軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

追い求めた真実は残酷で-7

来栖の意図がわからず、鏡は首を傾げる。

「アースクリアに戻って僕たちにもっと強くなれとでも言いたいのか? 僕は構わないぞ? 丁度……更なる高みを目指そうと思っていたところだ」

レックスにはその提案は好都合だった。しかし来栖は、更なる力を望もうとするレックスを否定するように首を左右に振る。

「いや違う……そうじゃない。確かにアースクリアに戻れば再び能力を高めることも出来る。しかし、それはリスクが大きい」

「リスク?」

「能力を高めるということは、格上と戦って経験値を積むということだ。生まれ持った役割という素質を、ある一定の力にまで高めるためにレベル分けされたモンスターがいるが。モンスターを倒すだけで成長するには時間が掛かりすぎる。かといって、己に制限をかけて成長を促す方法は……命を失う可能性が非常に高い。それもレベルが上がれば上がるほどに危険は増していく」

レベルが上がれば上がるほど、更に強力な力を持った敵を相手に制限をかけて戦わなければならなかった日々を思い出して、レックスはとクルルは表情を暗くする。強さを求めているとはいえ、常に死と隣り合わせの日々の恐怖が身体にしみ込んでいたからだ。

「だったらアースクリアで僕たちは何をするんだ?」

「アメリカが管轄しているアースクリア……グリドニア王国へと向かって欲しい」

「グリドニア王国……ヘキサルドリア、フォルティニアに並ぶ世界に残された最後の国か。そこで何をすればいいんだ?」

「星喰いデミスを倒すには戦力を掻き集める必要がある。日本、ロシア、アメリカ全てのアースクリアへと繋がる地下施設から、戦える人材を一人でも多くね」

「……なるほど」

そこまで聞いてどうして来栖がアースクリアへと戻るように言ってきたのかを察し、デビッドが髭を手でクルクルと巻き上げながら納得した表情を浮かべた。

「コンタクトが取れないのですな?」

「察しがいいね……君は? まだ自己紹介もしていなかったよね?」

「ふぉっふぉっふぉ、デビッドと申します。クルル様とシモン様にお仕えしているただの紳士ですよ」

「シモンには随分と優秀な家来がいたんだね。僕に回してくれたら良かったのに」

「デビッドはレベルも低かったですからな、スキルも最近覚えたばかりです」

シモンが来栖に敬語を使っていることに一同は違和感を覚えながらも、どういうことなのかの説明を求めてデビッドに視線を向ける。

「わざわざ我々がアースクリアに行かずとも、戦力を掻き集めるのが目的であれば外側から連絡を取った方が早く、楽なはずです。なのに、アースクリアを経由してそれを行おうとするのは、来栖様がアメリカにある地下施設と連絡が取れないからなのでしょう?」

「ご明察、その通りさ。随分と連絡を取っていなかったからね、何か異常事態が起きていたわけでもないし……久しぶりに連絡を取ってみたんだけど繋がらなかったんだ」

「繋がらなかったというのは、たまたま居合わせていなかったという可能性もあるのでは?」

「そう思って現地に赴こうとしてね、とりあえず先にアメリカの地下施設……『エデン』の位置を再確認しようと人工衛星からエデンがあった場所を映像で確認したんだけど……なかったんだ」

「なかった……とは?」

「エデンがあった場所が、まるでそのまま繰り抜かれたかのようにクレーターになって無くなっていたのさ。映像もあるよ、ほら」

そう言いながら來栖が部屋の中央に出現させたモニターの映像には、アメリカのかつての首都、ワシントンの中央に隕石が衝突したかのような巨大なクレーターが映し出されていた。

「いやいや、これこそまさに異常事態でしょ! あんたなんで気付いてないのよ」

地下施設があるとは思えない大地の荒れ方に、パルナが頬に汗を垂らしながら來栖を問い詰める。

「システムが異常事態と判断しなかったから僕も気付けなかったんだ。現に……エデンが管轄するアースクリア、グリドニア王国は変化なく存在しているし、システムは問題なく稼働している」

「じゃあ……エデンは無事なままで、地下施設がそのままどこかに移動しちゃったってこと?」

「そういうことになるね……しかもたちの悪いことに探そうにもまるで反応を拾えない。恐らく僕たちに見つからないように細工している。セイジ……あの馬鹿は何を考えてるんだ」

「セイジは少なくともお前より馬鹿ではないんじゃないか?」

「賢さの話をしているんじゃない。行動が馬鹿だと言ってるんだよ。何をしているのかはわからないけどね」

突然ライアンと来栖の口から聞きなれない人物の名が上がり、一同は首を傾げる。

「セイジさん……って、誰です?」

そこで疑問を晴らすために、ティナがソーっと手を挙げて問いかけた。

「アメリカの地下施設、エデンを管轄している僕たちと同じ、ずっと昔から生きている奴さ。アースクリアの中枢となるシステムや、機構を考えて作った人物とでも言えばいいかな? もしくは君たちの生みの親かな?」

「私たちの生みの親って……というよりアースクリアを作ったって物凄い人物なんじゃ」

「確かにセイジは天才さ、でも、僕たちに恨みがあるからか凄く非協力的でね。まともに会話も出来ない偏屈野郎さ」

「私からすればあなたも偏屈野郎ですけど……恨みってなんですか?」

「元々はただの第二の人生を歩むことの出来る施設だったアースクリアを、デミスを倒すための人間を作る兵器まがいのものにしたのを怒っているのさ。それと、デミスを倒すまで生き続けなければならない使命を背負わせたことにもね。あの時は人類存続の危機だったっていうのに、いつまで怒ってるのか」

「それでも、律儀に付き合い続けてくれてるんだ。文句は言ってやるな」

「君は昔からセイジに甘すぎるんだよ」

「はい、ストップ!」

昔話に花を咲かせて、話が脱線しそうだったのを鏡がパンッと手を叩くことで止める。

「とにかく、居場所がわからないからアースクリアを経由してエデンを管轄してるセイジって人にコンタクトを取ってこいってことだろ? でも、アースクリア内から外で管轄している奴にどうやって連絡を取ればいいんだ? そんな機能ないだろ?」

「勿論方法はある。君たちには無理だが、管理者権限というものがあるのさ。その力を君たちは体験したことがあるだろう?」

言われて、鏡たちは脳裏にダークドラゴンや、エステラ―の姿を思い浮かべる。

エステラーは神出鬼没な空間転移を使い、ダークドラゴンに至っては何でもありの願い事を叶えさせていたと、一同は「……あー」と、納得した様子で頷いた。