作品タイトル不明
追い求めた真実は残酷で-5
「僕たちの戦いは……終わらなかった。星喰いデミスが消えたわけじゃなかったからだ」
未来永劫眠ったかのように思われた星喰いデミスだったが、星喰いデミスは度々アースへと舞い戻っては人類に奇襲をかけた。何故か? それはリーシアが星喰いデミスの意識に介入しているだけで、リーシア自身が星喰いデミスとなったわけではなかったからだ。
「そして彼女は今も戦い続けている。……星喰いデミスの意識とね」
星喰いデミスの目的は、人類を糧にして繁殖すること。故に、星喰いデミスの意識を活性化させる人間が居ればいるほど、星喰いデミスはその要求を満たすためにリーシアの意志を振り払ってアースへと舞い降りた。
そして、星喰いデミスが舞い降りる頻度は徐々に増えていった。それはつまり、星喰いデミスの中で眠るリーシアの意識が少しずつ星喰いデミスに取り込まれつつあることを意味していた。
リーシアが星喰いデミスの意識に取り込まれた時、人類は滅びる。何故なら、その時には既に、人類に星喰いデミスに対抗する戦力など残されていなかったからだ。
「それから……君たちも知っているこの現状に繋がる」
星喰いデミスの意識は、人間がいるせいで活発になる。故に、人類は自分たちの身を隠さなければならなかった。星喰いデミスに感知されにくい地下深く、そして反応を完全に消し去ることのできる特殊な機構で作られたアースクリアへと続くカプセルの中へと。
全てはリーシアの意識を生かし、人類という種を絶やさせないために。
そして、どうして来栖が人類を地下へと押し込めて、地上での繁栄を促さないように差し向けていたのかの理由を一同は理解した。繁栄して人が増えれば、星喰いデミスの意識がリーシアの意識を飲み込んでしまうから。
そして、次に戦いが起きた時、星喰いデミスの意識を抑えきれずにリーシアの意識は消えてしまうと来栖は考えている。だからこそ、挑戦はあと1度しかできないのだと。
「でも、いつかは星喰いデミスを倒さなければならない。地下施設は人間の反応を感知されないように抑えるだけで……星喰いデミスが覚醒すれば、土を掘り起こしてでも襲ってくるだろうからね」
「疑問なんだけど……星喰いデミスは私たちアースクリアの人間は取り込めないのよね? なら、全人類をアースクリア出身の人間のようにすればいいんじゃないかしら?」
そこで、必ずしも星喰いデミスを倒さなくても良いのではないかと、タカコがふと思った疑問を来栖に問いかける。
「残念ながら……それは難しい。成長した人間の身体を別物に変える超人化は身体への負担が凄まじく、ほとんどが死に至る。また……天性的な超人と違って、アースクリアで人為的に作られた君たちのような存在は、最初にも言ったとは思うけど、この世界に適応させなければならない。そのための薬品は無限にあるわけじゃない……全員をアースに出せるわけじゃないんだ」
しかしそれは想定済みで、タカコもそれを考慮していない来栖ではないと思っていたのか、「やっぱり……」と納得した。
「それに、取り込まれにくいというだけで、決して完全に取り込まれないわけじゃない。遺伝子構造はそもそも人間と近いせいか星喰いデミスに対する反応も強い」
「いくら身体を作り変えても、捕食対象であることは変わらないのね……ならせめて、星喰いデミスが人間に反応を示さないようにすることは出来ないの?」
「古代の技術があれば何でも出来ると思っているようだが……僕は神じゃない。研究には度重なる検証が必要だ。その検証には星喰いデミスが近付くかどうかを試す必要がある。でも、眠っているあれを起こすわけにいかない……僕に出来たのは、アースクリアというシステムと既に持ち合わせていた技術を駆使して、星喰いデミスを倒すための兵器を造ることだけさ」
出来るのであればとっくにやっている。そんな悔しさが伝わり、無責任なことを言ってしまっていたと、タカコは「……ごめんなさい」と素直に謝罪する。
どちらにしろ、たった一人で出来ることは少ない。むしろ、ライアンと来栖の二人だけでよくぞ千年と長い期間も妥当星喰いデミスのために戦い続けてきたと言うべきだった。
「それに僕は……彼女を救ってやりたい。彼女を解放してやりたいんだ」
そして、今までずっと人を嘲笑うかのような態度しか見せてこなかった来栖が、心の底からそう思っているであろう真剣な表情で吐き出した言葉を聞いて、来栖がどれだけこの世界を救おうと必死になってきたのかがわかり、その場にいた全員が辛辣な表情を浮かべる。
アースクリアのシステムが作られたのも、既に壊滅状態の人類に出来たのが、元々作りかけ途中だったそれを利用することくらいしか出来なかったからだった。そして来栖たちは待ち続けた。星喰いデミスを倒せる力を持った存在を。
自身でも、アースクリアから生み出されたスキルを持つ者たちを利用して新たな生命体――異種族を作り、星喰いデミスを倒せる可能性を生み出そうと戦い続けた。
どれだけ非道だと言われようが、地下で暮らす人間たちが偽りではなく、真に希望をもって暮らせる世界のために、リーシアのためにずっと、絶対に失敗できない一度の挑戦を成功に導くために、老いては身体を変えるのを繰り返してチャンスを待ち続けた。
「そして……鏡浩二。 君が現れた」
再び、来栖は見定めるような視線を鏡に送る。
「星喰いデミスを倒すために必要なものは三つ。一つ……星喰いデミスが目覚めた時にアースを守る戦力。二つ……星喰いデミスの体内へと潜り込み、最大級の戦力をコアへと導く戦力。三つ……そのコアを、リーシアを破壊する最大級の戦力」
三つの条件を耳にして、全員が息を吞みながら鏡へと視線を向ける。同時に、どうしてバルムンクやフローネたちが、人類には希望が必要だと言っていたのかをタカコたちは理解した。
「その場所にまで辿り着き、コアを破壊するのは……君だ。君が人類の希望になれ」
そして、千年前の人類が地下へと逃げるしかなかった絶望的脅威、星喰いデミスと鏡たちとの世界の命運を賭けた戦いが今、始まろうとしていた。
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「さて……頑張ってくださいね鏡さん。私……応援してます!」
「いやいやティナちゃんも頑張ろう?」
来栖との話し合いから三十分後、想えば戦い続きでろくに休めてなかったと、一同はいったんの休憩と話を整理するために到達者たちが暮らし住むガーディアン内部にある区画の休憩室へと足を踏み入れていた。