軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

94:一番弟子の思い出4

アウローラは自分の死んだ理由を知らない。知らなくていい。

エペは彼女に真実を教えるつもりはなかった。

もらい事故のような仕事で、世界を守り散ったアウローラは、最後まで、どうしようもないお人好しだった。

宮廷魔法使いに頼りきりで、何もできずに騒いでいるだけの他の者共が鬱陶しかった。

奴らなんて、見捨てればよかったのに。

こんなことなら宮廷魔法使いなんて辞めさせて、誰もいない地へ連れて行って、一生閉じ込めておけば良かったのだ。

そうすれば、アウローラはあんなくだらない理由で死なずに済んだ。

魔法の衝撃で飛ばされ、地面に打ち付けられて激しく損傷したアウローラの体。

話すこともできず、ヒューヒューと荒い息ばかりが目立ち、エペの魔法での回復も追いつかない。エペ自身もアウローラの仕事に同行して魔法を使い続けていたこともあり、普段のような迅速な治癒魔法が困難になっていた。

「くそっ!」

そうしている間にも、アウローラの体はどんどん弱っていく。このままでは間に合わない。

フィーニスはもういない。

三人の弟子の力を合わせても、アウローラを元通りに戻すことは不可能だった。

なまじ魔法知識があるだけに、はっきりわかってしまう。

恐慌状態の二番弟子も、呆然とした顔の三番弟子も、アウローラの周りに集まった。

何もせずに看取ったりなどしてやるものか。

「グラシアル、魔力を貸せ。アウローラをこのまま死なせはしない」

少しでも抵抗したい気持ちは同じで、いつもは反抗的なグラシアルも黙って魔力を流してくる。三番弟子はまだ碌な魔法が使えないので無視だ。

禁忌と呼ばれる魔法でも、成功率が限りなく低くても、代償が大きすぎても構わない。

それでもエペはアウローラと共にありたかった――

転生の術式を用意して、アウローラを長らえさせながら高度な闇魔法を実行し、条件を付けながら仕上げていく。

最後に虫の息だったアウローラの胸を懐にあったナイフで深く刺した。

そして、続けざまに自分の喉も掻き切り、彼女のあとを追った。

その後のことは知らない、どうでもいい。

転生は成功した。今度は選択を間違えなければいいのだ。

エペの組んだ魔法の残滓を利用したのか、転生魔法を使えないグラシアルまで同時期に転生していたのは予想外だが、それでもアウローラは今、自分の手の内だ。

今度こそ大事に閉じ込め、彼女を危険から遠ざける。エペにはそれが可能なのだ。

「そういや、今世では俺が年上だな、アウローラ」

抱きしめられて驚くアウローラの動きを感じて笑いが漏れる。

だが、同時に異性として全く意識されていない現実が突き刺さる。これが普通の成人した男であるなら、アウローラは置物のように硬直するはずだから。

そうなる原因を作ったのは、アウローラに言い寄る男を徹底的に排除してきたエペたち三人の弟子の責任だが。

「エペは何歳になったの?」

「二十三歳だ」

若干声が弾むが、それは仕方がない。何しろ、拾われてからずっと子供扱いをされてきたのだから。

「私より三つも上なのね」

「そうだ。だから今世では安心して俺に養われるんだな」

アウローラは「それは困るわ」と言って、勝手に帰ろうと転移魔法を構築する。

しかし、魔力が乱れて魔法は実行されなかった。

それもそのはず、転移の際にエペはアウローラに魔力封じの魔法をかけていたのだ。

わざと通常の魔力封じよりも複雑な魔法にしたので、いくらアウローラでも解くのに時間がかかるだろう。

魔法が解ける頃には、また別の魔力封じをかけ直せばいい。

そうすれば、アウローラは一生帰れない。実によい考えだと思った。

これで、もうアウローラはあんな結末を迎えずに済むのだから。