軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

絶対的な強さの壁-8

下手すぎる鏡の言い訳を聞いて、メリーは呆れた表情でため息を吐くと、近くにあったラストスタンドの傍へと寄り、膝元の装甲へと飛び乗った。

そこで操縦席を覆い隠している装甲の左側にあるくぼみへと手を置くと、音をたててラストスタンドの操縦席を覆っている装甲が開かれた。

「こうやるんだよ」

「何でお前がそれの開け方を知ってるんだ?」

「この一週間、私がどこに籠ってたと思ってんだ? ま……来栖の目的に関する情報は得られなかったけど、それ以外のことなら結構調べられたんだぜ? このラストスタンドの設計図とかな。まさかこんな場所に保管してるとは思わなかったけど……それでも、お前らの中じゃ一番旧文明の機械に精通しているはずだ」

実際、メリーはレジスタンスの中でも機械に精通している方だった。

元々、アースで生まれた人間だからというのもあったが、それ以上に、ずっと間近で油機が機械をいじる姿を見続けていたおかげでもあった。

油機は機械を弄る時は楽しそうにその機械の特性を語る。それをいつも話半分に聞いていたおかげか、セントラルタワー内にあった旧文明の機械から情報を引き出す際、大きな苦労もなく感覚でそれの操作を覚えていった。

「もっとあいつの話……聞いとくべきだったよ。そしたら、もっと重要なことも調べられたかもしんないのにな」

それがどこか皮肉に思えてしまい、メリーは一笑する。

そんな寂しげな表情を見せるメリーを、鏡は難しい顔でどうしたものかと見つめていた。

「連れて行きましょう……アリスちゃんもそうだけど、ここで置いて行っても勝手に抜け出されたらそれこそ私たちの知らないところで死ぬことになりかねないわ」

そこで、どうするか決めかねていた鏡の肩をポンッと叩き、タカコが進言する。

「見張りをつけても無駄ってか?」

「そうね。それにメリーちゃんはきっと役にたってくれるわ。私も力任せに強引に潜入するのはどうかと思ってたところだから。一緒に行くメンバーの中に一人くらいこの世界に精通してるアース出身の子がいた方が、きっと生き残る可能性も上がるわ」

「……わかった」

難しい顔をして悩んでいた鏡も、タカコの言葉を聞いて腹を括ったのか、表情を崩して大きなため息を吐きだし、そしてすぐさま真っ直ぐにメリーの瞳を見つめた。

「死ぬ……覚悟はしておけよ」

「……あぁ! ありがとな鏡!」

よほど鏡の威圧に堪えていたのか、メリーはほっとしたかのようにはにかんだ笑顔を見せる。

強がってはいたが、内心不安を感じていたのが窺えた。

「パルナとクルルはどうする? 六人以上になるけど……お前らの力は惜しい。予定を変更して3機で向かっても……」

「あたしはやめとく」

興味なさげに吐かれたパルナの言葉に、鏡は意外そうな表情を浮かべる。

「……てっきり、アリスも行くならあたしも行くとか言うかと思ってたけど?」

「アリスの護衛ならあんただけでも充分でしょう? 人数を割るようならあたしが行こうと思ってたけど……定員人数になったみたいだし、遠慮しとくわ。多分……少人数の方がいいのは間違いないから」

佇まいから、本当はついて行きたいのを我慢しているのがわかり、鏡もそれ以上何も追及せずに「……そうか」とだけ返す。

パルナはアリスとメリーと同じく、自分が足でまといになるであろうことを自覚していた。ロシアには日本と同じ施設が存在するため、向こうにもレベル200を超える敵がいるのは容易に予想できたからだ。

となれば、レベル143のパルナには隠密行動をするという鏡の意見を汲み取って身を引くのが最良の選択だった。

「私もやめておきます」

「クルルもか? お前には来てほしかったんだけどな……賢者は攻撃もサポートも出来て色々と助かるから」

「ですが、私の身体能力はさほど高くはありません。確かにサポートは出来たとしても、いざとなった時に足手まといになりかねませんし……パルナさんが行かないのと同じ理由で、隠密としての精度を高めるべきだと思っています」

「……本当にそれだけか?」

いつもであれば、アリスと並んで鏡に付き従おうとするクルルが、今回に限っては妙によそよそしいのが気になり、鏡は真意を確かめるようにクルルの顔を覗き込む。

「……正直。自信がありません」

すると、どこか影の帯びた表情でクルルはそう答えた。

「思い出しただけでも身の毛のよだつ修行を乗り越えレベル172になって、これで鏡さんの役にたてると思ってこの世界に私は来ました。ですが……私は成すすべなくあっさりと捕まり、皆さんに多大なご迷惑をおかけしました」

「あの状況は……仕方がないだろう? 敵が誰かもわからないし、相手もスキルの力を使っていたわけだし」

「今回ロシアに行ったところで、同じことになるかもわかりません。怖いわけじゃありません……行きたくないわけでもありません。ですが、私がついて行ってもきっと……足手まといになります」

何も出来ずにすぐに捕まってしまったことで力不足を感じているのか、少し後ろ向きな言葉でクルルは伝える。

だが、真っ直ぐに見つめられながら淡々と言葉を吐いたクルルの様子から、そのことのショックを引きずっているようには見えなかった。

「……諦めたわけじゃないんだよな?」

それがわかり、鏡は確認するようにそう問いかける。するとクルルは頷き、「今私に出来る最善を選択したつもりです」と言い切った。

「今は、獣牙族とレジスタンスの関係を取り持つことも必要な状況だと思っています。私は、そちらに助力するつもりです。ティナさんのことも……心配ですから」

「……ああ、了解だ。よろしく頼む」

そして考えを読み取り、納得したような表情で鏡が頷くと、クルルは安心したようにはにかんだ笑顔を浮かべた。

「ってことは、当初の予定通り6人で行くわけだな? 出発はいつにするんだ師匠?」

「今からだ」

「今からって……急ぎすぎじゃないか? 向こうについてからのこととかも考えて、数日は見ておいた方がいいんじゃないか?」

急く鏡にレックスは「落ち着け師匠」と肩をポンッと叩く。

「それはラストスタンドの中ですればいい。どうせ……今から向かってすぐに着くってわけじゃないだろうしな」

しかし、鏡は焦っていたわけではなかった。

急ごうとするのは単純にアリスの身体を思っているからで、だからといって何の考えもなしに突っ込むつもりもなく冷静に判断しての決定だった。

その証拠に、鏡がバルムンクに視線を向けると、バルムンクはさすがとでも言うように笑みを浮かべ、「どれだけ急いでも半日はかかる」と頷いて答え返す。

「どうせばれないようにロシアに着いたらラストスタンドを捨てて、陸路でこっそり動かなきゃいけないんだ。考える時間は向こうについてからでもいくらでもある。数日分の食料と物資を積んだら出るぞ」

鏡の言葉に異論を唱えるものはなく、出発することになる6人は全員頷いて返事をする。

そのあと二時間ほど、出発することになる6人はバルムンクよりラストスタンドの操縦方法を教授してもらうのに費やし、残ることになるもので必要な荷物をまとめることになった。