軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

29-16 対凶魔海蛇

「迎え撃つのは海上部隊です」

『コンロン3』に乗り込んだ仁が説明をする。

「乗っているのは木造船『シャーク』です。材質はチーク。部分的に軽銀で補強しています。推進装置は『 水魔法推進器(アクアスラスター) 』」

「ほほう!」

「『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』が作ると船もああなるのか……」

「確かセルロア王国で目にしたような?」

「おおそうだ、あの時の船だ!」

「これは目が離せんな」

政務に携わる者、技術者、そして軍人。皆それぞれに興味を持って、眼下に繰り広げられようとしている戦いに目を奪われていた。

襲い来る 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) は5体。対して、迎え撃つ『シャーク』も11から15までの5隻である。

体長20メートルを超える 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) に対し、『シャーク』は全長10メートル、全幅4メートルだ。

「しかし、大丈夫なのかね……?」

誰かが心配そうな声を上げた、その時。

激戦の幕が切って落とされた。

* * *

今回『シャーク』に乗るのはマリン401から440までの 海軍(ネイビー) ゴーレム。普段は蓬莱島の警備に付いているが、世界会議に合わせて呼び寄せたものだ。

1隻につき8体が乗船しており、操縦、探査・警戒、通信、攻撃、防御をそれぞれ受け持っていた(攻撃と防御は2体ずつ)。

いくら仁が強化したとはいえ、基本的に木造船である『シャーク』は、正面からではなく、 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の側面へと回り込んだ。

『シャーク』の最高速度は 水魔法推進器(アクアスラスター) 使用で時速60キロ。 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の最高遊泳速度も同じくらいである。

だが、『シャーク』には、『 力場発生器(フォースジェネレーター) 』も搭載されている。これを使えば、時速100キロを超える速度も出すことができるのだ。

今回は見物人がいるため、 力場発生器(フォースジェネレーター) の使用は最小限に抑える。

すなわち、最高速度の1割アップと、緊急時の退避機動である。

上空から見ている限りはわからない程度の使用で済ませる予定だ。

5体の 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) は、それぞれ50メートルほどの間隔を空け、ほぼ横一列に並んで水面を泳いでいる。

5隻の『シャーク』は、それぞれが1体を受け持つべく、各自対象へと向かっていった。

『シャーク11』は 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の側面へと回り込み、小手調べとして『 水の槍(ウォータースピアー) 』を発射した。

『 水の槍(ウォータースピアー) 』は水属性魔法、中級の中。対象を貫くような水の槍を発射する。貫通力は小さいが速度が速いのが特徴である。

だが、水属性には耐性のある 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) は、その魔法をものともしない。

逆に、『シャーク11』目掛けてその 顎(あぎと) を開き、口から大量の水を吐き出した。水属性魔法中級の中、『 水の急流(ウォーターストリーム) 』である。

『シャーク11』は身軽な機動でそれをかわす。

そして、最早手加減無用と、『 水流の刃(ウォータージェット) 』を発射した。

かつて、エリアス王国はイオ島沖で仁が 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) を迎え撃った魔法だ。

無尽蔵にある海水を使った『 水流の刃(ウォータージェット) 』。魔力付加された超音速の水流は、 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) を真っ二つに斬り裂き、更にそれを半分に切り分けてしまった。

『シャーク12』は真正面から 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) に突っ込んでいった。いや、行くと見せかけ、手前20メートルで右へ転進。

だが、 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) はその長い体をくねらせ、『シャーク12』の動きに追従してきた。

とはいえ、時速60キロでの方向転換は、さしもの 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) といえども、全力を傾注せざるを得なかった。

その時に隙ができる。『シャーク12』は、水属性魔物の弱点である雷属性魔法上級の中、『 雷撃(サンダージャベリン) 』を放った。

1億ボルトの高電圧が 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) に直撃。なすすべもなく、 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) は海上にその長い体をさらした。

『シャーク13』は、いち早く発動した 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の『 水の奔流(ウォーターストローム) 』を受けた。

これは水属性魔法上級の下にあたり、並の船ならあっという間に押し流され、転覆してしまったであろう。

だが『シャーク13』は並の船ではない。

ほんの一瞬、『 力場発生器(フォースジェネレーター) 』を使って『シャーク13』は空中に浮かんだ。

その一瞬で『 水の奔流(ウォーターストローム) 』の激流の7割は通り過ぎてしまう。あとは、『シャーク13』の推進力で十分対処できた。

因みにこの浮遊は上空からでは見分けがつかなかった。

そして、『 水の奔流(ウォーターストローム) 』を放った後のタイムラグを狙い、まだ開いたままの口中目掛け、火属性魔法上級の上、『 炎の一撃(フレイムバスター) 』が放たれた。

その大火球は 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の頭部を吹き飛ばしたのである。

『シャーク14』は、最も小型の 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) が相手であった。

小型といっても、体長は20メートルに迫る。

凶魔海蛇(デス・シーサーペント) は、小型ゆえか、『シャーク14』が近付くと、身体をくねらせ始めた。

その起こす波はうねりとなり、『シャーク14』を翻弄する。魔法を使わずにこれだけの波を起こすのは、水属性の魔物だけのことはある。

だが、『シャーク14』も黙ってはいない。船が揺れ、相手がくねって狙いが付けづらい分は、範囲魔法『 雷の洗礼(サンダーレイン) 』を放つことでカバーした。

5000万ボルトの高電圧が身体をかすめ、 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の動きが一気に鈍くなった。

その隙を見逃さずに放たれる『 雷撃(サンダージャベリン) 』。 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) は永遠に動きを止めた。

『シャーク15』が対峙した 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) は、最も大型で、最も後方を泳いでいたのだが、仲間が皆倒されたのを見、恐れをなしたか水中に潜った。

そこで『シャーク15』からは、かつて仁が潜った 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) を海上へ浮上させた手を応用、発展させた魔法を使う。

すなわち、工学魔法『 音響探査(ソナー) 』を応用した無属性攻撃魔法、『 音響衝撃波(ソニックブーム) 』である。

これは空気中でも水中でも使用でき、かつ指向性を持たせることや、減衰特性を調整すること、範囲を指定することができる。

このあたりの海は透明度が高いので、50メートル程度潜ったくらいでは狙いを外すことなど有り得ない。

指向性を持ち、範囲を限定された音波兵器は、 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) の聴覚……外耳はなく、内耳だけだが……を強烈に刺激した。

その結果、 凶魔海蛇(デス・シーサーペント) は潜っていられなくなり、海上へと姿を現す。

それを待ち構えていた『シャーク15』は、『 水流の刃(ウォータージェット) 』でその頭を切り落としたのである。

* * *

「おお……」

「すごい……」

「お見事!」

床窓と舷側の窓に張り付くようにして下を見ていた観客たちは、一様に溜息を漏らした。

「さすが崑崙君だ……!」

「ねえ、あの『シャーク』って船、セルロア王国の建国記念式典の時に見せてもらった船よね?」

女皇帝が確認するかのように仁へ質問する。

「ええ、そうです」

「やっぱりね! 見かけだけじゃなく、性能も凄いのねえ」

「まったくですな。とても木造船とは思えない」

女皇帝に続き、デガウズ魔法技術相も賛嘆の言葉を口にした。

他の面々は、目にしてはいてもその後のごたごたで忘れていた者も多かったようだ。

「そういえば、あの時は老人型の 自動人形(オートマタ) と、青髪の 自動人形(オートマタ) ……『アン』が乗っていたわね」

女皇帝の記憶力はいい。セルロア王国の印象にも関わらず、仁が持ち込んだものは皆覚えていたらしい。

他の面々に至っては、今日になってようやく『アン』が 古代遺物(アーティファクト) 級の 自動人形(オートマタ) だと気が付いた者もいるのに、である。

それでも当時、アンが 古代遺物(アーティファクト) 級の 自動人形(オートマタ) だとは気付いていなかったのだが。

それも無理はない。 古代遺物(アーティファクト) 級の 自動人形(オートマタ) がそう沢山残っているとは思わないだろうからだ。

残っておらず、貴重だからこそ『 古代遺物(アーティファクト) 』の価値があるということもいえる。

「あの時は……まさか 古代遺物(アーティファクト) 級の 自動人形(オートマタ) を気軽に外に出しているとは思わなかったわ」

仁のことだから、青髪の 自動人形(オートマタ) を作ったのだと思っていた、と女皇帝は言う。

とはいえ今のアンは、仁が一から作り直した物で、形状と 制御核(コントロールコア) の記憶を引き継いでいるだけなのだが。

そしてゆっくりと着陸する『コンロン3』。

「いや、『崑崙君』、脱帽だ」

セルロア王セザールがそう言えば、

「まったくもって」

「マキナ殿と共に世界平和をお任せしたいものだ」

「貴公がいればこの世界も安心だ」

などと、追従半分に捉えたとしても、好意的な声が掛けられたのであった。