私はF−015改めF−036です」

「そういえば、昔はそうだったらしいな」

MはMale、FはFemaleの意味であろうか。シュウキの教えを受けたアドリアナなら使いそうな識別名だ、と仁は思った。

礼子にも本来の意味での名前はなかった。先代はおちび、と呼んでいたようだが。

アンやロル、レファなどという名前も、識別名として扱われていたようだ。

人形や人工物に、人間と同じ名前を付けることに何らかのタブーがあったのだろうか、と仁は想像してみる。

「着きました。こちらです」

さして広くない地下施設、仁が考えを巡らせているうちに目的の部屋に到着したようだ。

観音開きの扉を、2体の 自動人形(オートマタ) が左右それぞれを担当し、開いていった。

「さあ、お入り下さい」

2体に促され、まず仁が、次いで礼子が部屋に足を踏み入れた。エルザ、ハンナ、サキはその後だ。3人とも無言である。

すると暗かった部屋に明かりが灯る。

「自動……いや、違う。『自分』の魔力で灯るように作られているのか……さすがだな、先代は」

そして、内部の空気も澱んだりしていない。定期的な換気か、『 更新(リフレッシュ) 』のような魔法処理をしているのだろう。

「さすがお母さまです」

嬉しげな礼子。

そして、明るくなった部屋には、机が一つ。

「なんとなく、研究所の部屋を思い出すな」

もちろん、仁が先代から『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』を引き継いだ、あの部屋である。

そして、机の上には本が置かれていた。

「本は……シュウキ・ツェツィが書いたものかな?」

「どうぞ、お手に取ってごらん下さい」

仁は、本を手に取った。

表紙は黒い魔獣の革で、金色の文字が書かれている。

「この字は……やっぱりシュウキ・ツェツィの字だな」

そしてゆっくりと開いたのである。

* * *

『最近、体の不調が酷くなってきた。私もどこまで行けるかはわからない。だが、行けるところまでは行こうと思う。それが、妻アドリアナとの約束だから』

1ページ目に記されていたのはそんな文章だった。