軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28-26 ルーツ

「終わりました」

仁と礼子は穴から出ると、ミロウィーナに報告した。

「……ありがとう、ジン君」

レナード王国最後の1人として、ミロウィーナは仁に礼を言った。

「……行きましょうか」

「ええ」

地下の『頭脳』はボロボロになっており、仁でさえ再生できないほど。

『メッセンジャー』も、再び声を発することはなかった。

地上には光が溢れていた。

「ああ、明るいわ。光ってありがたいわね」

しみじみとした声音でミロウィーナが言った。

周囲にはランド隊が倒したギガアントなどの死骸がまだ転がっている。

そして、青い空からは、一時退避していた『コンロン3』がゆっくりと下降してきた。

それを見るともなしに見つめていたミロウィーナだったが、不意に口を開いた。

「ジン君、今思い出したんだけど、旧首都にも遺跡があったはずよ。記録で読んだ覚えがあるわ」

「旧首都……ですか」

「ええ、新首都はディアアだけど、旧首都は……ええと……そうそう、『カルナグ』といったかしらね」

旧首都カルナグ。その地名を聞いた老君は、過去に集めた情報の中に同じ地名があったことに気が付いた。

『 御主人様(マイロード) 、過去に得た情報が正しいとしますと、そちらディアアよりもう少し内陸、つまり西に寄った場所に『カルナグ』という地があります』

現在から見たら滅びた都市なので、どちらが本来の首都だったのか一時混乱していた、とも補足する。

「わかった。情報ありがとう」

仁はミロウィーナを見、

「行ってみましょうか?」

と尋ねた。ミロウィーナは頷く。

「そうね、気になるわね」

「わかりました。でも、ここの様子を見るに、その遺跡に何があるかわかりませんから、一旦蓬莱島へ帰って、準備を整えてから行きましょう」

「ん、ジン兄、それがいい。ミロウィーナさんも疲れたと、思う」

エルザも一旦帰ることに賛成したので、一同は『コンロン3』に乗り込み、蓬莱島へと帰ったのである。

* * *

「ここはいい所ね」

温泉から出てきたミロウィーナが、縁側に座り、上気した顔で呟いた。

「……カイナ村も素敵な村だったわね」

「そうでしょう? あそこはいい村です」

すると、ミロウィーナは、少し遠くを見つめながら、呟くように言った。

「ね、ジン君、これは確定じゃないし、私の想像なんだけど……」

「はい?」

「……カイナ村の人たちって、レナード王国民の血が入っているわ」

「えっ」

驚く仁に、ミロウィーナはふ、と笑って、

「だから、私の想像よ、想像」

そして先を続ける。

「あの疫病が流行ったとき、ユニー以外だと南へ逃げた人たちがほとんどだったけど、西へ逃げた人たちもいたはずだわ。山を越えて、ね」

山が疫病を防いでくれるかもしれないと思ったのではないか、と言うミロウィーナ。

「そしてあの土地に住み着いたのか、あるいはそこに住んでいた人たちと交わったのか、それはわからないけど」

カイナ村の人たちの大らかさを知っている仁はなんとなく、そこにいた人たちと交わったのではないか、と思った。

あの村は、文字どおりの異邦人である仁をも受け入れてくれたのだから。

だが、それを聞いて、カイナ村とトカ村がなんとなく違う感じを受けた理由がわかったような気がした。

カイナ村は、旧レナード王国の人々の血を引いていたのである。

一瞬、ミロウィーナを女王に戴き、カイナ村の人々を率いてレナード王国を再建する、などという妄想が頭を掠める。

が、すぐにそんな考えを振り払った。

ミロウィーナは女王にはならないとはっきり言ったし、カイナ村の人たちも移住は望んでいないだろう。

そして仁も、土地と住民全てを含めて、カイナ村という村が大好きだった。

だから、ミロウィーナの話も彼女の想像として胸の内に留め置いたのである。

* * *

夕食は仁の家で食べることにした。

ミロウィーナにはお粥、仁とエルザは白米のご飯。

それにアサリ(そっくりの貝)の味噌汁、梅干し、揚げ出し豆腐、イトポ(サツマイモ)の煮物。

「まあ、エルザさん、お料理上手ね。美味しいわ」

少量ずつとはいえ、ミロウィーナはにこにこしながら全部を食べてくれた。

「おそまつさまです」

食後のお茶はほうじ茶にした。

「ああ、いい香り。ここは別天地ね」

ミロウィーナに喜んでもらえ、仁も嬉しかった。

「ところでジン兄」

そんなとき、エルザが何ごとか思いついたようだ。

「どうした、エルザ?」

「腐敗というのは雑菌が繁殖する、でいい?」

「ああ、いいと思う」

仁が答えると、エルザは少し考えてから口を開いた。

「……なら、 滅菌結界(ステリライズバリア) の中のものって腐らない?」

「ん? ……だろうな」

するとエルザはにっこりと笑った。

「なら、この 滅菌結界(ステリライズバリア) の発生範囲を箱の中限定にすれば……」

「おお、中のものが腐らなくなるな!」

発酵食品や、ワインなどは味が変わる可能性があるが、生鮮食品には間違いなく有効である。

あと残るは化学変化だが、これは真空にしたり低温にすることで防げるだろう。

「リシアさんのジュース、これなら運べると思う」

「そうだな!」

滅菌結界(ステリライズバリア) の考えがひょんな所で役に立った。

「蓬莱島の保管庫にも機能を追加したら、いい」

これには老君が即反応した。

『承知致しました。早速取りかかりましょう』

これにより、野菜、果物、穀物などの保存期間が飛躍的に伸びることになる。

魔力庫(エーテルストッカー) と組み合わせれば、更に効果がありそうだ。

「エルザ、さすがだな」

「……ん」

仁に褒められて嬉しいエルザであった。

「ふふ、いいご夫婦なのね」

「え」

赤面する仁とエルザ。

「あらごめんなさい、まだご夫婦じゃなかったわね」

そう言ってころころと笑うミロウィーナと、照れる仁、それに赤くなったエルザを、空の月が静かに見下ろしていた。