軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28-27 遺跡発見

6月が終わり、7月となった。

アルス暦では、夏の月すなわち6月、7月、8月の3ヵ月は『小の月』で、1ヵ月が29日しかないのである。

「大分暑くなってきたなあ」

朝起きた仁は窓を開けながら呟いた。

蓬莱島の周りは全部海であるから、1年を通じて湿度が高い。

とはいえ、研究所と家のあるあたりは標高が1000メートルくらいなので比較的過ごしやすいのだ。

「除湿器があった方がいいかな……」

などと呟きながら顔を洗う仁。

礼子が差し出してくれたタオルで顔を拭き、居間へ行くと、ミロウィーナも起きてきていた。

カイが付き添っているが、もうすっかり自分のことは自分でやれているようで、心なしかカイが寂しそうだった。

「おはよう、ジン君」

「おはようございます」

「おはよう、ジン兄」

そんな朝の挨拶にも、家族がいる幸せを噛みしめつつ、仁は食卓に座った。

朝がゆ、梅干し、漬け物、納豆、味噌汁、魚の干物という定番の組み合わせ。

納豆は苦心の末に再現できたもの。

ミロウィーナはこういう和食を、物珍しさではなく好んでいるので、単純に仁としても嬉しい。

思えば、仁の周りにはこうした献立を好む者が集まっている気がする。

「美味しいわね、この献立」

さすがに納豆菌は大丈夫だろうか、と思っていると、食べる寸前で滅菌されているようだ。

血は繋がっていないが、 母親(ミロウィーナ) 、 息子(仁) 、 嫁(エルザ) 、 孫(礼子) の家族団欒のようで、仁は嬉しかった。

「……で、地図によりますとこのあたりがそのカルナグではないかと思われます」

朝食後、旧レナード王国の地図を広げ、行き先を検討する仁たち。

「ああ、そうね。川が近いということなので、そこで間違いないんじゃないかしら」

ミロウィーナも裏付けてくれた。

旧首都ディアアよりも古い時代に首都だったというカルナグ。

そこには何があるのだろうか、と仁は少し楽しみであった。

「じゃあ、そこまで行く手段ですが……」

「コンロン3?」

エルザの質問に仁は首を振った。

「いや、いざという時の戦力が欲しいからな」

その返答にエルザは眉根を寄せた。

「いざという時があると、思ってる?」

「ないに越したことはないが、この前の暴走した魔導頭脳のこともあるからな」

「確かに」

「そうね、私も何があるのかまるきりわからないものね」

ミロウィーナも、あの魔導頭脳の件では少々困ってしまっていたのである。

結局、ランド隊とスカイ隊を連れて行くということで落ち着いた。

時差があるので、こうした打ち合わせが終わっても、まだ旧レナード王国には午前中の早い時間に着くことができる。

「では行ってくる」

『 御主人様(マイロード) 、行ってらっしゃいませ』

『コンロン3』を中心とした航空部隊が発進した。

転送機は使わず、地上の様子を見ながら向かうことになる。

「何度乗ってもいいわねえ」

上空から地上を眺めることが嬉しくて仕方ないミロウィーナであった。

* * *

前回とほぼ同じルートを飛び、旧レナード王国入り。

旧首都ディアアを越えて、更に西へ。

速度は時速30キロほど。

カルナグがどんな状態かわからないのでゆっくりと飛んでいるのだ。

「地図を作った時にも遺跡は発見できなかったからな」

おそらく上空からの観察では見えないのだろうと仁は考えている。

「植物に覆われているか、地下にあるのか」

独り言のように呟いていたら、ミロウィーナがそれを聞きつけたようだ。

今から1000年前の遺跡ということは、つまりレナード王国の者たちがユニーに移住した時点では770年くらい前、ということである。

「770年を耐えた遺跡が、それからの230年ちょっとで影も形もなくなってしまうわけないわよね」

「ええ、そうですね」

ミロウィーナの意見に仁も賛成である。

そんな話をしているうちに、カルナグ上空だ。

「ミロウィーナさん、あれがカルナグですよ」

「……」

眼下は見渡す限り緑の海……樹海であった。

「まずはランド隊に様子を調べさせよう」

仁の指示で、随伴してきたランド21から100までの80体が『ペリカン』から降下した。

上空には10機のラプター隊が哨戒している。

「報告を待ちましょう」

と仁は言って、礼子に軽食の準備をしてもらった。

時差の関係でこのあたりではまだ午前9時頃であるが、仁たちの体感ではもう午前11時過ぎ。

少しお腹が空いてきてもおかしくない時刻である。

今朝もいだばかりのペルシカとアプルルを食べる。カロリー、ビタミン、ミネラルもあり、十分お昼の代わりになるのだ。

「お父さま、ランド21から報告があります」

ちょうど食べ終えたタイミングで連絡が入った。

『ご主人様、ランド21です。遺跡らしきものを発見しました』

「お、よくやってくれた。……で?」

『今、映像を送ります』

ランドたちが見た映像を老君に送り、老君はそれを『コンロン3』の 魔導投影窓(マジックスクリーン) に転送できる。

直接『コンロン3』に送れないのは、仁がそういう機能を付けなかったからである。

老君経由でもタイムラグは0.5秒くらいなので実用上の問題はない。

「……うーん、これが遺跡、か……どう思います、ミロウィーナさん?」

映像を食い入るように見つめる仁の隣で、ミロウィーナは訝しげな顔をしていた。

「……聞いた話と違うわね」

ミロウィーナによると、赤い門が建っているはずだという。

しかし、遺跡と思われるものは崩れた城壁にしか見えない。

「完全に朽ちてしまったのかもしれませんね」

「そうなのかしらね……」

だが、その会話を聞いていた老君が、ランド隊に伝えたのだろう、朗報が入ってきた。

『ご主人様、仰る門らしきものが見つかりました』

指差すランド21。

それは崩れた城壁らしきところから少しだけ離れた場所だった。

「あら、門は折れてしまっていたのね」

ミロウィーナはそう言ってほっとした顔をした。

だが仁は、その折れた『門』を驚いた目で見つめるのだった。