軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

繰り返す-7

「ええいやめんか! 男同士で気色の悪い!」

仲睦まじく微笑を浮かべる二人に挟まれて、どこか置いていかれたような感覚を受けたフラウが強引にレックスの腕を掴んで視線を逸らす。

「あらあら? フラウ様って相手が男性でもそうやって嫉妬を抱いちゃうんですね? お可愛らしいこと」

すると、一部始終を見ていたのか、冷ややかな視線を浴びせながらパルナがレックスとフラウの背後から姿を見せた。

「……言い方と表情に棘があるのぉ?」

「いえいえ、これは尊敬の眼差しですよ?」

「お主の尊敬怖すぎるんじゃけど?」

レックスを取り合って睨み合う二人を前に、鏡は思わず笑みを浮かべる。

「落ち込んでると思ったが、そんな感じでもなさそうだな?」

「あら? どうしてそう思ったの?」

「パルナもクラスチェンジしてなかっただろ? そのことで悩んでるのかもって思ってさ」

「パルナ『も』……ね、残念ながらあたしが悩んでいた時間はほんの少しだけよ」

誰と比較して言っているのか、瞬時に悟ったのかパルナは小さなため息を漏らす。

「今は色々と試しているところ……役立たずなりにね。この役立たずのスキルを駆使してさ」

そう言って微笑を浮かべると、パルナは鏡の肩をポンっと叩いた。

直後、突然お腹から炎を噴き出す鏡。

「いきなり俺の身体を使って魔力を消費するの、やめてもらえます? お姫さん、めちゃくちゃ驚いてるしさ」

「いいじゃない。どうせあんた使わないでしょ?」

噴き出された炎にびくついたフラウを見たかったのか、満足そうにパルナはクスクスと笑う。

「ていうかあんたって、一応魔力はあんのね。あー……そっか、スキルの効果で魔法使えないんだっけ? 技もチャージブロウ程度のしょぼい技しか使えなかったわよね」

「使える技を応用して違う技っぽくすることはできるけどな。ま、魔力量も元々そんなに多くねえから、使えなくても全然問題ないんだけど……」

「……だけど?」

途切れた言葉が気になってパルナは聞き返す。すると鏡は、どこか気難しい顔を浮かべて唸り始めた。

「鏡、ここにいたか」

その時、映像を空中に映し出すタブレット端末を片手に持って、セイジがトレーニングルーム内へと顔を出す。

「あれ? 來栖と一緒に積荷を確認しに行ったんじゃなかったのか」

「そんなのはとっくに終わってる。來栖も今頃ノアについている頃だ。……それよりも、頼まれていた解析結果が出たぞ」

「噂をすればってやつだな」

待っていましたと言わんばかりに表情を明るくさせた鏡に「随分と待たせてしまったようだな」と苦笑すると、セイジは片手に持っていたタブレット端末を操作して、空中に情報が記載されたディスプレイを出現させた。

「師匠、頼んでたものとはなんだ?」

「今ちょうど話していた、俺の技と魔法を封じてるスキルについて調べてもらってたんだよ。ほら、エクゾチックフルバーストも使えないと思ってたらめちゃくちゃ使えるスキルだっただろ?」

「そういえば……もう一つ使えないスキルがあったな。リバース……だったか?」

聞き覚えのないスキルの名称に、フラウが「なんじゃそれ?」と首を傾げる。

鏡の持つ今まで唯一使われてこなかったスキル「リバース」は、レベルが高ければ高いほど使える技や魔法の幅が狭くなる力だった。

「ああ、現状でも充分戦えるけどさ……相手はデミスだ、使える力は多い方がいい。もしかしたらリバースも使える力かもしれないだろう?」

鏡の持つスキルは、セイジが新たにアップデートしたスキルの解析システムの影響で、これまで表示されていたスキルの効果内容に変化が起きていた。

これまでは『レベルが低ければ低いほど、強力な技や魔法をコストなしで使用できる。だが、レベルが上がれば上がるほど、強力な技や魔法使える幅が狭くなる』と記載されていた効果詳細の末尾に『?』が追加されていたのだ。

それを見た鏡は、もしかしたら『エクゾチックフルバースト』と同じく、システムが解析しきれていないだけで使えるスキルである可能性を抱き、こうしてセイジに解析の依頼を出していた。

「お主……これ以上強くなってどうするのじゃ?」

「強くなるっていうか、俺の元々の力が封じられてるっていうか?」

「でもお主、パワーアップしたスキルのおかげで制限はもうないのじゃろ?」

フラウの言葉通り、鏡に制限はもうないはずだった。というのも、鏡の持つスキル『制限解除』の効果内容が『解き放たれたその力に、もはや制限は存在しない』といったものだったからだ。

しかし、鏡は未だまともに技も魔法も使えていない。

「恐らく、技や魔法が使えないこと自体がスキルの力で、制限ではないのだろう」

「意味がわからん。スキルの力で弱くなってるのに制限じゃないってどういうこと?」

「噛み砕いていうなら、『リバース』の力も含めてお前の力というわけだ。つまり、技や魔法が封じられている今の状況が制限のない本来の姿ということになる」

弱体化した状態が本来の力というセイジの言葉に、鏡は思わず顔を引きつらせる。

「で……でもあれだよな? 解析結果が出たんだろ? ご丁寧に『?』までつけられてたんだ……これまで表示されてきた効果内容通りってわけないよな?」

その問いかけに、セイジは気まずそうに視線を逸らした。

「すまないが……ほとんどわからなかった」

魔法を駆使することで、今までずっと脳内だけでイメージし続けてきた戦い方ができると期待していた鏡は、目に見えてショックを受けた顔を見せる。

「一応調べた結果、スキルの力によってお前の魔力回路が強引にほとんど機能しないよう封じられているのがわかった」

「魔力回路? なんだそれ?」

「あんたそんなのもわかんないの? 魔法を発動する時も、技を発動する時も、必ず魔力を任意の箇所に一点集中させるでしょ? その時、体中に散らばってる魔力を一点集中させるために魔力を流す道筋を魔力回路っていうのよ」

そう説明すると、パルナは指先に魔力を集中させて小さな炎を噴き上がらせた。

魔力を集中させ、理をもってあらゆる事象に変化させる力を魔法。魔力を集中させ、練り込んだ気を複合させて身体の動きに合わせた力を発揮するのが技と呼ばれる。そのどちらも必ず魔力回路を経由するため、それを封じられている鏡に魔力を使うことができなかったのだ。

「まさか……そんなことも知らずに今まで戦ってたなんてね」

「しょうがねえだろ? 元々、生まれつき魔力量が少ないんだからさ。レベルを上げるためにあえて拳一つでずっと制限をかけて戦ってきたから『リバース』を手に入れる以前も魔法なんて使ってこなかったし」

その時、鏡の放った言葉が気になったのか、セイジは表情を歪める。

「魔力量が少ない……か、レベルが上がれば保有する魔力量も上がるはずだ。お前の魔力が少ないなんてことはありえないはずだが?」

「いや、でも俺の魔力はほとんどないぞ?」

「恐らくそれも『リバース』のせいだろう。『リバース』を手に入れる前までは、確実に魔力は増強されていたはずだ。お前が使ってこなかったから気付かなかっただけじゃないか?」

「確かに……さっきもそれなりに魔力を消費する魔法を発動できてたし、魔力回路が機能してないってことを考えると、膨大な魔力を保有してるのかもね」

セイジの説明で納得したのか、パルナは口元に指をあてて「あー」と声をあげた。対して鏡は、どうしてそれで膨大な魔力が自分の中に秘められているのかがわからず首を傾げる。

「魔法も技も魔力を一点に集中させて発動させるのよ? そのための魔力回路が封じられてるのに魔法を発動させられるってことは……身体全体に魔力を集中させなくても魔法を発動できる大きな魔力量を保有してるって考えるべきでしょう?」

「……なるほど」

そこまで説明されてようやく理解したのか、鏡は手を握っては放すのを繰り返してチャージブロウを放つ時の感覚を思い出す。

仮に、魔力回路を封じられている自分にチャージブロウが使えている理由が、魔力回路を通じなくてもチャージブロウを発動できるだけの魔力を細胞の全てに保有しているのだとすれば、魔力回路が解放された時、鏡はパルナとクルルさえも圧倒する魔法を扱える可能性を秘めていることになるからだ。

「え、嘘、マジで? ちょ、なにがなんでも『リバース』の本当の効果を解析してもらいたいんですけど。もしくは俺の『リバース』を消してください」

「スキルを消すなんて無理に決まっているだろう……だが、希望がないわけではない」

「希望って……魔法と技を扱える方法が残されてるってのか?」

「解析した結果、お前の魔力回路はお前自身の力によって封じられてはいるが……ただ封じられているだけではない。あくまでも……スキルの効果として封じられているんだ」

「でも、そのスキルの効果がわからないんだろう?」

「まあな……だが、アースクリア内でのお前の身体状況をあらいざらい調べた結果、一時的にその力が解放されたタイミングがあった」

まさかの情報に鏡は目を見開く。少なくとも、そのタイミングに覚えがなかったからだ。