軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十章 ぶっ倒して終わりだろ?-2

「やった……採れた!」

最後に大きな音を立ててダンジョン内の岩壁を崩すと、少女は嬉しそうに声をあげながら白く淡い光を放つ鉱石のようなものを手に取り、真上へと掲げた。

「へぇー、何が採れたのかしら?」

「うっ、その声は……⁉」

パルナの声に少女は身体をびくつかせると、ギギギっと恐る恐る背後を振り返る。

「やっぱり今日も来てたのね、あんたお仕事はどうしたのよ?」

「えっと……その休憩時間中に抜け出して……その、あの、どうしてパルナさんがここに?」

「人手が足りなかったから私が今日のツアー担当になったのよ。でもやっぱり来てたわね、大体お昼に抜け出しては来てるものねぇー」

意味深な笑みを浮かべながら、パルナは迫るようにアリスへと顔を近付ける。対するアリスは三年前と変わらない幼くぱっちりと開いた瞳を逸らし、冷や汗を浮かべた。

「たく、昔はもっと素直で健気だったのに、見た目と一緒に内面まで変わっちゃって……お姉さん悲しいわー。育て方間違えたかしら」

「べ、別にボクは何も変わってないよ! これだって立派な仕事なんだから!」

額に手を置いて溜息を吐くパルナに抗議するように、アリスは頬を膨らませてそう言った。

三年前と比べ、アリスの身長は頭二つ分大きくなった。元々成長が遅かったのか、十六歳になる過程で身長もそうだが出っ張るところが出っ張り、どこに行っても子供扱いされない立派な女性に変貌していた。

相変わらず後頭部に生える角を隠すように鏡からもらったリボンを巻き付け、昔と変わらない幼さの残る端麗な容姿で毎日のようにカジノで笑顔を振りまいており、昔と変わらず熱烈なファンもたくさんいる。

「はいはい、言い訳なら街に戻ってから聞くわ。デビッドについでに連れ戻すように言われてるんだから。あんたはもうちょっと看板娘の自覚を持ちなさいよね……服装もそうだけど」

そう言ってパルナはジト目でアリスの服装に視線を送る。アリスは昔と変わらず身動きの取りやすい恰好を好んで着用していた。半袖の冒険者の服の上にブルゾンを重ね、下はハーフパンツで、物を入れておく用のウエストバッグを腰に巻き付けている。まるで盗賊の役割を持った冒険者が好んで着用する露出の多い服装に身を包んでいた。

「あたしがこの間買ってあげた洋服はどうしたのよ」

「あれ身動きがとりにくくてボクあんまり好きじゃ……ないんだよね。ほ、ほら! 汚しちゃったらパルナさんに申し訳ないし!」

「はぁ……まあいいけど、あんまり皆を心配させるんじゃないわよ? 古の洞窟だって危険な場所には変わりないんだから」

「大丈夫だよボク魔族だし、それにもうボクだって立派に戦えるよ」

そう言うとアリスはむんっと腕に力を入れて見せた。それを見てパルナは呆れ果てた表情を浮かべる。

実際、アリスはレベル118とかつてのレックスやクルルにも負けない程の成長を遂げていた。

魔族は身体の成長と共に自動でレベルが上昇する。逆を返せば自分でレベルを上げることが出来ないが、たった三年間でレベル23だったアリスがここまで成長したのを考えると、自分で努力して成長しようとするのが馬鹿らしく思えてしまう。

「襲ってくるのはモンスターだけとは限らないのよ? あんた一度熱狂的なファンに攫われて大変な目にあったじゃない」

二年前、アリスは一度カジノに訪れた熱狂的なファンに攫われている。幸い溢れ出た好意的な欲望からの動機だったため危害は加えられることはなく、身の毛のよだつほどに怒りをあらわにしたデビッドとタカコとメノウの三名の活躍により半日も経たずして事件は解決した。

だが、その一件以来パルナはかつての自分のような存在が現れる可能性を危惧し、何があってもアリスを守れるようにならなければいけないと考え、強くなろうと決意する。

その結果が、今のパルナのレベルでもあった。

「どっちかと言うと大変な目にあったのはボクじゃなくて攫った人だったけど……でもそっか、何があるかわからないもんね、心配かけてごめんねパルナさん」

「ま、いつも誰かに見守ってもらわないといけない生活が窮屈なのはわかるけどね。最近はあんたも力がついてきたしちょっと大目にみてたけど、無断で抜け出しすぎ。……抜け出すのはいいけど、次からはちゃんと誰かに伝えてからにしなさいよ?」

溜息を吐きながらもそう言ってパルナはアリスの頭をくしゃくしゃと撫でまわす。誰よりも人が抱くかもしれない考えの危険性を知っているパルナの言葉にアリスは素直に反省し、同時にそこまでして心配してくれるのが嬉しくなり「うん」と言葉を返して微笑を浮かべた。

「そういやあんた、さっき何か採ったとか言ってたけど……何を採ったの?」

「あ、これ? スポーンブロックだよ! まだモンスターを生み出す性能のない作られたばかりの激レアアイテム! ようやく見つけたんだー」

アリスは「ジャーン」と見せびらかすように淡い光を放つ鉱石をパルナの前へと突き付ける。

スポーンブロックは本来、魔族の魔力を吸収してモンスターを生み出す力を持った石である。だが、作られたばかりのスポーンブロックは特性が変わり、魔族の魔力を吸収して別の害のない何かに変化させる力を持つ。

アリスの角に巻き付けられている白い布もスポーンブロックを素材に作られており、アリスが普段周囲に魔力を放つことなく過ごせているのもこれのおかげである。

「あんた抜け出してそんなのずっと探してたのね。自分で探さなくても買えばいいじゃない?」

「駄目だよ高いし! ボクそんなにお小遣いも持ってないし! 魔族との交流が頻繁になって流通されるようになったと言っても、全然見つからないから一つ2ゴールドもするんだよ?」

「へぇ……結構するのね、調べたことなかったから全然わからなかったわ。それでそれをどうするつもりなの? 売るの? あんたこれも仕事って言ってたけどそれで稼ぐってこと?」

「違うよ。これを使って角に巻き付けるための装飾品を作るんだ。魔族の人がつけたくなるようなかっこよくてかわいい装飾品」

はにかんだ笑顔を浮かべるアリスを見て、瞬時にパルナはどういうことなのかを理解した。

「あいつの夢だから?」

「うん。ボクの夢でもあるけどね」

「そりゃ、それも立派な仕事の一つね」

魔族と人間の交流が盛んになった今でも、全ての魔族が魔力を抑えるスポーンブロックを素材にした布をつけているわけではない。むしろ、つけていない者の方が多い。

理由は様々だ。そもそも高価すぎて手が届かないという者もいれば、わざわざ人間のためにデザイン性のかけらもない布を巻きつけなければいけない意味がわからないと主張する者もいる。

アリスはそういった魔族達のために、既存の布状のものではない装飾品として身に着けやすいものを開発し、人間と魔族が分け隔てなく暮らせられる世界に近付くように努力していた。