軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

追い求めた真実は残酷で-3

「モンスターって……でも、元々いた生物が変化したにしてもモンスターの種類が多種多様すぎないかしら?」

「変化した生物が必ずしも同じ姿になるとは限らない……まあ人間は遺伝子構造が星喰いデミスにとって安定しているのか、ほとんどがあの紫色の化け物になったけど、そうじゃない個体もたくさんいるよ。人によっては……もっと違う見た目になったりね。豚なんかだとゴブリンになったのもいれば、ブラッディーバッファになったのもいる」

そもそもの身体の構造を作り変えてしまう星喰いデミスの性質に、タカコは表情を歪めて畏怖してしまう。

「だから……俺たちの先輩。総じて超人と呼ばれた連中を元に俺たちを作ったわけか」

そして自分たち、アースクリア出身の人間の価値を理解し、鏡が感慨深く呟いた。

「そう、彼らは人間ではあったが、そもそも遺伝子構造が普通の人間とは違っていた。違っていたからこそ、超人的な力を持っていたのだけどね。そして……星喰いデミスを相手に超人たちが最も活躍出来たのも、星喰いデミスと交わることがなかったからだよ……どんな兵器を使おうが、使う人間が敵になってしまうのであれば意味がない」

バラバラになっていたピースが一つ一つ繋がっていくように、一同の中で疑問に感じていた些細な部分が解消されていく。どうしてラストスタンドの操縦席への開閉スイッチが外にあるのか? アースはどうして人間だけがいなくなってしまったような環境になっているのか? 偏にそれは、星喰いデミスと戦ったが故なのだと。

「それにしてもあんなの相手によく耐えきったわね、あんなの……そのままぶつかって来られたら一瞬で終わりじゃない。そもそもあんな化け物……どうやって眠らせたのよ?」

そこで、パルナがふと疑問に思ったことを口にする。

すると、来栖はどこか言い難そうに辛そうな表情を浮かべた。

「ある一人の女性を犠牲にすることで、あれを眠らせることに成功させた……もっとも、その前に壊滅的なダメージを人類側は受けたけどね」

「女性?」

どう犠牲になったのかわからず、パルナは首を傾げる。来栖は、思い出すのも辛いのか、額に手を当てて深い溜息を吐くと、「彼女がいなければ、僕たちは勿論、君たちもここにはいなかっただろうね」と説明を続けた。

「その彼女って……一体なんなわけ?」

「彼女もまた超人だった。だが……その性質はとても星喰いデミスと似通っていてね、相手の遺伝子を取り込み……自分の長所に変える能力を持っていた」

「何それ、その人めちゃくちゃ危険じゃない」

「勘違いしないでくれ、彼女は無駄な殺生は好まない優しい人物だった。遺伝子を取り込むと言っても、髪の毛のような一部を取り込んでいただけさ」

「じゃあその人……他の超人たちの力も吸収して凄く強かったんじゃないの?」

「その通りだよ。彼女は過去の戦いにおいて、我々人類のリーダーであり……最強の人間であり……希望そのものだった」

思い出しているのか、懐かしんだような表情で来栖は感慨深く呟く。

「まるで、会ったことがあるみたいに……当事者かのように言うのね」

「そりゃ、俺と来栖は当事者だからな」

その素振りが余りにも他人事とは思えず、タカコが疑問を口にすると、ライアンがハッキリととんでもない事実を言葉にする。

「当事者って……そもそもこの過去の映像は何年前のものなんですか?」

「千年……いやまだ九百年くらい前か? とにかく、ずっとずっと昔の映像さ」

「千年⁉ いやいやいやいや、生きているのおかしいでしょう!」

その事実にティナは、自分たちとそう歳も変わらない若々しい来栖の姿に疑問を抱き、席を立ちあがってツッコミを入れた。

「肉体の入れ替えさ。脳細胞が死にきってしまう前に、自分のクローンに記憶を移すことで生き永らえている……僕も、ライアンもね。僕は定期的に老いたら変えているけど、ライアンはどうやらめんどくさがりのようだ」

「いやいや、ええ? でもそれなら、メリーちゃんとかずっとこのノアの地下施設にいた人たちは疑問に思うはずでしょう。ずっと生きてるんだし」

「僕も馬鹿じゃない。そこは容姿も名前も変えて接していたよ。じゃないと、『どうしてずっと昔から生きてるんですか?』なんて質問されてしまうからね」

ティナは思わず声をあげてツッコミを入れたが、それ以外の事情を知らなかった者たちはどこか納得したような表情を浮かべていた。過去からずっと生き永らえて、アースクリアという世界を作ってしまうほどの技術があるなら、それくらいのことはやってのけてしまうだろうと思えたからだ。

「あまり驚かないんだな。そこの僧侶の女の子は気持ちいいくらい反応してくれたが」

「恐らく、薄々気付いていたんだろう。パルナさんに至ってはこの世界に来た時に饒舌に過去の話をしていた僕を当事者だと疑っていたくらいだし。勘の鋭い人たちばかりだからね」

その通りなのか、パルナは「さあ、どうかしら?」と片目を瞑って小さく首を傾げてみせる。

「あなたたちが当事者というのはわかったわ……なら、詳しく教えてもらえるかしら」

タカコの催促に、来栖は目を瞑りながら頷く。

「超人たちの力を取り込んでも……やっぱり星喰いデミスには勝てなかったのかしら?」

「ああ、さすがに彼女も、星と同じサイズを持つ相手に押し切ることは出来なかった。彼女の能力は超人たちの長所を取り込むだけであって、身体能力が高いわけじゃなかったからね」

「……だから、眠らせたというわけね。具体的に……どうやって眠らせたのかしら。ここにいないということは……命と引き換えにその目的を果たしたんでしょう?」

「いいや、彼女は生きているよ」

タカコの言葉を来栖は否定する。だがそう言った来栖の表情は辛そうで、とても言葉通り生きているようには思えなかった。

「この世界を今へと繋げた彼女の名前は……リーシア・セルモンド。女のくせにいつも『我、我』とまるで神にでもなったかのように偉そうな口調でうるさく喋る女性だった」

来栖の口から名を耳にして、懐かしく感じたのか、ライアンが感慨深い表情を浮かべる。

「彼女は今……星喰いデミスの体内で生き続けている」

耳を疑うような事実に、一同は困惑した表情を浮かべる。その中でライアンだけが、リーシアが今も尚受け続けている不遇な運命を想って表情を曇らせた。