軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

95:モーター教の洗礼と魔力持ち

(やられたわね)

一度レーヴル王国の城へ戻ろうと転移魔法を使ったが、魔力が乱れてまったく発動しない。この症状は、おそらく魔力封じの魔法をかけられているからだろう。

犯人はおそらくエペだ。

かけられた魔法を解除しようとしても、通常のものとは異なり、複雑な魔法がいくつも組み合わされていて、容易には解除できない仕組みになっている。

(解けなくはないけど、時間がかかりそう)

生い立ち故に知識に貪欲なエペは、もともと複雑でたちの悪い魔法を編み出すのが大得意だ。闇魔法は、そういった改変と相性がいい。

そして、今世ではエペの魔法技術がさらに磨かれている。

私が記憶を失っていた間も、彼はずっと魔法研究を積み重ねてきたのだ。

(前世よりも魔法の腕が上がっているわ。弟子の成長は喜ばしいけど、魔力を封じられると……正直言って困るわね)

しかも、聞き間違いでなければエペは私を「養う」と口にした。

意地でも私をここから帰さないつもりだろう。

(なんでそんな真似を?)

今世で再び出会うことができて、成長した彼を見られてとても嬉しかった。

強引なところはあるけれど、エペもグラシアルも大事な弟子で家族だったから。

(本当に泣いてしまいそうなくらい嬉しかったのよ。師匠として情けないから泣かないけど)

私は一人前に育った弟子たちを一人の独立した魔法使いとして、尊重して接するつもりだった。

それなのに、グラシアルは何故か私と結婚したがるし、エペは私を閉じ込めようとする。

必死になって、私を引き留めようとする理由は何なのか。

一人前になって独立した魔法使いは、師と離れて技を極めつつ、自分も弟子を迎えて育てるものだ。

師匠離れができないとか、そういう理由ではなく……もっと大きな何かに彼らが突き動かされているような、脅えて焦っているような、そんな空気が感じられる。

そしてそれこそが私の死に関係のある内容で……彼らがこちらへ転生してきた理由なのかもしれない。聞いても教えてくれないけれど。

魔力を封じられたことへの対処を考えつつ、私はエペの近況を尋ねる。私はまだ、今世の弟子たちのことをよく知らない。

抱きしめられたまま、私はエペに質問した。

「そういえば、あなたの名前は今世でもエペなの?」

「ああ、そうだ。今世の俺は孤児だったからな。また、ありがたいピンク兎の名前を使わせてもらった」

エペは子供の頃に私が兎の名前を付けたことを未だ根に持っている。

ピンク兎は傷薬の材料になる卵を産んでくれる、とても可愛らしい魔獣なのに。桃色でふわふわで、エペみたいな見た目だし。

「孤児だなんて。転生先は指定できなかったの?」

「余裕がなくて無理だったな、それができれば、お前をあんな家に生まれさせたりしない。俺の場合は孤児で助かった部分もあるぜ、モーター教の洗礼を回避できたからな。お前、あの儀式を見たか?」

「子供の頃だし、そのときは今の私ではなかったし……なんとなくしか覚えていないのよ」

ラムは何にも興味を持たない子供で、ただ両親の命令に従っていただけだった。

「あれはな、旧式の魔力封じだ。五百年前にお前やフィーニスが改良する以前の原型だから、封じ漏れも多い。元の魔力が高めのやつに使ったら、封じ漏れが起こりやすいんだ」

洗礼、魔力持ち、魔力封じ……エペの話を聞くと辻褄が合ってくる気がする。

「だから、洗礼を受けても魔力持ちになる子がいたのね。五百年前はもっと、魔法を使える人がいたものね」

「記憶が戻ったのが最近じゃ、現在の情勢にも疎いだろう。ずっと引きこもりだったらしいしな……俺が全部面倒を見てやるから安心しろ。この建物からは出さないが」

「それは無理なのよ。私は既婚者だし、家でもやる仕事があるし」

「アウローラ、お前の家はここだ。それから、既婚者だと言っても書類上の婚姻で、ヤッてねーだろ」

「ちょ、ちょっと、エペ! なんてことを言うの!」

「図星みたいだな」

ようやく私を抱きしめていた腕を解き、にやりと意地悪く笑うエペ。

「そんなことだろうと思った。ガキも養子だしな」

「それでも、彼らは今世の家族なのよ」

「お前の家族は俺だろ? まあとにかく、魔力が戻らないことには何もできないよな」

満足げなエペは暗い微笑みを浮かべ、私を部屋へ閉じ込めたまま、奥のベッドに寝転がってしまった。